父、退院→施設へ(2)
(1)はこちら。
家電量販店で24インチのテレビを買い、ホームセンターで衣類を入れるタンスなどの大物だけ買って、母を拾って施設に引き返す。
コロナ禍が落ち着いてきたとは言え、本来家族は部屋までは入れず、面会は共有フロアで15分だけのルールになっているそうだ。
ただ、この日と翌日は入居準備という理由で目をつぶってくれるという。
まあ何日も感染者が出ていないし、インフルエンザも流行ってないしね。
買ってきたものと母を部屋に残して片付けを頼み、私はもろもろの契約に。
義母も同じような施設に入居したけれど、とにかく契約書が山のようにある。
「確認してサインしてお持ちください」と送られてきた書類の束は、冗談抜きで10cm以上の厚みがあった。
それに加えて薬局とクリニックがまだ残っているといわれ、書いては捺印、書いては捺印。
その後、施設長さんとケアマネさん、看護師さんやデイケアスタッフ、ヘルパーさんなどと顔合わせ。
といっても50名入居できる施設なのでごく一部だ。
「何かありますか?」と言われても、よろしくお願いしますと頭を下げるしかないわけだが、「言葉がうまく出せないので本人もイライラすると思うけれど、元々穏やかな人なので暴れたりはしません。」と、自分でもよく意味のわからないことを言ってしまった。
ここで父を大事に扱ってもらいたい、それだけだ。
部屋に戻ると父はテレビをみて、母は落ち着かずに洋服を入れたり出したりしていた。そこに私が買って送った宅配便も届いたのでさらに混乱。
とはいえ、まだまだ足りないものがたくさんあるので、暗くなる前にもう一度買い出しに行かなければならない。
とにかく何でもいいから箱から服を出して引き出しに入れて! と母に言い残して出かける。
洗濯や掃除はヘルパーさんに頼むことになる。あくまでも自分の部屋なので、掃除道具も自分で準備し、ヘルパーさんがそれを使って掃除してくれるという仕組み。
それにしても100均ってありがたい。これを全部ホームセンターとかで揃えてたら費用は数倍になったと思う。
施設に戻って買ってきたものをセッティング。17時を過ぎて父もそろそろ夕食の準備だというので帰るというと、2階の部屋から1階まで見送りに行くと、杖をついて立ち上がった。
入院中にも何度か「脚は思ったよりしっかりしてるんですよ!」と聞いていて、先月のカンファレンスでは部屋の中なら移動できる、と聞いていたが、それよりずっと長い距離を歩くことができる。
自分の意志で移動できるって、考えてみたらすごいことだと思う。
部屋にあるトイレも最初は看護師さんが見守りについていたけれど、「大丈夫そうですねえ!」と。
排泄の自立は本当に尊厳に関わることだと、義母の介護のときに身にしみたので、少しでも長く自分でできる時間が続くといいな。
帰り道、母はなんども「お父さん、何か言ってるのに全然わかってあげられなかった。かわいそう。」と繰り返す。
50年以上連れ添っている母がわからなければ、もうしょうがない。
でもまわりのスタッフはさすがプロというか、だいたい何が言いたいかわかるようで、寄り添う力がすごいなあと思う。
かわいそうもなにも、父はここで暮らすのだ。
なんとか慣れてもらうしかない。きっと大丈夫。
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