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”LIL BEAMZ IS LIL BEAMZ” 全曲本人解説 -自分と他者の間に生まれたlil beamzという感情-

yoshiです。

11/16にlil beamzの新EPがリリースされまして、全7曲をそのまま本人に解説頂きました。これ読みながら楽曲を聴くとまた変わって聴こえてきたりして、面白いです。何回も楽しめます。何回も聴いてください。

「lil beamz」というアーティストについては、インタビューにて既に色々触れられているので、下に参考のリンク貼っておきます。

とにかくまずは、本人解説を読んで頂きたいので、早速進みたいと思います。

自分の加筆部分に関しては、文章の最後に入れてます。3000字+3000字くらいあります。

楽曲へはこっから飛べます。


↓以下全曲本人解説↓

1. AME GA YAMUMADE - KNOTT REMIX

この曲は、このEPで1番最初に作った曲で、前作『LIL BEAMZ2.0』を出した後に、色んな人からの反響をめっちゃもらって。
それに食らっちゃって。

「あぁ、1人じゃないなぁ」って。

音楽始めるまで自分は
「結局俺って1人ぼっちじゃん、それでいいしその方が楽だ」と思ってた。
けど、本当は寂しくて、
そんな自分をどこかで変えたかった。


今こうして音楽をはじめれたのも、新しく出会った友達のおかげだし、サポートしてくれてるスタジオの人、曲を聴いてくれてる皆んなのお陰で今の自分があって、一人だと思ってた自分にもいつのまにか「俺はもう一人じゃない」と思えるようになってた。
それに気がついた。

この曲を作る前日に、僕の友達同士の間でちょっと色々あって、あんまり皆んなで集まることが減っちゃって。
それがとても悲しくて、でも自分は何もできなくて。
もし僕が音楽で有名になれたら、その友達も前みたいに一緒に集まれるかも、だったら今の僕にできることはこれしかないんだって、
みんなを含めてレッツゴーするのが使命なんじゃないかと思ったんです。

だから、「昨日気付いたんだこれが俺の使命」って感じです。

あとこの曲、元は全然違うトラックで、でも録り終えたあとKNOTTさんが気に入ってくれてREMIXしてくれたんです。
で、届いたのがまさかのオーケストラで。
一気に曲のスケールがでかく、自分一人の力じゃ絶対表現できないスケールの大きさになった。
この曲のでかいパワーをみんなにも浴びて欲しくて1曲目にしました。


2. STEINS:GATE

このトラックを見つけた時めちゃテンション上がって。勢いがもうアニメのOPじゃんって。

「LIL BEAMZってドラマ、アニメの主人公っぽいよね」ってスタジオのDa.Iさんが言ってくれたことがあって、じゃあ一曲そういう気持ちで作ってみよって思って作りました。

「今は普通じゃいられない」ってhookの歌詞で歌ってるんですけど、
昔の僕は、本当に周りに合わせてばっかかで、人の顔色伺って、何かに怯えるみたいに普通を演じてるよう感じで。
そんな毎日を過ごしてたら、いつの間にか本当の自分がわからなくなってた。

音楽を始めてからのある日、自分が、曲の中では自分に嘘をつかずにありのままの自分を歌えてることに気がついた。

「普通」を演じてた自分が、音楽の中では他の誰かと違うことをしたいと思ってる。誰とも被りたくない。普通じゃいやだって。

ダメな自分、弱いクソな自分、情けない自分全部曝け出して、それでもやったんぜって。
そんな、むき出しの自分を歌った僕の曲を聞いてくれて、サポートまでしてくれる人までいてくれるようになった。

ありのままの自分でいいんだ。
もう周りに合わせなくていい、
僕は僕のままでいいんだって。

だからある意味、本当の自分がここから始まるような、lil beamzというアニメの主人公のOPになるような、そんな思いをぶつけちゃいました。
だからここのリリックはめちゃ気に入ってます。


3. BLUE LIGHT

いつもリリックを描く時、部屋を真っ暗にして1人で描いてたんですけど、部屋に貼るLEDのライトあるじゃないですか?あれカッコいいから欲しいなと思って買ったんですよ。
基本、部屋は暗い方が好きなんですけど、真っ暗過ぎるとテンション下がりすぎちゃって。
んでそのLEDのライトを点けたらなんか雰囲気よくて。
その時に丁度このビート見つけて、「やべー気持ちいい!」ってテンション上がって一人で踊ってたんです。
で、そのテンションでリリック書こうとしてたんですけど、普通に考えて部屋で1人で踊ってるだけでブチ上がることもない、部屋の色ちょっと変わってるだけやし、なにやってんだろと思って、いつものテンションに戻って、酒飲んでタバコ吸って座って書きました。


4. Chrome Hearts and LV jeans 

クロムとルイのジーンズが欲しいです。
あと月に50万くらいでいいんでください。

5. I AM I

この曲は今回のEPに入れるつもりで作ったわけじゃなかったけど、この曲が完成したときに、これはやばいだろ…と。
自分自身最高の手応えで、もうEP入れるしかねぇってなって。

実は、この曲が出来るまでEPのタイトルが「LIL BEAMZ 2.5」になる予定だったんですけど、この曲が出来てみて、改めて今回のEPの曲を聴き返していくと、めっちゃ人間とゆーか、"LIL BEAMZ という人間味"が出まくってる曲ばかりになってた。

だったらこれは『LIL BEAMZ IS LIL BEAMZ 』だなってなって変更しました。

本当の自分なんて、まず自分ですら理解できてないのに、他人になんてなおさらわからないじゃないですか。
そう思うと、この世界で誰も本当の自分を知ってる人が居ないってことになって、それは凄く寂しいことで。
だから、せめて自分だけは自分を理解してあげても、わかろうとしてもいいんじゃないかなって。
自分に対して自分は素直に、自分にだけは嘘はつかずにいようって、かわいい女の子とご飯に行った時に気付きました。

他の誰かになりたい憧れとか、自分クソだなって思うこともあったけど、今はどんな自分でも許せる、というか、認められるような気がする。
だって、どこまでいっても、何をしてても、俺は、"俺という存在"から逃れられはしないし、どんな自分でも受け入れるしかない。じゃないとこの世界で本当にひとりぼっちになってしまう。

それに、今はこんな俺でも周りにいい人とか、曲を聞いてくれてるみんながいてくれるなら充分いいやって。
もし、自分の選んだ道が間違いだとしても、それを正解だと信じて進むことが正解へと繋がると思って、レッツゴーリルビー。


6. losers life 

誰かに勝ちたいわけでもなく、誰にも負けねーでもなく、「負けたくない」って、すげー俺じゃんって思って。

6歳から高校卒業するまでずっと空手をやってて、ぼちぼち強かったんですよ笑
でも全然好きじゃなくて、むしろ大嫌いだった。
そもそも勝負事が嫌いで、なんで人と比べ合わなきゃいけないの?って。
んであっけなく高校卒業と同時に空手人生も終了して、アパレルでバイトを始めたんですけどそれもやっぱやらされてる感あって楽しくなくて。

そんな時に音楽はじめて、初めて自分で選んだことで本気になれる気がして。もう最高に楽しくて。
てか、もう俺にはこれしかないじゃんと思って。
だから、せめてこれだけは、、、「勝ちたい」とかおこがましいこと言わないけど「負けたくはない」。何にかは分からないけど。
僕が僕である最終防衛ライン的な感じ。


7. let’s go lil beam2

この曲の最初のブリッジの歌詞は、Have a Nice Day!ってバンドの「巨大なパーティー」という曲のサンプリングなんですけど、
久しぶりにその曲を聞いたあとにこのビートを見つけて、今回のEPの一つのテーマでもある「みんなと一緒に」ってゆーのと、その歌詞がハマるな、と。
なんかたまたま久しぶりに聞いて自分のマインドとフィールしてることにドラマを感じてサンプリングしました。

あとこの曲は自分の中で珍しく超ポジティブ曲で「EPの最後には救いだね。みんなで踊りたいね」ってDa.Iさんと話してこれを最後にしました。(Da.Iさん曰くキングゲイナーっていうアニメのOPのイメージらしいです)
僕の1番最初のシングル「Let's Go lil beamz 」からの軌跡みたいなものも感じてくれると嬉しいです。

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↓こっから自分の言葉です↓

私が初めて聴いたlil beamzさんの曲は、「Michiko London」だったのですが、スネアも完全に抜いた楽曲で、現行HIPHOPとはかけ離れたスタイルに、面白いなぁと思ったのが最初の印象です。

Tohji「oreo」だったりもスネアを抜いたスタイルで、(簡単にまとめますが)コロナ禍環境からの延長線上の曲だとインスタでも話しており、J HIPHOPの新たな方向性として一つ生まれた楽曲だと感じています。「Michiko London」では、ただ家から出ることも少なかったlil beamzにとって、コロナで起きた状況を既に擬似的に感じ取っていたのかなと思うと面白いです。EPの話から脱線しそうなので戻します。

lil beamz自身、アニメから受けた影響が強いとインタビューでも話しており、今回のEPでも強く感じたので、先にアニメとHIPHOPに少し触れつつ話していきます。

音楽的にはデーモン Astariに出てくるような、Capoxxooaf1fats'eに近いスタイルで、直接または間接的(ビートピックなどから)に影響を受けているのが伺えます。また歌詞では、自慢やフレックスとは距離を置き、より内向的なスタイルが特徴です。

音楽ライターのTrey Alstonさんの記事でアニメMVがHIPHOPシーンにおいてどのように影響を与えていったのかについて触れられていますが、日本のアニメカルチャーが独特の進歩をYouTubeで遂げたことで、HIPHOPシーンの成長を陰で支えていたと書かれています。

そうした広がりが2010年代に大きな盛り上がりを見せるにつれ、誤認識を含んだ、ネオ東京の感覚がUS、ロシアを中心としたインターネット上に徐々に形成されていったと感じています。どっから持ってきたかわからないような、Vaporwaveの文化とは違い、該当アニメを見たことある人が、アニメを見ていた時の感覚に、直接的な懐かしみを感じているのが、この文化の特徴の一つではないかとも思います。

アニメMVの意味づけに関しては、第三者であるアニメを切り抜き貼り付ける映像制作者が決めていたということになります。アニメと楽曲で受けたそれぞれ別の感情を一つの映像作品にMIXしていることに関しては、アーティスト本人は全く関わっていないからです。そうした流れの中で、lil beamzの作品はそれらの文化を先に進める役割もあるのではと感じています↓

そこで今回のEPの話に戻りますが、個人的に面白いと思ったのは、2曲目に登場する「STEINS;GATE」に対してのコメントです。

「LIL BEAMZってドラマ、アニメの主人公っぽいよね」ってスタジオのDa.Iさんが言ってくれたことがあって、じゃあ一曲そういう気持ちで作ってみよって思って作りました。 ーー中略ーー だからある意味、本当の自分がここから始まるような、lil beamzというアニメの主人公のOPになるような、そんな思いをぶつけちゃいました。 だからここのリリックはめちゃ気に入ってます。

アニメについての情報を一次的に入れていたlil beamzが、その考えを自分に落とし込んで、音楽で表現するというのは、(翻訳されたものでしか情報を取得できない&翻訳された時点で一次的な情報ではないため)海外のアーティストでは到達できない部分に侵略し、自由に表現しているようにも感じました。そういった面からも音楽的な系譜はそれらから引き継いだ後、そこから先に駒を進められるのは、日本人であるlil beamzしかいないのではと考えています。

歌詞を見ると、「蝶のように舞い」や「過去を変え別の世界線へdive」など、タイトルにもなっているシュタインズゲートからの直接的な引用も見られます。ただ、フックの最後のラインでは、「原付のまま走るhigh way」と締め括られているのが、またこの曲の面白さでもあります。

等身大の歌詞を書くことが、彼の核とも言えるソングライティングの特徴ですが、自身を表現する際のキーアイテムになりつつある原付(Dio)を持ってくるのが、アニメの世界観で生きるlil beamzが綺麗に表現されていると感じました。


FNMNLのインタビューにて『lil beamz 2.0』以降は、ポジティブな歌詞が多くなったと話していますが、その中でも特徴的なのは6曲目の「losers life」と4曲目の「Chrome Hearts and LV Jeans」です。

等身大について話す時に使われる一般的なラインとして、「ネックレスはいらない」や「ロレックスはつけない」、「偽物は買わない」といった反FLEXが目立ちますが、彼の場合は、そうしたFLEXに対して憧れを消すことは決してしません。

「losers life」では、「負けたくない」という言葉を繰り返していますが、本人が話していた「何かはわからないけど負けたくない」という言葉通り、漠然とした対抗意識を持っていることがわかります。その対抗意識が、他者にいくのがこれまでのHIPHOP的な思考回路でしたが、自己に向かっているのも彼にしかできない表現の一つです。反FLEXとして自分を認識するのではなく、あくまで内省的な考えの延長としてということがわかります。

物質的なものに対して価値を評価しているという点では、「Chrome Hearts and LV Jeans」がタイトル通り表現しています。個人的には、意外とEPの中で重要な曲の気がしました。あれも欲しい、これも欲しいと憂う中で、Chrome HeartsとLVのJeansが欲しいと名前をあげてラップしています。

「月に50万円」という部分からも分かるとおり、彼にとってのFLEXは安定と少しの贅沢のようです。『lil beamz 1.0』リリースから、これまで自省を通した自己認識の中で、ロールモデルとしてのlil beamzの部分が絶妙に表現されていると感じました。

曲の途中でHIPHOPドリームを挟みつつ「こんな夢をみんなにも見せてあげたいな」と寂しく歌い上げますが、その寂しさは叶わない夢だというのを悟っているためでもあります。捨てきれない感情との板挟みになりながら「あれも欲しい、これも欲しい」嘆く歌詞が、より深く刺ささります。


最後に本人も「lil beamz史上最高傑作」とも話す、「I AM I」に触れて終わりたいと思います。

4つ打ちのEDMの要素も含んだアップテンポなビートから、忙しく移り変わる景色に、lil beamzの感情がアップダウンを繰り返し、ポジティブに向かっていく姿と重ねることができます。

この曲は始まりと終わりで「本当の俺を君は知らない、俺も君の本当なんて分かんない」という同じラインが使われています。楽曲解説にもありますが

本当の自分なんて、まず自分ですら理解できてないのに、他人になんてなおさらわからないじゃないですか。そう思うと、この世界で誰も本当の自分を知ってる人が居ないってことになって、それは凄く寂しいことで。だから、せめて自分だけは自分を理解してあげても、わかろうとしてもいいんじゃないかなって。

"自分のことを理解している人は誰もいない" "自分は自分から逃げることができない" というネガティブとも取れるような考えから、ポジティブなエネルギーに転換して、前進力に変えているという。lil beamz 1.0、2.0から、自身のキャリアを成長させ、次のステージ進むという点で、このアルバムの1つキー的な考え方になっていると感じます。

アニメを通した表現というのは、自己の同化として多少の誇張表現を含み使われることが日本、海外問わず一般化したアイデアです。同EPの場合は、アニメを通して自身の考えに吸収し、自己認識を繰り返す中で生まれたlil beamzというアニメのlil beamzという新たな人格のような印象さえ受けました。

もう既に次のシングルが準備されているそうです。楽しみです。

ありがとうございました。

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本人解説 written by lil beamz

それ以外 written by YOSHI



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