8ヶ月半の次男が最初に覚えた最強の召喚魔法

つむぎのときは、だんだんと大きくなってきてるのを感じとれていたと思う。しかし、次男の櫂はあっという間に時が過ぎ去っていく。もう、生後8ヶ月半。あんなに小さくて可愛らしかった手足は、いつの間にやら長くなり、しっかりとしてきている。もうどこにでもハイハイで行けるし、ちょっとした手がかりがあればすっとつかまり立ちだってお手のものだ。

ママを求めているときは、リビングからキッチンまで猛然とハイハイで進んでいき、ママの足を掴んですっと立ち上がりニコニコ。

ぼくが作業から帰って洗面所で手を洗っているのを見つけたら、ニコッと笑ってから脇目もふらずにハイハイで抱き上げられる位置まで近づいくる。

かわいい。

そんな櫂だが、ここ数週間でなんだか言葉を発しているような気がする。

その言葉とは、「ママ」だ。

ぼくに櫂を預けて、幸枝さんが別の部屋に行こうとすると、渾身の声で「ままー」と叫ぶ。ほかは「あー」とか「うー」とかだが、どうしてもママがいいときは、「ままー」と言っている、気がする。

これはもう、将来、櫂に聞かれたら、「櫂の最初の言葉は「ママ」で8カ月くらいからいい始めたよ」と答えて挙げてもいいだろう。

櫂は「ママ」という召喚魔法を覚えたのだった。

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（登場人物）
ぼく：東京大学で農学博士取得後、ベンチャーで８年勤務。その後、北海道で新規就農。
幸枝さん：ぼくの妻。北海道大学で生命科学修士、ぼくと同じベンチャーで同期入社。２０１５年に結婚。
つむぎ：４歳の長男。北海道で元気いっぱいに成長中。電車、働く車、飛行機など乗り物大好き。
スピカ：３歳の猫。女の子。網走の病院で保護されていたところからぼくの家にやってくる。
櫂：０歳の次男。長男が騒ぎ回る横で、どっしりと寝ている大物感を漂わせる。