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発想の転換〜人口減少社会における医療と福祉の連携〜(GRゼミ10期 第7回2022年6月21日)

こんにちは。第7回GRゼミレポート担当をしますキムタクです。
今回は我らがゼミ長ユーティこと吉田雄人さんの横須賀市での市長時代の実体験に基づいた講義でした。

最初に問題提起として

・人口が減っていくという大きな社会の流れは、否定も肯定もできない前提とすべきではないか。
・その人口減少という社会の流れの中で生じる制度的なひずみや、『本来こうあってほしい姿』と『社会が流れていってしまう方向性』がズレることによって生じる事象=これを問題と読み取るべき。
・『多死化』という言葉と『少子化』は語感も似ているが、少子化も確かに問題だけれど、多死化も同様に多くの課題を孕んでいる。
・要は人口減少社会って、多くの人が死んでいく社会でもあって、そんな中で生じる課題に、どんなふうに向き合っていくか、市長時代の取り組みを踏まえてお話します。

感想

『多死化』 『死』という文字にギョッとしつつも、確かにそこから目を背けても問題は見えてこないと...感じました。『少子化』も『少産化』という言葉から切り替えたことで、その問題点が明確化されたとの説明もあり、たしかに言葉は大切だと思いました。

2025 年問題について

・2025年問題とは、団塊の世代が全員75歳以上になること。
・当時、横須賀市は2024年に到来すると想定されていて、他は2026年だったりと地域差があった。
・各行政はそのタイミングに合わせて予算の配分するために正確なシミュレーションに取り組んだ。
・この問題が意味するものは何か=今まで支える側だった人たちが支えられる側に回って、社会保障のバランスが崩れること。
・全体の人口は減っていくが、高齢者人口はどんどん増えていく。特に都心部は高齢化のスピードもすごく速いので、介護施設が足りない等の多くの課題を生む。

感想

ここで「日本人の死亡率ってご存知ですか?」との質問・・・答えは「はい100%ですね。」
「人は必ず死ぬっていう自分ごと化してもらいたい」 の言葉にハッとしました。...
まだ若い(と思っている)自分は、介護する側、看取る側、と決めつけているよな、と。

ライフイベントの変化について

・時代の変化によって「ライフイベント」の場所が変わってきている。
・戦後すぐの頃は病院で亡くなる人は1割もいなかったのに、今では7割以上。
・出産の場所も自宅から98%は病院で生まれる時代に。
・つまり昔は、生まれる場所も亡くなる場所も自宅だった。
・近代化された反面、命というものが我々の生活からどんどん切り離されているのでは。
・『多死化』時代に我々はどうすればいいのか?病院の病床数は都道府県の計画の中で管理されているので、勝手に増やすことはできない。
・亡くなる人はこれから2042年までずっと増え続ける。病院で死ねない時代がやってくる。

横須賀市民へのアンケート結果について

●人生の最期はどこで...

・1000人以上に答えていただいた。
・横須賀市民の6割ぐらいの方が、できるだけ自宅で最期まで暮らしたいと答えた。
・最期は病院に入院したいという人は15%だったが、実際に病院で亡くなっている人は6割だった。

●延命治療を受けたいか...

・人生の最期をどのように迎えたいのか?=延命治療をどうするか
・延命治療を希望しない方のために、終末期医療における事前指示書(リビングウィル)がある。
・人生の最終段階を迎えたときに、自分で意思表示できないような状況でも対応できるように、事前に指示をしておく文書。
・ただ法的拘束力はなく、実際に作成してもご家族が把握していなかったり、知らなかったりも多い。
・この事前指示書を作成したら、家族との共通認識としていくことで、担当の医師にも伝わる。

●在宅診療への取り組み

・6割以上の方が自宅での最期を望んでいるのに、実際は病院で6割以上の方が亡くなっている。
・このミスマッチを放置していてはいけない。これからさらに亡くなる人はどんどん増えて行くのに、病院の数は増えない。在宅で最期を迎えられる体制づくりに取り組んだ。
・なぜGRゼミでこの課題を取り上げたかというと、この体制作りをするためには、本当に地域全体で取り組まなければ解決できない事例だから。
・自宅で最期を迎えるために必要なプレーヤーは誰だと思いますか?
医師、看護師、薬剤師、介護士、リハスタッフ、地域包括支援センター・・・他にもたくさんいます。

感想

ここで「家族は?」という答えに対して、「 ご家族も確かに必要だよね。でもね家族がいなくても最...期を迎えられる横須賀にしていきたいという活動もしました。」と、 ついつい「常識的に考えて、まず...は家族がやるべきでしょう」と考えている自分に気づきました。

エンディングプランサポート事業について

・家族がいなくでも安心して終末期を過ごせるように「エンディングプランサポート事業」をスタートし
ました。
・あらかじめ市で相談を受けた方と葬儀屋さんと一緒に解決していく事業です。
・収入があれば、遺言執行代理人として弁護士さんを選定できるので、その人にいろいろとお願いできる。
・収入がない人向けには葬儀社さんと市役所とご本人の関係性を政策として作りました。(図)
・まずご本人が市役所にご相談に来て登録をする。そうしたらプランを一緒に作って、葬儀社さんに契約してもらう。大体20万円ぐらいで、簡単なご葬儀と埋葬まで行ってもらえるしくみ。
・市役所は絶対に潰れないので、その葬儀社さんが契約通り履行したかどうかを見届けますよというサービスです。

感想

在宅診療や在宅での看取りに取り組む過程で、「医療と福祉の連携が円滑にできないこと」を痛感し、それによって「市民の幸せが置き去りにされてるんじゃないかと感じた」というユーティ。
大人になって組織どうしのエゴとエゴのぶつかり合いはしょうがないと諦め境地の自分でしたが、「市民ファースト」というちょっと手アカのついてしまった言葉をあらためて新鮮に思い出しました。

在宅看取りについて

・自宅で最期を迎えることができる地域作りをするためには、本当に多くの人や組織を巻き込まなければ実現できない。
・実は2期目の市長選挙時は「自宅で最期を迎えられる街、横須賀」を前面に押し出した選挙をした。
・取り組みの結果、20万以上の都市の中で横須賀市が全国でトップに。
・(具体的な工夫として)『在宅療養連携会議』を行いました。在宅に関わるいろんな団体のトップやプレイヤーの皆さんに入ってもらい会議を行った。特に大事だったのが、『多職種合同研修会』、現場の人が一堂に会し、研修をした。
・例えば、障がいのある方が病気になって、自宅で最期を迎えたいと言ってます。どうしますか?というお題が出て、看護師さんやお医者さんや介護の方が、「どうしよう?」と議論。また在宅診療の意義を医療者に感じてもらえるようなセミナーも。
・厚生労働省は、在宅体制を介護職を中心として国全体で作ろうと(当時)したのですが、ほとんど上手くいかなかった。やはりお医者さんがいろんな職種の人たちをコーディネートする力を持っているので、医師を中心に検討を進めることがポイントであることを実体験から学んだ。
・横須賀は40万人都市なので、10万人単位ぐらいに4ブロックを作って、そのブロック帯ごとに在宅の応対体制づくりを進めた。

感想

実際に在宅看取りをされた市民とのふれあい事例の紹介がありました。
元自衛隊の方で自衛隊を卒業した後は、地元で書道を教えていた男性。
その方が在宅介護状態となり余命宣告日より先の日程の書道展への参加お誘い。
これは「その時まで一緒に頑張りましょうよ」というメッセージ。
書道展のお題は「人生の一文字を書く」。
その男性から「吉田市長も書きなさい 」と言われて書いたのが選挙前で「挑」の文字。...
「こんな細い文字では挑戦しようという強い気持ちが伝わってこないよ」と怒られた。
書道展で自分の作品を見てから、お亡くなりになった。
その書道の先生が書いた人生の一文字は 「都」 奥さんの名前。......

さいごに

目に浮かぶような市長時代のユーティと市民とのふれあいのエピソードにグッときました。
このエピソードの後、「お葬儀で奥さんが何か達成感あふれる顔をされていたのを見て、自宅での最期がいいなっていうふうにすごく思ったので、私はちょっと押し付けがましく、自宅での最期を進める立場に立っています。」と語られました。自分の想いを市政に反映させる。市長って大変そうだけど、いい仕事だなと思いました。

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