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ドイツ COVID-19: 第二波の始まりか?


隣国ルクセンブルクやオーストリア、フランスに続いて、ドイツも先週あたりからCOVID19の感染が再び拡大し始めた感があります。
昨日(28日)は、独ロバートコッホ国立感染症研究所(RKI)ヴィーラー会長が第一波収束以来久しぶりに公式記者会見に登場。「ドイツの感染者数の増加を大きく懸念している」と警戒の念を示しました。

ドイツは、COVID19の感染が一度は大きく広まったものの、比較的早期に制御したことで知られています。4月下旬からの段階的緩和にも成功し、現在では大規模イベントやクラブ(ディスコ)など一部のハイリスクとされる催し・活動を除き、社会経済活動への制限がかなり解かれてきています。そして、夏の休暇の時期に入り人々の気持ちも大きく緩んできています。

ここではRKIの状況報告書を中心に、客観的に感染拡大の程度を伝える各州報告・報道を抜粋しまとめてみます。

感染者数が広い範囲で増加。ただし水準は低い

7月24日頃から新規感染届出数が著しく急増し815に、25日は781、そして週明けの27日は633、28日は684となりました。これまで週日の水準は300〜500件前後で安定しており、これと比べると大きく増えたことになります。しかし第一波時には5千ほどにまで上昇したこともあり、その時と比べれば低い水準です。RKI状況報告書は現況を以下のようにまとめています。

・過去一週間全く新規感染の届出がなかった郡(郡独立市といわれる大きな市も含む)がに減り、同時に多くの州において COVID19 の有病率/週が上昇しました。この傾向は懸念されています。
・過去7日の累計新規感染者数/人口 10 万人は 4.3(一週間前は3.4) で、「低い水準」ながらも微増した、とされています。 全国412の郡(大きな市も含む)のうち95 の 郡では過去7日全く感染の報告がありませんでした(冒頭地図のグリーンの郡)。この数は一週間前は110で、感染の届出のあった郡が増加していることを表します。
・再生産数Rtは1.12。

ちなみに日本からみるとドイツは感染者数がとても多いようにみえるかもしれません。でもこれはドイツではハイリスク群(例:医療・介護関係者)を中心に無症状者に対してもPCR検査が比較的多く行われていることから、無症状者や軽症者も届出され、隠れ感染者数が少ないことによります。RKIの報告書(7月22日)によれば先々週(7月13日〜)は合計約53万件のPCR検査が行われました。陽性率は0.6%で、こちらもまだ随分と低いです。先週についての正確な数値を確認することはできていませんが、図を見る限りでは微増しています。

地域別ではNRW州に集中。外国での感染も増加

RKI作成の冒頭地図は、人口に対する過去7日の累計感染者数の水準を郡別に色で表しています。黄色が濃いほど人口当りの感染者が多いことを意味します。ここからもわかるよう、感染は現時点ではNRW(ノルトラインウェストファーレン) 州に集中しています。全国の約4割に当ります。過去7日の累計新規感染者数/人口 10 万人も 8 (約 1 週間前は 6.1 )と全国平均の4.3より著しく多いことがわかります。 中でも人口が密集するルール地域が多くなっています。医療・介護施設や社会福祉施設などでの数人から数十人程度の小さな集団感染が、多くの場所で見つかっています。

他州はNRW州ほどまだ感染者は多くはありませんが、多くの州においてこのところ増加傾向がみられます。全国的には、農場(特に外国人労働者)の大きめのクラスターほか、 医療・介護・社会福祉・難民宿泊施設、親族でのパーティー、宗教集団での小さめのクラスターが多数報告されています。また長い間耳にしなかった職場での感染も報告されました。外国旅行からウィルスを持ち帰ってきた人がその後お誕生日パー ティーに参加し複数人に広めた、といった例もテレビで報道されていました。

RKI の統計(7 月 28 日発表)によるとまた、出入国制限の解禁以来、外国で感染するケ ースが増えてきており、把握されている限りでは全体の約1割にまでなっているということです。 外国の中で最も多いのが感染が再び拡大中のコソボやセルビアといったバルカン地域です。これらの国々は危険地域に指定されており、帰国者には 原則2 週間の自宅隔離義務がありますが、「守らない人が少なくない」と自治体関係者はテレビ報道で嘆いていました。ちなみに自宅隔離措置を守らないことが明る みに出ると、高額の罰金もしくは、自由刑(禁固や懲役)となります。 

新たな防疫戦略:帰国者にはPCR 検査を導入

州保健大臣会議で 7 月 24 日、旅行者が旅行先で感染するケースの増加に対応するため、以下の新ルールの導入が決まりました。

・危険地域(米国、トルコほか 約130の国。日本は含まれない)から 再入国する旅行者に対し、空港で PCR 検査を受けることを義務化していく(現在はまだ任意)。これに対応 できるよう各空港に検査所を設置する。陰性であれば 14 日間の隔離を免除 
・危険地域でない国からの帰国者であっても、再入国後 72 時間以内であれば、近所 の開業医の診療所や開業医団体(Kassenärztliche Vereinigung)の施設で、PCR 検査を 無料で受けられる請求権を付与

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