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第6話 平壌(ピョンヤン)観光②

万寿台創作社(マンスデそうさくしゃ)の後の予定は、平壌地下鉄体験だった。


地下鉄体験とは、その名の通り、ただ始発の復興駅から3つ目くらいの駅まで乗って移動するというただそれだけの行為だ。


この共和国にはよほど他に観光資源がないのか、それかこの世界一深いと言われる地下鉄路線を誇示したいのか、どちらなんだろう。


私達は始発駅である復興駅へ行った。


多くのこの共和国の人々がこの地下鉄を利用している。東京とまではさすがにいかないが、それなりに多くの人がひっきりなしに、改札口から出入りしている。


ここでの写真撮影は許可されている。ただし、トンネルだけは撮影不可だ。


皆が改札で写真をとっている間、私は改札から出てくる人々の顔を注視していた。


皆どこか気だるそうな顔をしており、私達外国人観光客には目すら合わそうともせず、そしてその表情には何かに諦めきっているような印象が表れていた。


私は東京でみるサラリーマンもこんな顔をしていると思った。


「北朝鮮」の人々は、この国に生まれおちた時から生活の隅々まで徹底的に管理され、国家の為に生きることを強制される。


今の日本はむろんそんなことはない。

70年以上前に一時期そういう時期があったが、今は「表向き」には言論の自由もあるし、金も稼げるし、仕事を選ぶ自由がある。外国にもいける。


現在、国家に忠誠を誓う日本人はほぼいなくなったが、戦後はその忠誠心は自分の所属する会社に向けられ、日本の経済発展に寄与した。

だがその構成員である多くのサラリーマンは、生活の不安や、妻や子供への義理、社会的な見栄などが原因で忙しい会社を辞められず、非常に人生に疲れきっているように見える。


前途に希望が見いだせない人間は諦めて人生を生きるしかなくなる。

そんな人間は同じような顔になるのかと、この地下鉄を歩いている人々をみてそんなことを思った。

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