【ショートショート】嘘汁
「ちゃんと腹一杯で来たか」
そんな飲食店にあるまじき挨拶で祖母のような店主に迎えられた。
すぐに店主は奥の厨房に入り、空いている席に着くと店内を見回す。
街の定食屋のような内装だが来店したと言うよりは、田舎に帰省したような感覚のほうが相応しい雰囲気だ。
「ここはコレしか出さんぞな」お冷とお椀を載せたお盆を携えて厨房から店主が再び現れた。
否応にも胸は踊る。なんせ1年に1日しか開店しない、幻の店と呼ばれるこの店の予約が取れたのだから。
湯気が立ち昇るお椀。見た目も匂いも…味噌汁