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その色はもともとあった色で、どこかから持ってきた色じゃない

先日、cakesで連載している「小屋ガール通信」にこんなことを書いた。

人は4色ボールペンのようなものだと思う。ここでは赤、こっちでは青という具合に、コミュニティごとに出す色を変えている。

これは、私が前から思っていたことだ。

私は、山小屋ではお姉さんキャラだし、地元の友達の前ではお調子者だし、付き合いの浅い人の前ではおとなしいし、夫の前では甘えん坊だ。

別に意図的に使い分けているわけではなく、自然とそうなってしまう。どれが本当ということはなく、すべて本当の私だ。

話は変わるのだけど、7月にnote非公式オフ会で、佐伯ポインティさんがSNSブランディングのことを話していた。

そのときに、「本当は人っていろいろな面を持ってるんだけど、SNSではひとつの面だけを見せたほうがいい」と言っていた。

これは「SNSでフォロワーを増やして発信力を身に着けたい!」と思っている人に向けたアドバイスで、いわゆる「SNS運用」のテクだ。

私は戦略的にSNS運用をしていない。SNS経由で仕事をいただくことがほとんどなので、ちゃんと運用したほうが有利なのだけど、どうにもめんどくさくて続かないのだ。

だから、ポインティさんのこの話は「自分がターゲット層じゃないけど興味深い話」として拝聴した。

ポインティさんの論は納得だ。芸人でもそうだけど、キャラ立ちしているほうが売れる。

そして、キャラ設定は「わかりやすい」ほうがいい。人間が4色ボールペンであっても、1色だけ見せているほうがわかりやすい。

当たり前だけど、ポインティさんだってエロいことばかり考えているわけじゃないだろう。きっとエロ以外にも10色くらいの色を持っていると思う。

だけど、SNSではエロ以外の色をあえて隠した。エロ1色だけを発信することで、「エロいコンテンツなら佐伯ポインティ」というポジションを確立したのだ。

ここで間違ってはいけないのは、「エロ」はポインティさんがもともと持っていた色であること。

彼の戦略は、「自分が持っている色の中から1色だけを出し、後は隠してしまう」というものだ。

決して、「自分が持っていない色をどこかから調達してくる」というものではない。

これはSNS運用に限らず、リアルでの人間関係にも言えることだけど、もともと自分にない面を「キャラ設定」として持ってくるのは無理がある。

絶対にバレるからだ。


転校・進学・就職・転職といった、新しいコミュニティに属する場面で、「今までの自分とは違うキャラでいこう」と意気込む人はわりといると思う。

だけどこれ、本当に見透かされる。不思議なことに、初対面であっても「あ、この人キャラ作ってるな」とわかる人っている。

山本さほさんの「岡崎に捧ぐ」の中でも、転校するときに「新しい学校では鳳凰寺風(魔法騎士レイアースのキャラ)みたいなお嬢様キャラでいこう」と考えるシーンがある。

山本さんは結局思うだけで実行しなかったけど、その後しばらくして本当に鳳凰寺風みたいな喋り方の転校生が来て、山本さんは「あ、この人絶対に鳳凰寺風に影響受けてる」とわかってしまう。

このシーンを読んで、「あるあるある!」と思った。

まぁ、これは極端な例にしても、「無理をしている人」ってどこかわかってしまう。見透かしたこともあるけど、見透かされたこともめちゃくちゃある。

「自分にもとからある色のうちの1色を強調する戦略」と、

「自分にない色をどこかから調達してきて強調する戦略」は、

パッと見似ているけどまったく違う。

もちろん、「どこかから調達してきた色を自分の色にできる人」というのはいて、それはひとつの才能だ。

だけど、その才能がない人のほうが大半で、「自分の本質と違うキャラ設定」で売れるのは難しいと思った。



冒頭で引用したのはこの記事です。



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