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繰り返される問いとしての『プラットフォーム資本主義』書評

 資本主義とはなんなのか?

 本書は、この問いに関する昨今の状況を分析した本であり、理解するための本である。
 資本主義とはなんなのか? 繰り返しの問いになってしまうが、この問いの「繰り返し」こそが資本主義の構造である。しかも、それは繰り返されるほどに拡大する。お金(Money)が、ただ消費されるだけでは、それはお金でしかない。お金が、設備投資などによって、確実にさらなる利益を生み出す時、それは資本(Capital)に変容する。そして、拡大再生産を繰り返す。労働者が労働者を産み、エネルギーがエネルギーを産み、工場が工場を産み、暴力が暴力を産み、そして本書の分析においては、データがデータを産む。その拡大する「搾取と排除と競争のシステム」という黒歴史を、本書の第一章では解説している。しかし、その拡大し続ける資本主義というゲームにおいても、一時的には上限がある(無限という人もいるかもしれないが)村の資源も、街の資源も、国の資源も、地球の資源も、太陽系の資源も、銀河系の資源も、宇宙の資源も、メタバースの資源にも限界はあるはずだ。そして、資本主義がある段階まで拡大した時に、拡大したもの同士で争いが始まる。勝者は勝者を産まないし、財閥は財閥を産まない、プラットフォームはプラットフォームを産まないのだ。(プラットフォーム内で、別のプラットフォームが瞬間生まれたとしても、元のプラットフォームの運営がそれを見逃すとは思えない)それは互いに排除し、競争し独占を目指す。第二章では、その最新形態であるプラットフォームの類型と形態を解説し、その議論を元に、第三章で、本書のタイトルである「プラットフォーム資本主義」の先行きを予想していく。
 マルクスの『資本論』を読んで、資本家になりたい!と思う人はおそらく少ないだろう。それはおそらく「罪悪感」という感情を、人類が集団生活を始めたどこかの段階で埋め込んでしまったためだと思われるが、資本主義はこの「罪悪感」すらも新しい形態をもって、乗り越えようとしている。本書を読んで、プラットフォームを作りたい!と思う人は、資本家になりたいと思う人たちよりも多くなることは間違いない。本書は『資本論』の結論である「革命」という単語を一切出さず、「現状への理解」を繰り返し促しているが、理解の先にあるのは果たして、「抵抗」なのか、それとも「家畜」なのか、はたまた「プラットフォーマー」という名の「牧場主」になるのか。本書は、読者に対して、それぞれの生き方を問う本とも言えるだろう。

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