足半(あしなか)の効用
足半という履物をご存じでしょうか。
「あしなか」と読みます。こう言うものです。
読んで字の如く足の半分までしか長さのない草鞋(わらじ)です。
実は、この足半(あしなか)をどうしても広めたくて、これを書いております(笑)
足半(あしなか)は、近代まで農漁民などの肉体労働者が履いておりました。
足半(あしなか)の起源は鎌倉時代まで遡ることができます。
元寇の絵巻図「蒙古襲来絵詞」や「春日権現験記」をみてみると、槍を持った武士が足半を履いているのが確認できます。
当時の武士は戦場までは草鞋を履いて行き、戦闘の時にわざわざ足半に履き替えていたといいます。
わざわざ履き替えるくらいなので、足半は跳躍によく、他の履物よりも身体能力に与えるメリットがあるのでしょう。また、スパイクの役割をし、泥もはねないので重宝されたそうです。
戦後も田舎では普通に履かれていた地域もあるといいます。
東京の上野公園の西郷さんが履いているのは足半(あしなか)ですし、また織田信長は家臣への褒美に足半(あしなか)を与えたという逸話もあります。
しかし明治以降現代に至るまで西洋化の波に飲み込まれ続けてきた日本は足半(あしなか)という履物の存在をほとんど忘れてしまっておりました。
私がこの足半の存在を知ったのは約2年前。
写真家のエバレット・ブラウン氏とサイクリストのエンゾ早川氏が対談している「先祖返りの国へ」という本に足半について言及しているところがあり、それで興味をもちました。
実際に足半(あしなか)を買うことができたのは昨年の12月頃。
福岡市の稲吉商店さんで購入しましたが、いつもおいてあるわけではないみたいです。
※仕入元はここみたいです。
足半は、履いているだけで足のコンディションと姿勢を整えてくれるすぐれものです。
日本人はこれを少なくとも700〜800年履いてきたのですが、昔の人は余程身体の感覚が敏感だったのでしょう。でないと、こんなヘンテコなものを数百年も履き続けるはずもありません。
この足半は家の中で着用するだけであまり活躍の機会がなかったですが、最近これ履いて山を歩いてきました。
今の日本人には、「浮き指」や「外反母趾」、「扁平足」などの問題を抱えている人が多くおりますが、その原因の一つとして足のアーチが失われてしまっていることが挙げられます。
かくいう私の足も少し偏平足気味で、軽い外反母趾です。(足を測定してもらったときそう言われました)
多くの現代人は、まず歩かなくなった。
また歩かなくなっただけではなく、生活の場は凸凹のない平たい床の室内や舗装された道路ばかり。
足への刺激が極端に少ないのです。
また某スポーツメーカーのエアークッションのソールや、底の厚い靴ばかり履いていることなどが日本人の足を弱らせております。
そして、現代人は靴ですらしっかり履かない。
靴の脱ぎ履きを頻繁にするからか、紐もしっかり結ばない。
足に対して非常に無頓着なのです。
足裏のアーチは、歩いたり走ったりする時の地面からの衝撃を和らげるためには欠かせません。
アーチがなくなると、身体にかかる負担も大きくなります。腰痛や肩こり、頭痛に悩まされるのも、足裏のアーチが無くなってしまっていることが原因でもあり得るのです。
私の知っているフットケアの先生は、浮指、外反母趾が治ったおかげで、偏頭痛が治り、鬱っぽい状態から回復されたといっておりました。
「足は人間工学上、最大の傑作であり、そしてまた最高の芸術作品である。」
とは、レオナルド・ダヴィンチが遺した言葉です。それほど足のコンディションは人間にとってとても重要なものということです。
話は少し長くなりましたが、つまりは、私たちは足の健康を取り戻すことが先決なのではないかと思っているのです。
そしてそのための一つの手段となる可能性を足半(あしなか)は秘めているのです。
足半を履くと、まずこのように足指と踵(かかと)は外に完全に出てしまいます。
足がしっかりと地面を噛むことができ、また踵は台部よりも低い位置に着地するので自然とアーチが作られます。
また履いてみるとわかるのですが、足がしっかり地面を噛み親指に力が入ることによって、下腹への力の入り具合が全然変わります。
下腹は「丹田」のあるところです。
昔の日本人は「丹田」をとても大事にしておりました。下腹に力が入れば身体はブレないし疲れにくい。そしてあらゆる力の源泉になります。
合気道の先生が、「武道では足は親指、手は小指が大事である」と言っておりましたが、足半を履くことでそのことが符合しました。
「腹ができていない」「腹が据わっていない」という言葉があるように、丹田は、人間が覚悟をキメる際にとても重要なところです。 丹田ができて来ると物事に動じなくなる。
足半を履いて生活することは、「腹をつくる」ことにも良さそうです。
(続く)
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