ファンタジストを見に行って、ハナ差凌いだあの日
今日、2020年02月02日、アウィルアウェイがシルクロードステークスを勝ち、これが彼女にとって初重賞制覇となった。彼女の所為で胸に仕舞いかけていた想い出が、呼び起こされた。
2年前ー。京王杯2歳ステークスのその日、僕は東京競馬場に友人といた。彼、ファンタジストを見る為に。多くの人にとってはその季節にある、幾つかの2歳重賞の一つでしかなかったと思う。そしてそれは多くの人にとってはメインイベントではなかった。その日のメインイベントは、オジュウチョウサンが府中を走ることだった。土曜の2歳重賞しかない日にしては、客が入っていたのはその所為だと思う。2戦2勝の2歳馬を見る為に、愛知からやってくる様な物好きなら、尚更、僕くらいだったんじゃないかと思う。とにかく僕はファンタジストを見に、府中へ来た。
パドックではかなり良く見えた。だから人生で初めて、単勝1点2000円賭けた。
レースが始まった。いつもの様に道中2、3番手で先行し、楽な手応えで直線を向かえた。馬群の内から抜けてファンタジストが先頭に立つと、すぐに更に内、最内からアウィルアウェイが来る。叩き合いになった。アウィルアウェイ跨るデムーロは、鞭を何度も入れる。しかし武豊は追っているが、鞭は入れてなかった。勝てるー。そう思った。
2頭はほぼ同時でゴール板を駆け抜けた。僕の位置からは、ファンタジストが凌いだ様に見えた。場内にリプレイが流れた。ファンタジストはハナ差凌いでいた。嬉しかった。これで夢が膨らむ。次走は、GⅠ。朝日杯。次走、そして将来への期待が大きくなった一戦だった。この時は、これが彼の最後の勝利になるとは、夢にも思わなかった。
2019年11月24日ー。ジャパンカップの日に行われた京都12R京阪杯において、レース中、急性心不全を発症し、この世を去った。
アウィルアウェイが活躍する度に、彼のことを想い出すのだろう。そしてレースに彼がいない現実を受け止める度に、切なくなるのだろう。それでもー。それでも残された者は一生懸命生きなければいけないのだと思う。彼はもう、いない。それは迚も悲しい。そして哀しい。けれども、生きていかなければならない。彼のことを忘れることはできないし、忘れてはいけないと思う。けれども今は未だ、そっと胸に仕舞っておきたい。高松宮記念に彼はいない。だから、その時、その現実に打ち拉がれ乍ら、また彼に想いを馳せるだろう。だからそれまで、彼への想いは仕舞っておこうと思う。
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