初めての青色申告は、ジャングルを恐る恐る進むようなもの

「お、終わったぁ。はぁ、スッキリした!」

さいこうファーム1年目の青色申告書類を無事提出。3月15日が近づくにつれて、気が重くなりつづける日々ともこれでおさらば。郵送提出だったから、書類が正しくできているのか?添付書類で足りてないものはないか?不安な部分もある。それでも、提出してしまえばこっちのもんだ。もし不備があっても、とりあえず期限は守れたし。それが一番大事の大事MANブラザーズだ。

どうやって会計処理をするのか?農業研修中にはさっぱりわからないまま、営農1年目に突入。営農を始めてももちろんんよくわからない、とりあえず会計ソフトのfreeeを契約。経費をひたすら入力、勘定科目もその都度検索して入力、入力。

こんな感じで、年末くらいにはほとんど全ての経費を入力することはできていた。そこからが、より未知の魔境。得体のしれない鳥や獣の泣き声が響き渡るジャングルの中に、落書きのような雑な地図を持って探検に入る、観光客のような気分だった。

幸いなことに、この冬もライターの仕事を複数いただけていた。おかげで、「うん、今日はまだだな」とジャングル探検を先伸ばしにすることができた。

しかし、3月15日は着実にせまってくる。

「仕方ない、やるか」と奮い立つ。完全に手探りの冒険が始まった。

まず、最初の壁は「源泉徴収されている収入」だ。ライターの仕事は基本的に源泉徴収されている。クライアントが入金前に税金を天引きして、クライアントから納税をしてもらう仕組みだ。なので、この売上についてはきちんと源泉徴収されていることを示して記帳しておかなければいけないはず。

「どうやればいいんだ・・・」

いろいろと調べた結果、1つの取引に源泉徴収される前の売上金額を売り上げとして、源泉徴収金額を事業主貸としてマイナスで記帳するのでいいらしい。

1つの壁を越えた。

また、恐る恐る進む。農業用の青色申告書類は、その他の青色申告書類とはちょこちょこ違う部分があるらしい。わからないなりに、少しずつ進んでいく。

そして、源泉徴収をされている売り上げについて記載する部分に到達した。ここで、最大の壁にぶつかる。

「源泉徴収をされている売り上げの項目に不動産所得しか選べない・・・」

ライターの仕事はどう考えたって不動産所得ではないはずだ。ググっても全く解決策が見つからない。freee画面の右下にあるチャットで相談ボタンから相談をしてみることにした。

「農業の青色申告していて・・・、源泉徴収の収入で・・・、不動産所得しか選べなくて・・・」
困っていることを入力する。そこからあれこれやりとした結果。
「残念ながらfreeeでは農業の申告をする場合、源泉徴収を受けている農業以外の所得を申告することができません」ということだった。

パソコン画面の前で崩れ落ちるぼく。心の手に握りしめていた雑な地図をグチャグチャにして、心の地面に叩きつける。

「終わった・・・」
チャット画面の向こうでは、
「雑所得として申告する可能性はないですか」
と提案してくる文字が示されていた。

ぼくにはその意味がわからない。なにより、もうなにもわからない・・・。

絶望の中で、チャット画面をそっと閉じる。freeeを通じて申告するとばかり思っていたぼくは、絶望の中、さらなる魔境、国税庁のホームページへと足を進める。しかし、そこでも何の理由かわからないがうまくログインすらできない。

万事休す

ここから一度、現実逃避して、勝手知ったるライターの仕事を再開する。ああ、快適。

一夜明け、そうも言っていられないのでまたジャングルに乗り込む決意をする。とりあえずチャット画面で言われた「雑所得」の話も気になるので税務署に電話をかけることにする。

音声ガイダンスの後「0」を押してしばらくすると、税務署にいる税理士の人に電話が繋がる。

「今年始めて農業で青色申告を・・・、実はライターも結構やっていて・・・、売り上げはこのくらいで・・・」
「なるほど、それであれば雑所得で申告してください」

解決。freeeのチャット画面の先で教えてくれた方法で良かったらしい。一番大きな壁にドアを見つけた瞬間だった。

それ以降もfreeeで雑所得として扱うための処理をfreeeのチャットと税務署の電話で固めていき、少しずつ歩を進める。

ぼくの場合はライター仕事も農業仕事も同じ口座で処理していた。なのでライター仕事も普通に雑収入として記帳するのかと思ったが、そうではなかった。雑収入で記帳すると通常の所得として課税されるので、雑所得とする場合は事業主借としてfreee内の処理からは逃した上で、申告書類の中で雑所得として処理する必要があるらしい。

この後も、農業特有の作物ごとの処理や、棚卸しの処理などちょこちょこ壁があったが、それもなんとかなった。

そして、ついに申告書類完成!きっと完成!

freeeでは農業の申告をe-tax処理ができないらしいので、全て印刷し封筒に詰める。国民年金や生命保険の控除の書類は原本を添付するのかコピーを添付するのかわからなかったり、控えの書類を送るのか送らないのかわからなかったりしたが、兎にも角にも郵送することに成功した。

終わった。

ちなみに書類は原本を添付(税務署に電話で確認しました)、控えは控え返送用の封筒を同封するのだから、きっと送るのだろうと送ってしまうことにした。

開放感。心の中に日増しに大きくなる重たい何かが取り除かれた気分だ。もし万が一、書類に何か不備があってもきっと連絡が来るだろう。

こうして、一年目の青色申告冒険譚は幕を閉じるのであった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。東京から北海道オホーツクの美幌町に新規就農した4人と1匹家族の農業、子育て、おすすめスポットなどをほぼ毎日更新しています。もしよろしければ「スキ」「フォロー」をお願いします!
(登場人物)
ぼく:東京大学で農学博士取得後、ベンチャーで8年勤務。その後、北海道で新規就農。
幸枝さん:ぼくの妻。北海道大学で生命科学修士、ぼくと同じベンチャーで同期入社。2015年に結婚。
つむぎ:3歳の長男。北海道で元気いっぱいに成長中。電車、働く車、飛行機など乗り物大好き。
スピカ:2歳の猫。女の子。網走の病院で保護されていたところからぼくの家にやってくる。
櫂:0歳の次男。長男が騒ぎ回る横で、どっしりと寝ている大物感を漂わせる。

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