勝手にイメージを抱いて勝手にがっかりすること

自分のことを「オタク」「モテない」などと公言しているライターさんが出ているYouTube動画のコメント欄に、「しゃべり方が意外と陽キャでがっかりした」と書かれていた(文章は少し変えています)。

がっかり、しちゃうんだ。

イメージと違った、というのはわかる。私も動画を見るまでは、もっとおとなしい感じの人を想像していたから。

けれど、「がっかりした」とは思わない。自分が他者に抱いていたイメージが間違いだった。それだけのことだ。

たぶん、コメントした人はオタクや陰キャと呼ばれる属性の人なのだろう。だからそれを自称しているライターさんに自己投影……とまではいかなくても親近感を抱いていて、だけど動画を見ると自分とは遠くて、裏切られた気分になったのではないか。その気持ちは、想像できなくはない。

だけど、直感的に「がっかりしたって言っちゃう人、嫌だな」と思う。

どうしても、「がっかりしたと言われた側」の気持ちを考えて悲しくなってしまう。


私自身、勝手にがっかりされたことがある。

cakesで連載していた「小屋ガール通信」の第1話に、私はこう書いた。

私はどうにもメンタルが弱く、新卒で入った東京の広告代理店をわずか数ヶ月で辞めてしまった。

両親からほぼ強制的に札幌の実家に連れ戻され、レストランでバイトを始めたものの、人間関係が辛くて退職。ニートになってしまい、そんな自分に落胆していた。

その後、連載が進むにつれて知らない人から

「はじめは人間関係が苦手とか書いてたくせに仲間自慢になってるの草www」

みたいなコメントをされた(コメント主を特定して晒すのは本意じゃないので、文章は変えている)。同じ人から何度か、似たような冷笑的な揶揄があった。

しかし、よく読めばわかる通り、私は「人間関係が苦手」とは書いていない。

上の引用部分にもあるが、ふたつの職場を退職したそれぞれの理由は、

・広告代理店→どうにもメンタルが弱く
・レストラン→人間関係が辛くて

である。

メンタルが弱い(鬱っぽくなりやすい)のは事実だ。広告代理店では飛び込み営業をしているうちに鬱が悪化した。人間関係に不満はなかったが、業務内容が合わなすぎた。

レストランでの人間関係が辛かったのも事実だ。ミスすると怒鳴りつけるシェフがいて、怖くてたまらず辞めてしまった。人間関係がそこまで苦手じゃない人でも、嫌な奴がいてバイトを辞めたことくらいあるだろう。

例のコメントは私が書いていないことまで過剰に読み取っている

たぶん、この人は著者(私)のことを「コミュ障で友達のいない人」と認識したのではないか。そして、自身もそれをコンプレックスに感じているのではないか。

だから同類(もしくは自分より格下の存在)が書いていると思って読み進めていたら「仲間」がぞろぞろ出てきて、心を乱されたのではないだろうか。

最近はライターさんの飲み会に誘われることが多いけど、SNSで「モテない」「オタク」「コミュ障」などを自称している人たちでも、実際は綺麗でオシャレでトークもうまい。眩しさに圧倒される。

その眩しさに圧倒される感じとがっかりは、少し似ている。

けれど、よくよく話していると、皆さん文章と実像に乖離はないのだ。

乖離しているのは、あくまで私が勝手に作ったイメージの部分。そこには「自分と近しい人であってほしい」という無自覚の希望的観測がこめられているのだろう。

それなら、イメージのほうを上書きしたい。本人が「公式」で、私が作り上げたイメージのほうが「解釈違い」なのだから。

そこで相手に「がっかりした」と言うのは傲慢だし、なんていうか、繊細がすぎる。

自分のイメージを守りたい、絶対に壊されたくない頑なさは、他人からすると「わからなくはないけどめんどくせぇし厄介」なので、そうありたくないなと思った。

サポートしていただけるとめちゃくちゃ嬉しいです。いただいたお金は生活費の口座に入れます(夢のないこと言ってすみません)。家計に余裕があるときは困ってる人にまわします。サポートじゃなくても、フォローやシェアもめちゃくちゃ嬉しいです。