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緊急入院、そして、手術

2021年3月16日 火曜日

一昨日の朝、歩くのが困難な程、左側の肋骨あたりが痛み、呼吸も出来ない苦しさに襲われた。

病院嫌いな僕は、いつも通り様子を見ていた。
横になるのも辛く、歩いていても痛い、鳩尾の上あたりが、ドクドクと大きな大きな脈動を打っていた。
痛むその場所、気管支が動くのが痛さでわかる。痛さで気道も狭くなって咳が出る。
その咳でまた痛む。笑っても、息を吸っても痛い。体を横に向けないと中身が圧迫されて苦しくて眠れもしない。

さすがに、痛さに耐えきれず夜間の救急に駆け込む。

コロナでなければ、仕事が出来るから、と、いつも通りに、診察を受けて帰れるものだと思っていた。

症状を伝えても、首をひねる看護師さん。その後の受診、先生はなんとなくわかったのか、レントゲンを勧められた。
撮影が終わり、痛さを我慢しつつ再度呼ばれるのを待つ。

「吉田祥吾さん、吉田祥吾さん」

呼ばれた僕は先生の前に座る。

『結論からいいますね』、と先生。

「はい」と僕。

これからの流れなんて、まったく想像もしていなかった。

そんな僕に告げる先生。

『今すぐ入院してください。』

あっけにとられる僕。

「えっ!入院ですか??」

“あードラマのようなセリフだな”と、想いながら聞き返す。

『レントゲンをみてもらえますか。右側と左側が全く違うのわかりますか?』

全く違った。
右側の肺は白くそこから伸びる脈がわかる程。
一方、左側は真っ黒。 何にも写っていない。

『肺に穴が開いて、肺がつぶれているんです。まったく機能していません』

説明を聞きながら、今月後半は、僕にとって重要な仕事ばかりが詰まっていることが頭を駆け巡る。

“入院とかできるわけない!”

「今すぐ入院しないとダメですか? 今月いっぱい待ってもらえませんか?」

『強制は出来ないので、どうしても帰られるとしたら、引き留めることは出来ません。命をかけることになります。』

“えっ死ぬやつなの、これ??”

場合によっては死亡する、【緊張性気胸】というものだった。
肺が完全に潰れている状態が【高度気胸】。その潰れた肺が心臓やほかの内臓を圧迫して、心肺停止になる危険性、緊急の手術を要する場合が【緊張性気胸】。

原因はわからず、肺に突然穴が開いて、そこから空気が漏れ続ける。
しぼんだ肺が心臓を圧迫して死ぬかもしれない、ということだった。

そして、気胸と言っても、軽度であれば経過観察で済む程度のものもあるらしい。

ところが僕の左肺は完全にしぼんで、重症らしい。
自然完治も難しい、そのままで回復したとしても、また再発する危険性が十分すぎる程残ること。、というか、「ここまで潰れていたら自然には治らない」とはっきり言われた。

そこでとられる、最も正しい選択は【入院して手術】

先生は続ける。

『入院されるとして、まず左側の肋骨あたりからドレーンを入れます。』

「入れるってどうやってですか??」慌てて聞き返す僕。

『メスで切っていれます。もちろん麻酔はしますが、少しは痛いかもしれません。』

「それをしないと絶対だめですか??」

『うーん、そうですね。入れた方がいいです。溜まった空気を抜かないといけないのと、手術の前にできるだけの情報が欲しいので。』
※もっと詳しく聞いたけれど、うろおぼえなので、覚えているところまでの情報を書いてます。

葛藤を抱えたまま、僕は着の身着のまま入院が決まった。
一度家に帰るのも止められた程に緊急性があったらしい。

命を天秤にかけられて、入院を断るなんて、さすがの病院嫌いの僕も無理だ。
その前に、すでにひどい症状。仰向けになれない程痛いから、それで毎日暮らすのは到底出来そうにない。

それでも、仕事を全部断らないといけない悔しさと残念さ、人生初の入院で【手術】。
受け止めるには圧倒的にボリュームがあって咀嚼できやしない。

まとまらないなか、一通りの説明を受け、ドレーン挿入の手術へ。
ドレーン手術を受けない状態だと、命の危険がある【緊張性気胸】。
ドレーン手術を受ければ、肺の穴を塞ぐ手術が出来る【高度気胸】へ。
その時の僕の状態は、ほぼ【緊張性気胸】。

けれど、危険な状態だと理解出来ない程、急な変化についていけない。

献血で意識を失うほどの、怖がりな僕は、手術室へ向かう道すがら、その危険も理解できず、何度も、どれだけ痛いか尋ねる。

そうこうしてるうちに、テレビで見たことあるような手術室に通され、見たことあるような機材や器具に囲まれた手術台に乗った。

仰向けになると痛いので、ベッドを上げてもらい座った姿勢で、左胸、肋骨の真ん中辺りの切開を待つ。

消毒を塗られ、胸にズンとくる麻酔を打たれ、とうとう左胸が切開される。
切られる感触がありわずかに痛む。

その瞬間、めまいがして、意識がなくなった。


きづいたら夢のなか。遠くから名前を呼ばれて、目を覚ました。
周りがざわついていた。

先生の説明によると、どうやら僕は心臓が停止していたみたいだ。

交感神経が、どうなって、こうなって、という説明を、今にも吐きそうな気持ち悪さのなか聞いていた。

途中まで切られた僕の左胸。

自分で思う。

「おい、自分しっかりしろよ! せっかく切られたんだから入れられとけ!」と。

それから、とても丁寧に安全に、胸の処置、僕への対応をしてくれた先生と看護師さん。
その日の夜は、ひたらす気持ち悪さと、痛みのなか、浅い眠りを繰り返しながら、【危険な状態】を抱えたままの朝を迎えた。

そうして、僕の入院生活が始まった。

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