とあるベンチャー創業者の再就職活動の記録とFairyDevices株式会社への入社報告

こんにちは、関です。
最近はポケモンカードにハマっています。シティリーグは3-1のオポ落ち9位、愛知CLは1-3ドロップでした。
スイスドロートーナメントの途中ドロップは絶対に許しません。
次のシティリーグも近いのですがパルキアを握るかを悩んでいます。

昨年の夏に以下のようなエントリで創業したGunosyの退職と転職活動の開始を報告していました。

上記のエントリをきっかけに多くの方をお話をするきっかけをいただきました。
ご連絡いただいた方、ご紹介いただいた方ありがとうございました。
色々お話しいただいた中で良い出会いに恵まれ、タイトルの通り、FairyDevices株式会社にお世話になることになりました。
入社については、会社の方からも昨日にリリースが出ています。

本エントリでは、私のここ半年の活動や転職活動を振り返りつつ、なぜFairyDevices社に決めたのかという話、そしてこれから何をやっていくのかという話をします。
ちなみにタイトルにGunosy共同創業者って入れてないのは、いつまでも辞めた会社のことを肩書きにし続ける人たちが嫌いだからです。
FairyDevicesがどのような会社なのかも宣伝がてらします。
上場企業の創業者が次のキャリアを選ぶというのはあまりないことだと思うので、誰かの参考になるような気はしないのですが、一人語りな読み物として楽しんでいただければ幸いです。

再就職活動の記録

フリーランス活動から感じた働くことの意味

辞めた後の期間は主にSFCでのデータサイエンス講義を中心に、退職エントリでお声掛けいただいた方々とお話をし、お仕事をいただいたところでお仕事をするという感じでした。
あとは趣味に時間をたくさん使っていて、ポケモンカードや脱出ゲーム、スプラトゥーンやAPEXに時間を使ったり、土日は混み合うスイーツ店を平日一人で巡ったりしていました。

手伝ってた会社では、だいたいこんな感じのことが起こりました。

楽しければ就職しないでこういうお手伝いメインでもいいかなぁと思っていたのですが、以下の2つの点から再就職を目指すことにしました。

  •  自分の時給が割と高いので、フリーの開発者としてプロジェクトにコミットしようとするとコスパが悪い

  • アドバイザリーだと価値出しできることはありそうだが、自分の知識の切り売りのような形になるので、自身の成長は難しい

結局お手伝いだと、「できることしかできない」なぁという感想になりました。
できるかどうかわからないことに挑戦することが成長には欠かせないと思っています。
シンプルなプログラミング力や機械学習の知識や技術力だけなら自分で学ぶのでもいいのですが、それらの力をビジネスに繋げるところまでに広げていくと、会社に所属するのが一番だなぁと感じました。


「成長すること」は人生をやっていく上で決して必須ではないですが、自分の中ではかなり優先順位が高いなぁとこの期間に思いました。
この辺りはPeingでいただいた以下の質問への回答にまとめています。

Q. 関さんはしようと思えばFIREすることもできると思うのですが、働いているモチベーションはどこにありますか?

(以下回答から抜粋)
1. 大事にしている友人の中には仕事の話をして楽しい人が多く、そういう友人たちと今後も楽しく付き合っていくため。仕事でのチャレンジやその学びが最も楽しい話題なので、働くのをやめてしまうとそういうところの楽しさが減ってしまってつまらない。
2. 世の中の移り変わりが早いので、数年単位で離れてしまうと自分は分かっているという自己肯定感はあるのに時代遅れで何もわかっておらず、その上で周りからは一定持ち上げられる老害が爆誕してしまう。そうはなりたくない。もう一生働かないことを決められればいいけど、そう決められるほど仕事を嫌いじゃない。
3. 40代50代でも面白い仕事をやっているためにはもっといろんなことができるようにならないといけない。投資やアドバイザーだけでは今の持っている技能の切り売りなので大きな成長がない。できるかどうかわからないことを任せてもらうにはしっかりと腰を据えてチャレンジすることが大事。

https://peing.net/ja/q/22331525-5588-4b38-919a-bf12210a4545

この1-3はGunosyを辞める前からある程度思っていたことですが、実際にやめてフリーの期間を一定持ったことで、より具体的になった気がします。
あくまでフリーランスが成長できないということではなく、自分の目指す方向に進むためにはフリーランスでは限界があるという感じです。

再就職活動で感じた自分のキャリアの課題

再就職活動は、退職エントリを通じてお声かけいただいた方と会うことを中心に行いました。
幸いにも多くの方からご縁をいただけることになったのですが、自分自身のキャリアの課題も感じる結果になりました。

大きく感じたのは、自分は世の中から思った以上にエンジニアとして見られているんだなぁということでした。
決して悪いことではないのですが、今後やりたいと考えている仕事はどちらかというと経営レイヤーに近い仕事なのですが、そういうロールを見据えた話はあまりもらえなかったです。
創業者というキャリアは経営っぽさはありますが、CxO的なポジションでなかったということは、そういう形の評価になるのだなぁということを感じました。
またこういう仕事は人的ネットワークから降りてくるところもあるんですが、自身がそういうネットワークを形成することをやってこなかったこともあります。

また前回のエントリで書いたようにある程度規模のある会社の組織の中でやって見たいというモチベーションもありました。
しかし34歳という年齢はスタートアップの業界としては若くないのですが、そうした会社にとってはまだまだ若手です。
私が希望するようなポジションをそうした会社で得るのは、上記の経営チームとしての実績不足も相まって難しそうな印象を受けました。

こうした経緯を踏まえて、自分が次の会社に求める条件として「経営陣として、もしくは近い将来の経営陣への昇格を見据えた経営に近い役割での参画」のが高い優先度で加わりました。
自分自身が行いたい、事業に近いところでの新しい研究開発組織の模索は今のキャリアでは難しいので、より長期の課題として研究開発や論文執筆に直接関与することの優先度は下げました。
その結果、先端技術への経験と知見を活かすこと、今後自分が研究開発組織マネジメントに関われるようににつなげること、そして経営チームとしてのキャリアを積むこと、それが次の転職における条件となります。
そしてキャリアの実現のために今回の再就職では先端技術を持っている組織の中で、先端技術のチームとビジネスチームの間に立つポジションを目指すことにしました。

FairyDevicesへの入社

このような背景の中で、本エントリのタイトルにもあるようにFairy Devices株式会社へ入社することになりました

FairyDevicesとはどのような会社か

まずFairyDevicesがどのような会社かについて書きます。
入社を決めた後、友人たちに話すと知らない人が大半だったので知名度はそこまで高くないのだなと思いました。
音声処理技術に関わっている技術者・研究者や未踏コミュニティの人たちには馴染みのある会社です。

会社の創業は2007年で今年で15年目になります。
音声言語処理に強みのある会社として知られ、その領域での難易度の高い受託開発を中心にビジネスをおこなっていた会社です。
2018年に初めて資金調達をし、スタートアップ企業になりました。

調達のきっかけになった、現在メインで行なっている事業がTHINKLET/LINKLETです。
CES2022で3部門イノベーションアワードを受賞、海外メディアにも多く取り上げられました。
遠隔作業支援のための首掛けカメラ付きデバイスになります。

かっこいい〜〜〜〜〜!!!!

先端にカメラがついていて、自分の手元の情報を写すことができます。
小さな穴はマイクで、多方面についたマイクと強みである音声処理の技術により、工場などの騒音環境下でも話者の声を拾えるのが特徴です。
ハンズフリーで映像も音声も飛ばせる、more betterなトランシーバーとしての役割を果たしています。
加えて通信はネットワーク経由なので、作業者の映像、音声データを作業者の負荷なしに収集することができます。
この収集したデータを分析・活用することによって業務改善を図るDXソリューションを立ち上げることを目指しています。

なぜFairyDevicesに入社したか?

お誘いは未踏の先輩でもあるCOOの久池井さんからいただきました。
社内に論文を出しているような研究チームがすでにあり、技術的な強みをビジネスに転換しているという条件に一致しているというところでまず興味を持ちました。
その上で入社に向けて決め手になったポイントは大きく3つあります。

第一にTHINKLETというプロダクトの面白さです。最初聞いた時どう使うのかイメージがあまり持てませんでしたが、実際に動いているのを見せてもらったこと、またダイキンさんなどのユースケースを聞いたことで、ものすごく可能性を感じました。
デバイス単体でユースケースがあり、それを使うことでデータが溜まっていく仕組みは、データ分析・機械学習を実務で進める上でとても重要になる点で、それが実現できそうというのはとても魅力を感じました。
自分自身これまでウェブの世界のデータと戦ってきたのですが、ウェブの外のデータに対するチャレンジができることも興味を惹かれました。
前職が自分が生み出す過程に強く関わったプロダクトだったので、次の組織でそれほどの愛着を持てる事業やプロダクトに出会えるか不安だったのですが、このプロダクトであれば熱量を持って関われるのではないかと感じました。

2つ目にTHINKLETの提供を通した研究開発支援というミッションがあることです。
すでに述べたように、僕には大きな組織での研究開発マネージメントをキャリアの中で実現したいというモチベーションがあります。
今回の就職活動を通して、今の自分には難しいことを感じていた中で、フェアリーでの活動を通してその経験を積むことができることはとても魅力的に移りました。

そして最後に、CEO・CTOを務める藤野さん、COOの久池井さんという未踏の先輩として尊敬している御二方と働けるということです。
久池井さんには昔から可愛がっていただいておりまして、自分にはないスキルや知見を持っていることと、気持ちよくディスカッションができる方だなと思っておりました。
藤野さんは直接交流した機会はそこまでなかったのですが、ハードウェアからソフトウェア、機械学習に至るまで非常に高い技術、それらをまとめてプロダクトに昇華する力、課題を技術で解く力いずれもがずば抜けて高い方だと思っていました。
他のメンバーとも事前にお話しさせていただき、皆さん非常に良いメンバーだと感じ、このチームで頑張っていきたいと思いました。

上記の理由に加えて、経営チームにいずれ加わっていくことに対して前向きなお話が得られたことや、上場前の会社ということでキャピタルゲイン的なアップサイドの条件も良いものをいただき、入社を決意しました。

入社してみてどうだったか?

さて入社して早くも3週間ほど経ちました。
週5で働くのは去年の7月以来ということで、最初の1週間はかなりの疲労がありました。
金曜夜のビールの美味さ、土曜午前の倦怠感が懐かしかったです。
最初ということもあり、週3~4日は出社しています。
コロナ禍になってからこれほどまでに出社するの記憶になかったですが、対面で仕事をすることで得られる情報とかコミュニケーションの価値はやはり高いですね。
リモートの良さももちろんあるので、その辺りうまく両方活用していきたいところです。

入社前から大企業からの引き合いが多いと聞いていたのですが、想像していた以上に多いです。
いろんな会社からの連絡が飛び交っています、社会からの期待を強く感じます。
本当に世の中の課題にマッチしたプロダクトを作っているのだなぁと感じやる気が増しています。


15年近い歴史のある会社だからか、スタートアップ感がいい意味でも悪い意味でも少ないところがあるなと思います。
いい意味ではシニアなメンバーが多くて落ち着きがあるところです。
その反面、スタートアップ特有の勢いや一体感がもう少し出てくるといいなぁと思っています。
その辺り今のメンバーのいいところを無くさないようにしつつ、自分の経験が活かせる部分を探してきたいなと思うところです。

入社にして最初にやった仕事が採用ページづくりです。
現行の情報発信は顧客に向けたプロダクトの発信が中心だったので、採用面でのコンテンツがあまり出ていませんでした。
そこでカルチャーや開発体制などの社内の情報を集めて採用ページをつくりました。
作る中で自分自身社内のことを学ぶいいきっかけになりましたし、いろんなメンバーとコミュニケーションをとることができてとてもよかったです。

採用情報


というわけで人を募集しています。作った採用ページです。


引き合いやプロダクトへの要望がめちゃめちゃあるけどリソース的に応えられていない現状があり、チームを大きくしてもっといろんなチャレンジをしたいです。

採用ページにも書きましたが、めちゃめちゃ元々研究開発を主軸としたテクノロジードリブンな会社です、その会社がスタートアップ的な経営にチャレンジをしています。
ものづくりが好きなメンバーが集まっており、
整っていないところももちろんまだまだ多いですが、先端技術をプロダクト・ビジネスに適用するというチャレンジができている数少ない会社だと思います。

THINKLETの開発における面白さはいろいろあるのですが、藤野さんがFBに投稿していた内容が熱量あって素晴らしいので要点を抜粋して引用します。

Android 4G スマートフォンを普通にゼロから設計開発しました。
既製モジュールを組み合わせる方法では、ウェアラブルとして重要なデザインと必要な内部機能を両立できず、自社開発に踏み切りました。
俯瞰的に見れば、大手総合電機メーカーのような大企業ではなく、私達のような小さな会社であっても、スマートフォンレベルのかなり難しいハードウェアをゼロから自社開発できる時代になったということでもあります。

搭載している OS も OSS をベースにカスタマイズした OS を載せています(僕は勝手に Fairy OS と呼んでいる)。このレイヤーを握っておくことで、上位のアプリに対していろいろな面白い(今風にいえば「けしからん」)イタズラができるので、この OS/HAL のレイヤーが個人的には一番熱いです。
開発者であれば、普通にアプリを作っていると OS/HAL が弄れないがためにフラストレーションが溜まることもよくあるのではないでしょうか?実現したいことを諦めたこともあるのではないでしょうか?THINKLET ではそんなことはもうありません。完成品としてのハードウェア自体を柔軟に変えることは難しいですが、それ以外の構成要素は全て完全に可変で、全体を通した最適化が可能です。

https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=10227318077678459&id=1255939600


SWエンジニアとしては、ハードウェアを中心としたサービスを構築するのはウェブサービスやSaaSの開発とはまた違った面白さがあると思います。
THINKLETはOSS版のAndroidをベースに設計されており、クライアントサイドはOSの内部実装まで踏み込んだ開発をしているそうです。
サーバサイドは現在Rustの採用を増やしています。
プロダクトチームのリーダの吉川さんは「実践 Rustプログラミング入門」の著者の一人です。
新しい技術を積極的に採用するプロトタイピング指向のチームで、ものづくりが好きなメンバーが集まっています。


機械学習周りのエンジニアとしては現場の作業データという独自のデータを活用できる面白さがあると思います。
データと集めるところのハードルを大きく下げるプロダクトで、実際にさまざまなデータが集まってきています。
音声言語処理については元々コア技術なこともあり、論文も定期的に投稿しています。
これから画像処理・言語処理のチームも強化していくところです。

その他いろいろなロールがあるので、採用サイト見て興味を持たれた方は、ぜひご連絡を。
Twitter DMはお待ちしていますし、Meety開設したのでカジュアル面談もお気軽に申請ください。

まとめ

というわけで再就職活動の記録と入社報告でした。
あまり自分のような立場の人間がキャリアをどう考えるかという話が発信されることは少ないように思っています。
誰かの参考になるかはわかりませんが、自分自身の現在地の記録として残しておきたいなと思い書くことにしました。

フェアリーでのチャレンジはこれからです。
スタートアップは思うようにいかないところがほとんどで、それはフェアリーでももちろんそうです。
内側には見えているもの、まだ見えていないもの含めていろいろな課題があるでしょう。
しかしそれを補ってあまりある楽しさやメリットがあるのがスタートアップの面白さであります。
現時点ではそうした面白さを感じることができており、非常に良いスタートがきれたと思っています。

仲間がもっと欲しいので興味を持った方はぜひご連絡ください、お待ちしています!


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