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Webライターに向いてるのは、結局は「社会人総合力」のある人 ―リキッド社会の生存戦略

どんな職種でも定期的に話題になる、「◯◯にはどんな人が向いてるのか」問題。

この問題、「どんな人なら◯◯で食えるか・儲かるか」とニアリーイコールだと思うんですけど。

結局はこのご時世ね、職種に関わらず、稼げるのは「社会人総合力のある人」だと思うんです。

社会人総合力とは

いまの社会は、グローバル化と新自由主義によって極度に複雑化・不安定化しています。これは社会学者バウマンが「リキッド・モダニティ(液状化した近代社会)」と呼んでいるもの。

私は、このリキッド・モダニティにおいて求められる社会人総合力には、以下のようなものが含まれると思っています。

  1. 不安定な社会状況にも適応できる精神的な柔軟さと適応力

  2. 「社会の下支え・ロールモデル・向かうべき未来」のすべてが見えない中でも迷わずに進むことができる、個人としての強さ

  3. ときには他者から奪ってでも自分が生き抜く、という割り切った気概

  4. 理不尽な労働環境でも倒れない豊富な体力

  5. 市場の要求に応じてどんなスキルでも発揮できる多方面の有能さ

社会人総合力なんてねぇよ

私? 私には1~5のどれもありません。頭が固くて不器用。仕事と割り切って許すことができないことが多い。過去現在未来がよく見えなければ不安でいっぱいになる。頭では「地球の資源は限られている、世の中はある程度奪い合い」と理解してはいても、誰かを出し抜こうという気分になれない。ちょっと無理するとすぐに体調を崩す。得意なのは上手な文章を書くことだけ。そんな、コンピテンシー(競争力)を全く欠いた人間です。

私は決定的に社会人総合力を欠いているし、ゆえになんの仕事をするにも向いていない。そして、そういうところが障害者なのだと自分で思っています。
※「障害者のすべてが仕事に向いてない」とは言っていませんし、言う意図もありません。これは私自身についての分析に過ぎません。

だって、障害というのは最近のメインの文脈で言えば相対的なものですからね。「多数派にとって都合のいい社会的システムの中で一定以上の障害(さしさわり)を感じる少数派を障害者と定義する」というのが、最近主流の「障害の社会モデル」という考え方です。

私だってリキッド・モダニティに生きていなかったら、身体も弱いし変人でカタブツだけど文章書かせたら天下一品だってんで職人的な物書きとして一生不自由なく暮らしていたかもしれません。てやんでい。私が社会に適合してないんじゃない、社会が私に合わせないのが悪いんでい。

リキッド・モダニティというチキンレース

リキッド・モダニティは、労働力としてコスパのいい「社会人総合力のある」人と、福祉の対象(のうちすごく運のいい人)にしか十分なお金を出さない、という特徴を持っています。リキッド・モダニティを安心して生きられる人はすごく限られている。みんなが労働力を買い叩かれ、生命の値段を低く見積もられてチキンレースを強いられてるんです

むしろ、こういう点においてこの社会はリキッド・モダニティと呼ばれるのだと思います。皆が地盤を失い、溺れる社会。

Webライターがリキッド・モダニティで生き残りたいなら

私はもう諦めましたけど、諦めない人のために書いておきますね。もしこうしたリキッド・モダニティで生き残りたいなら… 労働力を買い叩かれたくないなら、冒頭近くに示した「社会人総合力」の5要素をひとつずつ高めていくといいのではと思います。

1.精神的な柔軟性と適応力

コロコロ変わる労働条件や仕事内容にも適応できるようにいつも心の準備をしておく。このご時世仕事するとはそういうもの、むしろそういうことにお金をもらっているのだ、とある種の割り切りをする。

Webライターなら、これ文章書く作業よりもほかの作業のほうが多いじゃん! みたいなのでもイライラしない。

2.個人としての強さ

過去現在未来、全部霧の中でも、覚悟を持って「これだ」と思った方向性を定めてそれに向かって進む。自分の選択の結果には責任を持ち、ウジウジしない。

Webライターなら、自分がどんなタイプのライターとしてどんなふうにどれくらい稼いでいきたいのかを明確にして、違うタイプの人の動向をチラチラ見て動揺したりしないように自分をしっかり持つ。

3.割り切った気概

自分や身辺の人を食わしたり、自分の直接の取引相手(クライエント)を喜ばせるのもひとつの偉大な愛だと信じて、ときには人の利を阻害したり奪ったりすることも厭わない。

Webライターでいえば、自分の仕事の結果がロングスパンで見てGoogleの検索結果の利便性を多少損なったり、読者が自分のせいで本人にとってあまり良くない選択をしたりする可能性があったとしても、クライエントを喜ばせ、自分にお金が入ってくるならそれで十分立派なことだと考える。

4.豊富な体力

体調管理に勤める。心身の調子の維持に利する情報に貪欲になり、試せることは試す。食事、運動、睡眠に気をつける。

スマートウォッチとかで自分の自律神経の状態や運動量、睡眠の質なんかをトラッキングするのもおすすめ。私はこれ使ってます。ストレスレベルを表示してくれるのと同時に、ボディーバッテリーという「体力の残量」みたいな値を出してくれるのでめちゃ便利。

5.多方面の有能さ

クライエントが単価を上げたり、より多く仕事を回したりしてくれそうなスキルを磨く。

Webライターなら
・インタビュースキル(取材記事が書けると一気に仕事の幅が広がる)
・画像編集スキル(アイキャッチとか作れるといい)
・イラスト作成スキル(上に同じ)
・Webデザインスキル(LP全体任せてもらえるかも)
・WordPressスキル(入稿だけじゃなくて管理もできるととてもいい)
・マーケティングスキル(コピーも書けるだけじゃなくてマーケティング戦略自体提案できるといい)
・SEOスキル(まあ基本ではある)
・Web広告提案スキル(Google Analyticsの分析とかできると重宝される)
・校正・校閲スキル(重宝される)
・編集・ディレクションスキル(コミュニケーション能力や交渉力、マルチタスキング力がキモ)

書いてみて、私の場合は上記のような努力をいろいろやってみた結果、「私の場合、努力でカバーして続けられるたちのことじゃないな」と思って諦めたんだったなと思い出しました。

私はともかくメンタルが豆腐なのと、生まれつき体力が人より劣るのと、文章を書くことに愛とこだわりを持ちすぎてたのとで、1~5すべてについて無理でしたね… ここに書かれたことについて「なるほどそうか」と納得して実際に続けられる人なら、Webライター向いてると思うし、続けられると思います。

今後自分の仕事をどうしていくかの判断にも使ってみて

以上、Webライターとして食っていきたい人向けに書いてみたのですが、読んでみたところで、私みたいに「あ、やっぱ向いてないな」ってなる人ももちろんいると思います。

そんな感じで、今後Webライティングなり、別の仕事なりを自分が続けていくか、あるいはどんな戦略でやっていくかの判断にこの記事を使ってもらってもいいと思います。

同じライティングでも紙媒体や書籍のライターにもいろいろあるし、Webライターとはまたぜんぜん話が違います。ただネットで「ライターに向いてる向いてない」という話にのぼる場合のライターって多くの場合Webライターを指してるので、今回はWebライターに向けて書いてみました。

最後に重要なこと。冒頭にも書きましたが、どんな職種も、いまの社会で買い叩かれずにある程度以上稼ぎ続けるには結局のところ社会人総合力が必要。なので、やっぱり「◯◯の副業で誰でも楽に稼げる」みたいなのは残念ながら基本的に関係者によるマーケティング上の夢物語… もっと言えば嘘だと思ったほうがいいです。ほんとに誰でも楽に稼げて続けていけるならみんなその仕事一生やってますよ。

私は自分のマーケティング戦略の一環として、また既存の案件の継続として、これからもWebで文章書くことはやっていきます。でも、アイデンティティ自体はWebライターからは離れたところに置いていきたいと考えています。

では、また何かの機会に。みなさんが良いキャリア、良い人生を歩まれることを祈っています。

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