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大学広報でもデジタルマーケティングが必要な時代

民間企業ではいまマーケティングとセールスのデジタル化が急速に進んでいる。いわゆるDXというやつで、インバウンド・マーケティングやらインサイドセールスやらリード・ナーチャリングやらMAツールやら用語が乱立しているが、ようするに営業のデジタル化である。

私の仕事はおもにウェブサイトの制作とシステム開発で、これまではこれにあわせていわゆるSEOというキーワード集客や、Googleアナリティクスを活用したウェブ分析とサイト改善をサポートしていたが、最近ではデジタルマーケティングのニーズが高く、そのサポートをすることが増えてきた。キーワード集客をして、ホワイトペーパーでリードを獲得し、MAツールでリードを育てる、というマーケティングからセールスへつなげるという一連の流れである。

私は大学のウェブサイト制作やシステム開発もしているが、大学ではこのようなデジタルシフトがあまり進んでいない気がしている。いまだに大学案内やウェブサイトではデザインの話ばかりで、どのように集客するのかというインバウンド的な視点があまりのだ。私立大学では競争が激しいのでそういう課題もあるが、国立大学ではまず聞かない。だけど、これからの大学ではデジタルマーケティングが不可欠だろう。

学生募集

大学のウェブ担当者であればわかると思うが、Googleアナリティクスで確認すると検索ワードの99%には大学名が入っている。なんとか大学という大学名がほとんどで、その他も「●●大学 合格発表」「●●大学 オープンキャンパス」「●●大学 募集要項」などが並んでいる。ようするにその大学の情報を見にきたユーザーがほとんどで、何かを検索してその大学にたどり着いたという本来の新規ユーザーはまったくいないのである。これは国立だろうが私立だろうが、おそらくほとんどの大学がそうだろう。つまりキーワード集客がまったくできていない

いくらウェブサイトのデザインを良くしても、そもそもその大学を見ようと思ってきているユーザーなのだから、デザインが良くても悪くても、それで受験するかしないかの判断材料になるとは思えない。ほかの大学と比較検討段階だとしても、その段階ではデザインで決めたりしない。もう手遅れなのだ。勝負はもっと前にしかけなければいけない。いかに大学を知ってもらうかが重要なのである。

企業であれば集客ワードは商品名やサービス名、お客様の課題や困っていることになるが、大学であれば研究キーワードがそれになるだろう。大学のウェブ担当者であれば、SEOチェキで大学のアドレスを入れ、「ビッグデータ 研究 大学」「ロボット 研究 大学」「マーケティング 授業 大学」など、大学がウリにしている研究室のテーマで、何位になるかを調べてみるといい。おそらくほとんどは圏外だろう。実際に検索してみて、上位に表示される大学はキーワード集客がうまくいっているところだ。ちなみに「ビッグデータ 研究 大学」では大阪大学の「ビッグデータ工学講座 鬼塚研究室」が1位にヒットした。大学でビッグデータを学びたいと思う高校生はまずこのページを見て、大阪大学を志望校にするだろう。

産学連携

研究キーワードは産学連携でも重要になってくる。産学連携を進めている多くの大学では企業向けのシーズ集があるが、カタログ化したものを印刷して大学内のラックに置いたり工業試験場のようなところに置いたりしているが、ほとんどの企業はその存在をしらない。ウェブサイトに検索システムがあったりもするが、そもそもサイト内での検索しか想定していないから、検索エンジンでヒットさせようという意識がない。なかにはご丁寧に検索エンジンで拾われないようにnoindexになっていたりする。いったい何をしたいのか。

シーズ集を作るのであれば、なによりキーワード集客を目的にするべきだ。日本では企業が大学に相談したり協力を依頼することが少ない。そういう習慣がないから、ハナから大学を探そうと思わないのだ。企業が何かに困って検索したときに、研究室の情報が出てきて「受託研究もしています、こちらからお問い合わせください」と書く。企業ではあたりまえにやっていることを大学だってやればいい。

公開講座

大学の役割とし地域貢献や社会人教育の必要性もいわれるなか、市民向けの公開講座をしている大学も多いが、そのプロモーションも弱い。学びたい社会人は多いが、大学の公開講座の情報なんて入ってこない。企業があたりまえのようにやっているSNS広告をやればそれなりに認知されるのに、なぜかやらない。リード獲得のためのホワイトペーパーを教員に作ってもらえば、それなりにダウンロードされるだろう。

おわりに

ここに書いたこと以外にも大学広報が取り組むべきデジタルマーケティングはたくさんある。大学広報の担当者はよその大学のことはすごく気にしているけど、気にするべきなのは大学ではなく企業なのだ。

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