ファンタジスト。そして、ショウナンアデイブ。

 僕の初めて惚れた馬、ファンタジスト。新馬の走りを映像で見た瞬間(とき)、僕は彼に、彼の走りに惚れた。そして、彼の出走するレースは可能な限り現地で見た。然し、連戦していく中で中々行けなくなった。そして、ラジオで聴いていた京阪杯だった。レース終盤、彼の名前は呼ばれなくなった。3着までの馬が呼ばれた後、彼の名前は呼ばれた。ファンタジストは、競走中止。せめて命だけは、助かってくれ。そう、願った。
 願いは、叶わなかった。彼は、この世を去った。突然だった。ショックだった。彼の最期に、鞍上にいたのは、浜中俊だった。

 あれから半年以上の月日が流れて、迎えた去年のセレクトセール。
 衝撃だった。美しかった。今まで見たことのない、美しい、漆黒の馬体。そして、独特の、一流馬しかないオーラを放っている様に、感じた。彼の虜に、僕はなった。僕は彼に、惚れた。
 そして、月日はまた流れ、5月。全兄のサトノスカイターフの成績が、振るわない。果たして本当に一年間を託すPOGで、一位に指名して良いのか。疑問を抱き乍ら、POG本を手にした。
 POG本で、彼の立ち姿を改めて見て、思った。最高。どの本で見ても、どの馬と比べても、最高。彼が、ナンバーワンだった。抱いていた疑問に、答えが出た。決まった。一位は、この馬。ダービー馬は、この馬。そう、確信した。この馬に、惚れ直した。
 そして、漸く、明日。阪神競馬場でデビューを迎える。阪神5R,芝2000mの新馬戦で8枠11番でのデビュー。鞍上は、あの浜中俊。浜中で終わった物語が、浜中で始まる。これも何かの巡り合わせかもしれない。明日は、ショウナンアデイブの競走馬としての最初の1ページに立ち会う為に、阪神競馬場へ行く。無事にレースを、終えて欲しい。そうすれば、必ず、彼、ショウナンアデイブがゴール板を先頭で駆け抜けている。そう信じて、現地に向かう。いよいよ明日、伝説が幕を開ける。

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