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Ashnikkoはなぜヒットした?

「Stupid」がTikTokで大きなバズを生み出し、一躍時の人となったAshnikko。今日はそんな彼女の駆け上がった道を紹介します。

生まれはノースカロライナのグリーンズボロ。ノースカロライナというとJ Coleのイメージが強い都市でしたが、最近はYBN Cordae、DaBabyなどビッグネームのアーティストも、どんどんのし上がってくるようになりました。ただAshnikkoはノースカロライナには11歳までしか住んでいません。むしろそれ以降は、アメリカにすら住んでいないです。今23歳なので、人生の半分以上を、ヨーロッパで過ごすことになります。

Ashnikkoが生まれると同時に、父親は学校を中退します。それからというもの、子を育てるために働いていましたが、Ashnikkoが大きくなると再び学習意欲を取り戻し、エストニアに家族全員での移住を決意します。もちろん彼女にとっても初めての地でしたが、持ち前の社交性を活かして、遠く離れた土地でも容易く馴染むことができたそう。

父親はそれ以降その地を気に入り、今でもエストニアに住んでいます。新規事業立ち上げや、行政の99%電子化など、テストマーケットとして多くのグローバル企業がこの国に注目していますが、そのようなことを父親は早くから見抜いていたのでしょうか? 親子揃ってやり手な気がしてきます。

そこから彼女はラトビアに4年ほど住み、18歳になるとロンドンに移り住みます。


多くの音楽に触れること

最近の若いアーティストは、どこか決まったジャンルに振り分けられない音楽性を持っていることが多いと感じますが、Ashnikkoもその点では当てはまります。

10歳のころから音楽的な活動を開始。詩や歌詞を書いたり、歌ったりという行動を始めます。15歳になった頃からラップも始め、18歳からは本格的に歌うことも練習し始めます。今ではラップよりも、歌うことの方が好きらしいです。

聴いている音楽も幅広く、ノースカロライナにいた頃はソウルフルで落ち着いた曲を。そこからフィメールアーティストに(女性のエンパワーメントに影響を受ける)。ヒット曲(Banger)が好きだったので、人気の曲はとにかく聴いていたそう。その一方で、あまり落ち込むような曲は聞かないとのこと。悲しい気持ちの時は、Bon IverやFrancis & The Lights、BANKS、Frank Oceanなんかを聞くらしいです。もちろんラップも聴いています。本当にいろんな楽曲に触れています。

中でも面白かったのは、「Pop Structure」が好きと話していたことです。Popミュージックが好きと語るアーティストは多くいますが、その楽曲の構造自体を評価する人は、私の見てきた中だと稀な印象です。

ポエムから得た影響

幼い頃からポエムを長いこと書いていたと話していますが、そこから多くのことを得ています。10歳から書き続けていた経験は確実に楽曲にも活かされています。ただ学校では、セクシャルでふざけたポエムを書いたことで、先生を困らすなどをしていました。自分でも問題児だと自覚しているくらい。

逆にこの経験が彼女を次のステージに進めます。Billboardでのインタビューを読むと彼女の考えが少し分かってくるでしょう。

「私にとってジェネレーションZやミレニアム世代は将来を喜べない状況にあると思います。そこで私は、ユーモアが成長する面白さを見つけました。音楽であれ、ユーモアであれ、現実逃避する必要があるんです」

「音楽とユーモア」、2つの可能性を同時に模索しているのが伝わります。根底にあったこのような考え方が、楽しむ&共有するエナジーが強いTikTokと結びついたのは、自然なことのような気がします。

イギリスでの音楽活動

ロンドンに移り音楽活動を始めたわけですが、すぐに花開いたというわけではありません。

『様々なジャンルをミックスし、ポエムから学んだリリックを、ユーモアを通して伝える』

という新たな手段を広めるには少し時間がかかりました。当時はそもそも髪も染めていなく、キャラ設定がそこまで定まっていなかったのもあるようです。

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上がイギリス、下がアメリカの「Ashnikka」で検索した際のGoogle Trendsの結果ですが、10月の最終週あたりで爆増しています。これは「Stupid」がTikTokでバズった結果です。ただイギリスを見てみると、2019年3月くらいから8月くらいまで、少しずつ注目を浴び続けているのがわかります。

Warner Music Groupに足を運んで、契約にサインをする動画をあげています。この契約が行われたのが、ちょうど3月あたりであったと考えると、これまでやってきたことが、一つ効率化されていったのかも知れません。この場で「法的に縛られるんだよね? 」と、ジョークを飛ばすセンスはさすがの一言です。

それからパンクとラップを融合したような曲に合わせ、フェミニズムよりの自由奔放なスタイルを確立していきました。

前作のEP『No Brainer』から「No Brainer」や、先行シングルの「Special」は、イギリスを中心にアンテナの張っている人たちに引っかかり始めます。

アーティストの田島ハルコさんも、早くからその才能に注目していました。上記事でも紹介していますが、唐辛子を食べて1曲歌う動画など、そのユーモアはちゃんとリスナーまで届いているようです。

そしてEPのタイトルにもなった「Hi It's Me」のMVをリリース。歌詞から引用した自分で自分を誘拐するという狂ったコンセプトのMVですが、シンプルでキャッチーなリリックと、彼女のルックスがマッチしており、一気に名前が売られ始めます。

そのちょっとしたフィーバーが起こっている間に、EPの中から「Stupid」という曲がTikTokのアンテナに引っかかり、バズが起こりました。

この曲に参加したYung Baby Tateは全曲「Girl」という単語が入った、コンセプトアルバムを出すなど、フェミニズムとしての一面も兼ね備えており、ぴったりな人をピックアップしたように思います。

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TikTokでバズったのはイントロの部分です。まず「Wet!! Wet!! 」という単語のシャウトから始まります。Ashnikko曰く、フニャチンを表しているそうなのですが、バズっている動画は単純に「What!? What!? 」と捉えられているような気がしました。元彼に喧嘩を売っている点では、同じなので大きな誤読ではないです。

そのあとに「バカな男は、私に必要とされてると思ってる」という歌詞が続きます。冒頭の怒りに比べ、かなりクールな考えです。2018年に人生を成長させる出来事があったと話しており、そこからこのリリックが生まれたそう。

この転換を利用して、TikTokでは左手でベルト(らへん)を掴み、右手を高らかにあげ、シュールなダンスをするフェーズに変わります。怒りからの、Funnyな動画へ。そしてリリックでは、女性のエンパワーメント。彼女のやりたかったことがそのまま、15秒ほどの動画に詰められているような気もします。

後半のダンスはBluefaceのダンスとも似ており、アメリカでのバズもほぼ同時期に起こりました。(先ほどのグラフをご覧ください)2019年、世界中に広めるためには、一つの国でぶち抜けるのが一番手っ取り早いのですかね。日本でもそれとなくバズっています。

Ashnikkoの場合、ふざけたり、わざと注目を浴びることをSNSに合わせてやってきた訳ではありません。ラトビアにいた頃から、学校ではふざけ倒し、イギリスに移ってからもそれを続けていました。

TikTokという彼女のパフォーマンスを120%に表現できるプラットフォームができたことで、なるべくしてバズったのでしょう。TikTokユーザーは、とにかく面白いものを探しています。いつ見つけられてもいいように、何かしらネタになりそうな弾を込めておくことが重要なのでしょう。

そしてこのバズが起こったすぐ後に、MVを投下。

TikTokからYoutubeに移ってきた人の心をがっちりと掴みます。そしてMiley CyrusとCody Simpsonカップルも動画を投稿。

Geniusの人気企画Open Micにも出演しています。

軌道に乗せたと言ってもいいでしょう。2週間でフォロワーは7万人増加。

「なんでTikTokでヒットしたかいまだにわからない。TikTokを入れる前に、Stupidの歌詞は書き終わってたし」

と話す通り、何かバズるために努力をしたわけではありませんでした。6ix9ineやLil Pumpが行ってきた釣りとも一味違う。もう彼らのような作られた炎上は、そこまで盛り上がらなくなりました。オーガニックで、リアルで、自由奔放な問題児を、TikTokは探しています。そこに、たまたま彼女がぴったりと収まったのでしょう。

インタビューを読んでいても、彼女のアイデアはこれからも尽きることはなさそうです。この快進撃はもう少し続くでしょう。


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WafflingTVというYoutubeチャンネルで、週一くらいのペースで動画も投稿しています。

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ちらっとでも見てください! よろしくお願いします! 

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written by Yoshi



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