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日本の音楽業界が利用できるバズマーケティング -12のケーススタディーとNovelbrightの成功例-

 音楽を作ってもアーティストにお金が届きにくい時代になってしまった。インフルエンサー、ステマ、あらゆる手を使って音楽を売ろうとしているのを、なんとなく感じとっている人も多いだろう。

そもそもインフルエンサーマーケティングとバズマーケティングは違う。インフルエンサーマーケティングは死んできているとも言われている。死んできていると表現したのは、コストが低くリスクの高いマーケティングになりつつあるということだ。最近のSNSユーザーは、意思の無いものに対して興味が無くなってきている。インフルエンサーの中には、DMを公開して商品そのものを否定するものまで現れ始めた。世の中が抱くステマへの警戒心も非常に強い。最近だと、ステマの一環として、アナ雪のプロモーションが問題になっていた。

SNSマーケティングのエキスパートであるTokuriki Motohikoさんも、ステマ自体は法的に処罰の対象ではないことから、このような事例が多くあるとしている。根拠となるデータなどは存在しないが、他国の基準を習った時、日本でもこのようなせこいマーケティングは、できなくなるかもしれない。


Mass Appealの方も仰っていたが、この世の中を動かすためには、WAVE(波)を作らなけばならない。単発ヒットではトレンドの波に消されていってしまう。多くの人を巻き込みトレンドを生み出す、流動的な波が必要なのだ。

そこでアメリカを中心とした他国では、SNS戦略に大きなエナジーを割いている。TikTokなどを見ると、誰かのネタをまた他の誰かが真似し、どんどんとその輪が広がっていく様子がわかる。これがまさしくWAVEであろう。

その波を作る出す手法として、バズマーケティングは1つ可能性に満ち溢れているものであると言える。


共有&共感 アイコン化 参加

音楽とバズマーケティングを組み合わせたときに抑えておくポイントは3つだ。

S - Sympathize & Share 『共感 & 共有』

I - Iconize 『アイコン化』

P - Participate 『参加』

頭文字をとってSIPと呼ばさせていただく。

最初のSでは共感と拡散。SNSで見かけた「いいね」という楽曲やダンスについては、情報の確認を取ることなく、すぐに拡散される。

Iはアイコン化。つまりは何かのネタを見つけた際に、1つのアーティスト又は楽曲が想像される状態。

そして次はPの参加。TikTokやミームなど、SNS暗黙のルールに乗っ取ったものが流行る様子。この「SIP」を中心に音楽バズマーケティングは分類できると言っていいだろう。3つをうまく組み合わせた際に、最も大きなバズが発生する確率が高くなる。

正直この文章のままでは、何を言っているのかわからない人がほとんどかもしれない。Lil Nas Xらバズマーケティングの成功例を中心に、いくつかのケーススタディーとともに分解しいく。

ミームやTikTokの流れについて、これまでのNOTEに上げているので、こちらから先に読むことをオススメする。


Sympathize & Share (共感 & 共有)

まず1つ目が、「共感」と「共有」。これまでこの2つは別のものとして考えられていた。しかしバズマーケティングにおいて、共感と共有は同じ箱のものとして考えたい。現在のSNSでは情報が氾濫しており、いちいち正当性を確かめない人が多くなった。つまり共感と共有はほぼ同時に進行しているというわけである。

ファクトチェックをするサイトなども存在さえするが、世の中まで浸透しているとは言い切れない。SNSの速すぎるスピード感では、全く立ち向かえていないのが現状だ。

逆にこれを言い換えると、共感さえ掴むことができれば、勝手に拡散されるという方でも取れる。そこを念頭に入れて、音楽のバズマーケティングと組み合わせた「S」の効果的方法を紹介する。


ケーススタディ1:Lil Nas Xのミーム

Lil Nas Xはアーティスト及び、ツイッターアカウントのバズマーケティングにミームを使うことで成功した。

Old Town Roadが大ヒットする前。Lil Nas Xは一度バズっている動画や、Youtubeのまとめネタ動画から拾ってきたものを、あたかも自分のネタのようにツイートすることで毎日のようにRTを稼いでいた。最近のSNSではファクトチェックがなされていないと言ったが、そもそも若い世代にとって、そのような確認をとるといった作業自体存在しない人もいるのである(高須院長を代表に、若い世代だけとも限らないが)。

Old Town Roadがヒットする前に20万ほどのフォロワーを抱えていたことで、既にインフルエンサーになっていた。

そして彼はトレンドチェックを欠かさなかった。常に流れてくるトレンドとミームを掛け合わせ、毎日のようにバズっていった。単純にフォロワーを増やしたいのであれば、このような方法は効果的だろう。もちろんスベっているツイートもあったが、スベったところでリスクはほとんどない。そういう点では、バズマーケティングは上手く利用できると、低リスクで行えるというメリットもある。


ケーススタディー2:Kaash Paigeのリリース方法

音楽のバズマーケティングだ。音楽で共感を生み出した例を持ってこよう。

ダラス出身のKaash Paigeは未発表曲を次々に公開することで(Snippet)、注目を集めいていたアーティストである。2019年の夏頃から、1、2週間置きに7つほどこのポストを続け、多いものでは4000RTされている。焦らされ続けていたファンは(私もその1人だが)、実際にリリースされると一斉にストリーミングに走った。リリースしたのは、Snippetされていた曲のどれでもなく、全くの新曲をリリースしたのも面白い。これらは全て、Def Jamと契約して以降の動きであり、彼らのマネジメントがかなり優秀であるようだ。この努力もあり、自身初のHot100チャート入りも果たしている。


ケーススタディー3:#FutsalShuffle チャレンジ

この共感と共有だが、もともとある程度のフォロワーを抱えているアカウントであれば、そこまで注力する必要もない。ツイッターで540万、インスタで1060万のフォロワーを抱えるLil Uzi Vertの例をあげよう。

Lil Uzi Vertは来たる新アルバム『Eternal Atake』に向けて、ツイッター、インスタで同時に#FutsalShuffle というチャレンジを開始させた。「新曲」、「ダンス」、「トレンド(Eternal Atakeがいつドロップされるかは常に注目されている)」、などをTrillerに掛け合わせて投稿した。今一番効果的であろう作戦を全て組み合わせたことで、スムーズなSNSジャックを可能にしたのである。2つのSNSを捉えたことで、TikTokにもこのチャレンジが流れてくる。TikTokには自身の動画を投稿していないが、100万回再生を簡単に生み出している。

S-まとめ

共感、共有が目的のこの枠だが、もともとフォロワーが多い(既にアーティストに共感している)場合、そこまで考慮する必要もない。逆にフォロワーが少なく、新しくコンテンツをシーンにねじ込みたい人たちにとっては、最も考慮しなければいけない部分だ。

どちらのタイプにも共通して言えるのが、これまでのトレンドと自身のアイデンティティを組み合わせ、どのような新規性を持ってこれるかという点だろう。Lil Nas Xは言ってみれば、ほとんど人のアイデアをパクリ(もちろん全て少し変えているが)ミームを量産し、注目を集めた。XXLやWorldStarHipHopという大手メディアが、このようにSNSを使う事例はあるが、個人単位でこれを完成させたのは新しかった。Kaash PaigeもSnippet戦略で、常に先手を打ち続けた。Lil Uzi Vertは今のトレンドのいいところを全て合流させ、新たなプロモーションの形を提示している。

今のSNSを使っている若者層は、意識せずともトレンドに乗っている。その中で、トレンドが何かをいち早く認知し、それを理解した個が力をつけてきている。ただ新規性の部分に気を取られると、社会的ダメージを与えるレペゼン地球のような最悪なケースが生まれてしまうこともある。倫理的な面を常に考慮して、時には慎重さも兼ね備えなければならない。

Iconize (アイコン化)

これまでのSNS消費行動モデルでは、Shareが一番最後に持ってこられることが多かった。拡散され多くの人にリーチすることが目的だったのである。ただ毎日莫大な情報に目を通している世の中で、たった1つのバズったポストを誰が覚えているのだろう。 

急に質問をさせていただくが、述べ100万人に1つのポスト(アイデア)が見られたとして、10万人に10回見られるのと、100万人が1度見るものどちらが効果的であろうか? 繰り返し接することで好感度や印象が良くなることを、ザイオンス効果(単純接触効果)というが、どれだけ多くの接触を生み出せるかが重要である。

なんどもバズることで楽曲やアーティスト、アイデアが認知され、1種のアイコン的存在に変貌を遂げる。ここで重要なのはいかにトレンドを理解し、そしてそれを乗っとることができるかだ。例とともに見てみよう。

ケーススタディー5:Lil Nas Xとカントリーミーム

Lil Nas Xは単純にミームを作っていただけであったが、「Old Town Road」の楽曲が完成してからは、少しこれまでのやり方を変えている。ビートはTrap寄りだが、リリックではカントリーの要素を多く含んだ同曲は、「カントリー」のジャンルとして扱われた(本人がそう扱った)。それを軸に様々な展開をしていく。

2018年終わりはカントリーのミームが流行しており、そのミームを利用し、自身の楽曲と結びつけてポストすることで、完全にカントリーの流行を乗っ取ってしまった。彼は運のいいことに最初のツイートがバイラルした。ただそれで尽きることはなく、何ヶ月にも渡って上リンクのような動画をポストし続けた。気づいたときには脳みそから彼の曲が離れないまでに、繰り返されていたのだ。


ケーススタディー6:詐欺師になったTeejayx6

日本ではあまり馴染みがないラッパーかもしれないが、このTeejayx6というふざけたラッパーは若い層を中心に絶大な人気を誇っている。

今アメリカで大きな問題となっているのが、クレジット詐欺である。先日City GirlsのJTが釈放されたが、捕まっていた理由は実にこれである。身を危険に晒すことなく、大金を手に入れることができるため、今最も効果的な詐欺として広まってしまった。海外旅行をする際に、執拗に注意喚起するのは、それだけ簡単に盗むことができるからだ。

そこに注目したのが、Teejayx6というラッパーである。まずは彼の馬鹿げた歌詞から見てみよう。

「政府は俺をダークウェブからバンしようとしている。だから俺はTorブラウザをダウンロードしてVPNを有効にするんだ」

Torブラウザとは端末情報を暗号化して中継地点を追加するもの。つまりインターネット上で足がつかなくするわけだ。これまで現実世界で警察と追いかけっこをしていたハスラーは、今インターネット上でそれを行っている。IT詐欺を代表するアーティストとして最初に宣言し、アイコン化したのがTeejayx6なのだ。

Teejayx6が本当に詐欺を行っていたかどうかは正直関係ない。彼はこのスポットに治るために多くの自白をして回った。どのようにクレジットカードを利用して、金を騙し取るかをラップした。この活動を数ヶ月続けたことで、メディアがScam Rap(詐欺ラップ)と報道し、世間に定着させることに成功したのだ。どこかの企業が情報漏洩すると、ファンが一斉にTeejayx6を叩き炎上させるまで浸透した。炎上といっても、ファンはTeejayx6がやっていないのをわかって叩いている。

ケーススタディー7:ダンスの横取り

Cultural Misappropriation(文化の横領)という言葉が一時期話題になった。Blocboy JBの生み出したShoot Danceだが、本人の承諾を得ずにFortniteがこれを利用した事件があった。

ダンスの著作権とは非常に複雑だ。これまで存在しているダンスやステップから、オリジナリティが十分でないと判断されなければ、著作権は発生しない。ただその境界線をはっきりと理解しているものは誰もいないだろう。

このグレーゾーンをついて、自分のものにする作戦は多く存在する。

2019年最も流行ったダンスである「WOAHダンス」。10k. Caashがこのダンスを生み出したとして一般には知られている。ただ10k. Caashの曲でWoahダンスをしている動画は突き抜けるほどバズらなかった。10k. Caash自身、「自分がWOAHダンスを発明した」という主張はしつこいほどにしていたが、「どの曲でWOAHダンスを踊るか」は全くと言っていいほどしなかったのである。

そうこうしている間に、この1曲が全てをかっさらっていってしまった。3.5秒に1回「WOAH」が入るめちゃめちゃな内容の曲だが、踊るにはもってこいであった。KRYPTO9095は、グラセフでクリップスVSブラッズの仮想ギャング抗争を実況して、ちょいちょいバズるアカウントであったため、多少はバイラルしやすい状況であった。

日本でもこれをうまく利用したヒットは存在する。DA PUMPの「いいねダンス」だ。元々は Blocboy JBのShoot Danceが元であったが、「いいねダンス」とリネーミングして売り出すことで、日本国内でアイデアを乗っとることに成功した。文化の到達が遅い日本ならではの方法として、このようなやり方もあるのだろう。


ケーススタディー8:Black Beatlesのマネキンチャレンジ

Rae Sremmurdの「Black Beatles」に乗せて踊るマネキンチャレンジが、一時期大流行したが、これもいわゆる乗っ取りだ。マネキンチャレンジはそもそも、Rae Sremmurdが生み出したものではない。勝手にネットでバズっていたチャレンジ動画だ。

上の動画のようなマネキンチャレンジをポストすることで、拡散はされるが「Rae Sremmurdのマネキンチャレンジ」。いわゆるアイコン化とまでは行かなかった。

そこでRae Sremmurd側はこのチャレンジを自分たちのものにするべく、ポールマッカートニーを起用し、Black Beatlesを流してマネキンチャレンジする動画を上げる。これが面白いように上手くいったのだ。

バズってるネタ、楽曲、大物、という本人が登場しない方法でバイラルを生み出す、新たな計算式を作り出した。

最初に説明した「共感と共有」を生み出すために、ポールマッカートニーを起用したとしたらおそらく失敗していただろう。アイコン化するという1つのゴールを達成するために、著名人を起用するスポットシューターのような役割だ。バズのシステムを上塗りした事例とも言える。

I-まとめ

ミームの研究をしているリチャード・ホーキンス博士も「アイデアのハイジャック」という言葉を連呼していたが、アイコン化するにはそのような考えが必要だ。毎日のように旬のトレンドやトピックが現れては消えていく。それらを見逃さず、ハイジャックし、自分のものにできる技術がこれら上記のケースステディーから学ぶことができる。

Lil Nas Xが行なった、ミームを使い単純接触効果を利用した方法。Teejayx6のように、音楽と関係ないトピックからの持ち込みは、単純に競い合う相手がいないのでかなり有効だ。ダンスの丸パクリはかなりグレーゾーンだが、法改正が行われない限りはこれからもキーアイデアになってくる。マネキンチャレンジは、著名人という枠を取り入れ掛け算の答えを最大化することに務めた。

この方法はこれからもさらに多様化し、多くのスターが誕生するものと思われる。これまでマスの広告に、キャッチコピーと共に売り出されるアーティストが多かったが、その必要はもうないのだ。

Participate (参加)

参加と言ったらバズやミームというと、TikTokを思い浮かべる人が多いだろう。TikTokでダンス動画がバズってヒット曲が生まれたパターンをこれまで何度か聞いてきたはずだ。TikTokが優れているのは、この参加させるプラットフォームをしっかりと整えたことである。音源利用も動画編集も、これまでと比べて驚くほど簡略化された。

この自由に動画編集しアップロードできるシステムは、偶発的すぎるヒットを多く生んだ。コントロールが効かないブラックボックスのヒット製造機化している。

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TikTokでバイラルさせようとして、小金をつぎ込んだところで飲み込まれるのがオチだ。TikTokも少しずつこれを改善しようとしてきている。上の画像はMEMEを簡単に説明した広告だが、ユーザーにMEMEの仕組みを簡単に植え付けることで、ある程度コントロールできる仕組み作りをしているように見て取れる。

ただこの混沌としたTikTokバイラルの中にもいくつかルールは存在する。見ていこう。


ケーススタディー9:Lil Nas Xのバイラルダンス

Lil Nas Xのバイラルに関しては全くラッキーではないと考えている。特にリリックの面で、彼の能力を評価したい。

Lil Nas Xは歌詞をビートのどこに当てはめるかまで、1ヶ月間綿密に計算し曲をリリースしている。TikTokでは腰から上のダンスがバズりやすいが(テーブルに置いてできる)、上半身の部位を表すリリックがふんだんに散りばめられているのも面白い。

直接的に何かTikTokにアプローチしたわけではないが、他のSNSでバズっている楽曲は自然とTikTokにも流れてくるものである。そこまで辿り着いた時に多くの仕掛けを隠していた「Old Town Road」は面白いようにバズったというわけだ。


ケーススタディー10:TikTokのアップデートに合わせる

TikTokはアップデートを挟み、細かい新機能がよく追加されている。もちろん新機能はみんな使いたいものだ。そこを利用したバズをいくつか紹介しよう。

Ant SaundersのYellow Heartsという曲がバイラルしていたのだが、実際に流行っていたのは@lesangelbby というアカウントが投稿したこのポストだ。元動画にバックコーラスを入れたものなのだが、新機能のデュエット(実際に搭載されたのは5月だが)を利用して見知らぬ人とコラボする動画がバイラルした。このYellow Heartsというのはそのまま「黄色いハート」という意味で、恋愛感情の無い異性の友達にテキストで送る絵文字のことだ。

黄色は彼女の好きな色だからと一瞬喜ぶも、実際は友達を強調するためだったと知り寂しくなるという... この中学生っぽいキラキラした内容がTikTokの世代&デュエットとマッチした。女の子から送られた絵文字1つをめちゃくちゃ考察していた友達とか、クラスにいなかっただろうか。そこをうまく突いたものである。


ケーススタディー11:キャッチーなダンス

当たり前のことだが、TikTokのクリエイターたちはダンサーではない。高度なダンスを踊ることはできないが、逆に簡単すぎても誰も乗ってこない。彼らを反応させるには、15秒ほどの動画にちょっとしたトリックを持ってくる必要がある。

Gordon Ramsayという癖の強い有名なシェフ(日本にも汐留に1店舗あった)が存在するのだが、そんな男のネタがTikTokでバズった。「彼(Gordon Ramsay)みたいに手首を返す(Flick my wrist)」という歌詞がフックアップされた。Flick my wristはスラングとして、ダイヤモンドとか装飾するという意味もあるため、そこにかけている形である。

バズったダンスはこの歌詞の部分で、手をクロスにして一周させるダンスをするのだが、初見だとギリできないくらい難易度になっている(自分は3回目くらいで理解しました)。曲のリズムに合わせてこのダンスをするため、他の曲で代用できないのもバズった理由だ。

Jojiの「Slow Dancing In The Dark」に合わせて、人が回転する動画なのだが、これも最初見ただけでは何が起こっているのかよくわからない(詳しくは上動画で)。もはやここまでくると、ダンスではなくただのトリックだ。Jojiのサウンドと、スロウでシュール動画は異様にマッチしていた。

キャッチーなダンスというのは、TikTokの世界ではマジックに近いのかもしれない。15秒ほどの限られた時間で、人の目を奪うには1度見ただけではわからない疑問を作るしかないのだ。CMでは15秒で何かを伝えなければいけない。TikTokはその点に置いて、真反対の要素が必要なのだ。

そういう点では、TikTokでバズるために雇うべきは、フォロワーの多いインフルエンサーや、振付師でもなく、街中の大道芸人ではないだろうか。TikTokは動画に対し、瞬間的ないいね数を評価するので、こちらの方が合理的であろう。

ケーススタディー12:金

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5日ほどに渡って、一番目立つページにチャレンジを乗っけるという力技も、お金があれば可能になるだろう。

嵐の場合、どのような契約内容かわからないが、他のアーティストなどがこの方法を取るにはおそらくお金が必要なので、彼らを使わせていただく。非常に高いレベルのダンス動画を上げ、挑戦状のような形でユーザーに問いかけた。

これまで他のプラットフォームでやっていたことをそのままTikTokに持ってきただけであり、何1つ新規性がなかったので、金という形でまとめさせていただく。

P-まとめ

SIPの中でも最も予想しにくいのが、このPだ。やることをやってもバズるかどうかは正直運の要素が強い。正直これはどれだけタネを撒けるかにかかっていると言ってもいい。Lil Nas Xは細かいところまで、歌詞に気を配っていた。Lil Uzi Vertも#Futsalshuffle のダンスを流行らせようとしていたが、ツイッターとインスタでは投稿するものの、TikTokに関しては何もアプローチしていない。それでも最終的にTikTokでバズっていたのは、TikTokに直接的な戦略を仕掛けてもうまくいく確率が低く、他SNSからの流入に注力した結果だろう。

またヒットしている動画には、それぞれ何かしらきっかけがある。ダンスの新規性だったり、マジックのようなトリックを少し入れてみたり、単純にダンス動画が流行っていると見出しにされていても、それぞれに異なる理由が存在する。その部分の辛抱強く調整し続けるしか、バズる方法はないだろう。バイラルすると、その分の対価はしっかりと帰ってくる。


バズマーケティングをしたいなら

SNSのバズマーケティングをする上で、ミームとTikTokのバイラルする仕組みを理解しておくのは前提として、重要なポイントは2つだと考える。

・トレンドウォッチング

・トレンド & アーティスト & 楽曲 の売り出し方

SIPで全てに合わせて言えるのは、「トレンド」の理解度である。実際にSNSの海に飛び込んでみなければ、このスピード感を掴むのは難しい。1週間前のトレンドは1年前のトレンドとなんら変わらない。理解したつもりになってはいけない。中学生の頃の自分を振り返ってみてほしい。大人は自分たちの娯楽を理解していただろうか? 

そして次に重要なのが、トレンド、アーティスト、楽曲の何を売り出すかを明確にすることだ。それが決まったら、それぞれの相性に合わせ、SIPのどの部分でSNS戦略を仕掛けるか考えるべきだろう。そうして全てを最大化した上でSNSに挑戦していかなければならない。

実際に日本でできるの? 

日本でできるかどうかという話だが、もちろん前例が存在する。

THE GREAT ESCAPEさんが上リンクにて、ゴールデンボンバーを軸にバズマーケティングを分析しており、ここも重要な言葉が残されているので引用したい。

「モーメントを活用する考え方は2つあると思っています。ひとつはすでに一般化されたモーメントを活用するパターン。市民権を得たイベントと言い換えてもいいかもしれません。2つ目は先駆けモーメントのパターンです」

引用: takanoshuhei.com

一般化されたモーメント(ここでは令和)では、ゴールデンボンバーがSNSをジャックした事例を紹介している。ここに関しては誰しも納得の分析だろう。

ただ2つ目の先駆けモーメントに関しては、もう少し考えなければならない。センター試験を先駆けモーメントとして扱っているが、試験自体は毎年必ず起こるものであり、先駆けという言葉を使うには少し疑問が残る。#がんばれ受験生 という言葉も他のブランドが乗りやすいものであったため、オリジナルの立命館大学より、東進など他ブランドをブーストするガソリンになった点も考慮すべきであった。モーメント化という方が近いのではないだろうか? 

ただ先駆けという考え方は、バズマーケティングにも通づるものがある。

忘れてはいけないのは、これは「モーメント」だということだ。一瞬の盛り上がりを利用しているのにすぎない。これをトレンドに乗せるのが、今まで述べてきたバズマーケティングである。これまで説明した「アイコン化」と近い。

抽象的な表現になるが、上記の例は1つの点(モーメント)にピンポイントで、何かを仕掛けている。最初に書いたが、作り出すべきはWAVEだ。その点を中心に広がりを作る必要がある。

路上ライブからSNSを通してヒットしたNovelbrightの例をとってみよう。

SNSをうまく使ったことでヒットしたと書かれているが、歌唱力が元で火がついたとは言い難い。歌の質に関しては後からきた部分が強い。特筆すべき事項として、口笛という1つの武器を、積極的に推していったという点が挙げられる。

信じられないほど口笛がうまい笑 ただこれは最初のバズではない。

マツコの知らない世界にて口笛特集をされていた際に、その力を利用してツイッターでは小バズを起こしている。ただその時期はあまり口笛を利用することをしなかった。カバーソングがバズった際も、売名という言葉を使い自分を表現しており、ネガティブな印象を持っていたようだ。

上記事にて2019年1月にBa.兼マーケターとして圭吾が加わったことをキーだと述べているが、まさしくその通りだろう。ボーカルの竹中が5月にTikTokを始めたころから方向性が変わっているように思う。

彼のTikTokは最初の動画13個で、自身の楽曲を1つもポストしていない。全てが口笛、カバー曲、コラボ、で占められている。自分たちを売るのではなく、トレンドに乗ることだけを考えている。ある程度人が集まると、そこからファンを利用し、ツイッターでもバズるようにもなっていく。

そのファンを自分自身でやっていたのが、また面白い話だ。リプでメンバーであることも明記しており、ステマに関しても細心の注意を払っているのもさすがである。そうして多くのファンを獲得すると、最終的に1つバズらせるポイントを見つけ、一気に全国区になっていった。

音楽的な話に戻ってきても、自分たちの能力に自信があれば、バズマーケティングを使わない手はないだろう。音楽で評価してもらいたいという気持ちも理解できるが、SNSに関する情報を遮断している場合、少しだけ勉強することも必要だ。音楽で評価してもらうためにSNSを利用することを、成功者たちは徹底している。

Novelbrightが日本で成功したということは、これから次の可能性を探る上で重要な事例になるだろう。口笛であろうと、カバー曲であろうと、何かしらSNSとの接点を見つけることができると、それを料理し続け、SNSのアテンションを引くことができる。

彼らはバズマーケティングを通して瞬間的な(モーメント)ヒットを望まなかった。SIPを通して考えると、Sでは口笛を利用し、新たなファンを獲得。Iでは路上ライブを徹底してポストすることで、ストリート上がりのバンドの枠を全て持っていってしまった。Pは、実際に路上ライブに足を運び、そこでの動画をまたポストしてもらうという、循環を作り出している。

バズったからといって、その数字に騙されてはいけない。考え、計算し、実行することができれば、必ず何かしら得れるものがあるはずだ。


written by yoshi

twitter: https://twitter.com/gegstart_ 



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