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異業種交流会で知り合った男とランチしてみた

少し前の話だが、異業種交流会に参加。
そこで知り合った真面目そうな30代男性(以下、Aさん)からランチに誘われた。
どんな勧誘なのか気になったので、ランチを快諾した。

駅前ロータリーでAさんと合流。
突然、「これ、僕の友達が作ったゼリーなんですけど、よかったらどうぞ」と、ミカンが乗ったゼリーを渡される。
この日の待ち合わせは朝10時。
いつもらったゼリーなのかすごく気になってしまった。

「車を用意したので、ぜひ乗ってください」と、促される。
周囲にはランチに適した飲食店がたくさんあるのに……。
「僕のおすすめのレストランがあるので」とのこと。
正直不安だったが、車に乗り込むことにした。

話をしながら車内を見渡す。
”車内禁煙”と書かれたシールがあった。
助手席の足元には、車の使用方法が分かりやすく書かれた2,3枚ほど。
この車がAさんの所有物でないことはすぐに分かった。
どんな組織のアジトに連れていかれてしまうのか。

乗車時間は15~20分ほど。場所は私鉄沿線の住宅街。
「ここです。いいですか?」と、指をさされたのは
庶民的な価格で人気の高いチェーン展開のファミレスだった。

入店し、メニューを選ぶ。
Aさんが注文したのは一番安いハンバーグ、ライスとドリンクバーは不要とのこと。
筆者は食べたいものを注文したが、Aさんがドリンクバーを注文していなかったので控えた。

会話は本当につまらなくて、印象に残らないほど。
多分、天気の話とか好きな食べ物の話だと思う。
ネットワークビジネス勢が好きそうな、”自己実現”や”不労所得”といったワードで仕掛けてみたが、反応ゼロ。
彼の目的は何だろう……。

「水、飲みますか?」と、何度もドリンクバーにある水を持ってきてくれるAさん。
ありがたいが、いい年した大人なので少し恥ずかしい気持ちになる。
気にせずドリンクバーを頼めばよかった。

2時間くらい滞在したころ、Aさんは突然過去のエピソードを語り始めた。
・母親が不治の病にかかっていた
・大学生時代までの性格は根暗。クラスメイトからは「キモイ」といわれいじめられたこともあった
・そんなAさんには1人だけ友達がいた。いつも前向きでポジティブな性格とのこと

「僕は友達に明るい性格の秘訣を聞いたんですよ」と、話した後、Aさんは突然、
「何妙法蓮華経~!!」と、長い数珠をバッグ取り出し、ファミレスでお経を唱え始めたのだ。

「彼の明るい性格は、毎日欠かさずお経を唱えることだっていうんですよ!」と、Aさんは今までとは違う目の輝きで力説しはじめた。

「僕は友達と一緒にお題目を毎日唱えました。自分の性格が明るくなっただけでなく、母親の病気も完治したんですよ! 嘘だと思いますよね? 僕もびっくりしたんですから!」という。

Aさんはお題目を唱えればいいことがあると信じるようになり、宗教施設の近くへ引っ越したとのこと。
現在も朝晩欠かさずお祈りを続けているそうだ。

「吉田さんは明るいですね。 ご両親がとてもいい方なんでしょう。お題目を唱えれば、もっと魅力的な女性になりそうですね」と、Aさんは言う。
残念。我が家は機能不全家族で母親はヒステリックでサイコパスだ。

宗教といえばお布施のイメージがあるが、年間にお布施できる額が1~6万円程度までと決まっているらしい。
「良心的ですよね、私たちのことを一番に考えてくれていることが伝わりますよ」と、ほんわかした顔で話すAさん。

朝晩のお題目は自宅で唱えてもよいとのこと。
忙しくて難しいときは、心の中で唱えても良いそうだ。

「世の中の人がお題目を唱えれば、コロナも消滅しますよ」と、Aさんは言っていた。
さすがにそれは信じられなかった。

「施設はすぐ近くなんですよ! よかったら行きませんか?」と、Aさんは目をキラキラさせながら話した。
このとき、車でここまで来た理由が分かった。

筆者はAさんに、見学は可能かと聞いた。
「その場合は個人情報が必要ですね」と、名前、住所、職業を聞かれた。
なぜ必要かを聞くと、「反社チェックですよ」と言われた。

いい気分がしなかったので、筆者が反社会的勢力に見えるかをAさんに質問。
「いえ……そうではないですが、決まりなんですよ」と言われる。
当たり前だが、たった今知った宗教団体に個人情報は渡したくない。
ウソをつく手もあったかもしれないが、ボロがでそうなのでやめた。

明らかに不機嫌な態度を取ったからか、Aさんはリーダーと呼ぶ人に筆者の話をしに電話を掛けた。
「リーダーに確認したんですけど、やはり個人情報は必要なんですよ」とのことだった。

ここまでで4時間が経過。
さすがに帰りたくなったので、ひとまず検討すると伝える。
すごく寂しそうな顔をしていた。
でも、こんな勧誘方法で入信する人はいるのだろうか。
車内はどんよりした空気で気まずかった。

最後に、犯罪を犯した人もお題目を唱えれば救われるのか質問した。
「そうですね……。無間地獄は避けられますね」とのこと。
犯罪の程度によって異なるものの、お題目を唱えれば罪が軽くなるそうだ。

私がもらったゼリーは、宗教仲間から朝のお祈りでもらったのだろう。
もともと手作りお菓子が苦手、誰が作ったかわからないものは食べたくない。
申し訳ないが、駅のごみ箱に捨てた。

帰宅後、Aさんから宗教団体代表が演説をする動画のURLが送られていた。
貴重な内容なのかもしれないが、筆者の心には響かなかったので早々に視聴をやめた。

Aさんには断りの連絡を入れた。
もっとしつこく来るかと思ったが、それ以降、連絡はない。

後日、Aさんに勧誘された宗教団体について調べてみた。
個人情報の記載は反社チェックではなく、入信するために必要な情報だった。
何も知らずに記入した人と、勧誘側でトラブルが発生することも少なくないと、ネットでは書かれていた。

宗教は否定しないが、目的を隠して勧誘することはフェアじゃない。
宗教に限らず、魅力的なものなら、自然と人は惹かれていくのではないだろうか。

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