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花 〜西行法師と吉田兼好〜

 私は有料老人ホームの職員で、ご入居の方々から、本当に色々なことを教えていただける、とてもいい仕事だといつも思う。(今は別の部署に異動)

 今日、ある方から、西行法師の歌と吉田兼好の徒然草の一節を教えていただいた。

願はくは 花の下にて 春死なむ そのきさらぎの 望月のころ

 これは73歳でこの世を去った西行が、生前残した有名な歌で、「願うことなら、旧暦2月15日の満月の頃、満開の桜の下で死のう🌸」という意味で、彼はほぼその通りの季節に亡くなったとのこと。

花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは。

 こちらは吉田兼好の徒然草の一節。これはいわゆる反語というのか、「花は満開のときだけを、月は雲りがないのだけを見るものであろうか、いやそうではない。」という意味。その文に続いて「降っている雨に向かって(見えない)月のことを慕い、すだれを垂らして室内にこもり春が移り行くのを知らずにいるのも、やはりしみじみとして情趣が深い。今にも咲きそうな梢、花が散ってしおれている庭などにこそ見るべき価値がたくさんある。」と言っている。

 この二つの文章は対照的ともいえるものだけど、そのご入居者はどんな意味でおっしゃったのかは分からず、改めてお聞きすることもできない、聞くのがちょっと怖いタイプの方で、真意は全く分からない。

 私個人の好みをいえば、やはり名字も同じで親近感もあるせいか、兼好法師のお言葉に惹かれる。

 写真は昨日、ホームの横で撮影した「陽光桜」


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