ネズミ色のソラ 2

一杯、二杯、三杯と酒が進むにつれて二人は色々な話をした。
「変なこと言ってもいい?……店長、タイプなんだよね。いつもシャツ、腕のところまくってるでしょう?腕まくりしてるところから見える男の人の腕の血管が好きなんだよね。それに優しく話聞いてくれるし。」
優志はいきなりの告白に驚き、その気まづさから飲んでいたハイボールに手をかけて次の言葉を考えていた。
「奥さんいるんでしょ?子どもも。」
優志は身につけている結婚指輪に目を向けた。
「私さ、最初面接のときから店長イケメンだなって思っててさ。でも結婚してるんだー、へぇーって。もしも、結婚してなかったら私もっと早く誘ってたなぁ。」
「またまたー。冗談はやめてくださいよ。妻も子どももいますから。」
冗談ではぐらかすのに精一杯だった純粋な優志は、ほろ酔いになっている裕美の胸に目がいってしまっている事に気がついた。
目線に気がついていた裕美は、優志が飲んでいたハイボールに手を伸ばして、飲み干した。
座敷に伸ばして座っている優志の足を、裕美は足の指の先でそっ撫でていった。
抵抗ができなかった優志は裕美の唇に釘付けになっていた。
「私、店長と行きたいところがある。」
会計を済ませた二人は言葉も交わさずに、足早に店を後にした。

今日の朝は少しいつもと違う。
母の裕美は上機嫌に、カップラーメンに生卵を落としていた。
オンラインゲームをしながら克哉は母を横目で観察していた。
母が帰宅する時間が遅く、帰宅してからすぐにシャワーを浴びる時は上手くいった日であると克哉は知っていた。
翌日の朝食にはいつも卵が添えられる。
「克哉、今日は学校行きなよ。」
母の裕美は優しく克哉に言い聞かせた。
「今日は保育園の日だー。」美里亜は嬉しそうに笑った。

そもそも学校が嫌いなのではなく、やることもないただ惰性で生きている克哉にとって学校というものは時間潰しの場所に過ぎなかった。
髪の毛がボサボサのまま制服を着た克哉は学校へと向かった。
保育園の準備を終えた美里亜はeテレを見ていた。
「行くよ。」
「はーい。」
化粧を済ませた母は娘を自転車に乗せ、保育園へと向かった。

今日はパートが休みの為、街に繰り出した裕美はまず銀行で通帳の記入を済ませた。
「よしよし。今月もありがとうございます。」
生活保護の振り込みを確認した裕美はその足でパチンコ屋へと向かった。

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