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「やってみたいことがあるのだけれど」感想を書き起こしてみたのだけれど。

なんだ。

なんだ、この感情。

入場前とは打って変わった激しい雨の中、横浜赤レンガ倉庫を後にした私。

新海誠監督映画「君の名は。」を観て以来の長い長い余韻を感じ、なんだかとても清々しい気持ちで帰路に着いたのでした。

こんにちは、よしざきです。
本名ではなくモロ偽名。ネットで適当に検索して気に入った苗字です。

もともとnoteには興味があったのですが、
男性ブランコのコントライブ「やってみたいことがあるのだけれど」
を鑑賞してから、もの書き欲を搔き立てられ、今回初寄稿と相成りました。
もうちょっと早く出したかったのだけれど。
拙い文章ですが、お時間が許す限りご覧ください。

「やってみたいことがあるのだけれど」フライヤー


本編

サンパチマイク…!?と思った開演前。

⓪漫才

トニーさんの素敵な演奏に合わせて、公演スタート。
いつもの男ブラさんとは違う、カラフルな衣装で登場。この瞬間、(えっっ…男ブラさんジャニーズだった…!?)と思っていました。
いつもの衣装とは違うけれど、服に着られることなくバッチリ着こなすお二人。惚れ惚れしました。
そして漫才がスタート。

「もう、どっちでもいいです。」「諦め~」好きなつかみ。
「でもここにきている人は、それを諦めなかった人たちだと信じています」
おお、わかってくれている~。
Ⅿ1からの新規でございますが、私は意外にも、スッと覚えられてしまいました。眼鏡かけてるほうが平井で覚えたかな。知らんけど。

このあと、これも大好きな「平井さん泳がせタイム(終着:ビュッフェ)」があってから、配信には載ってなかったトークタイムがありました。

前回公演を終え、日本大通り駅に向かっていた浦井さん。
中華街方面に向かうと、上り坂と平坦な道に分岐する所が。
俺は上に向かって進むんだ!と上り坂を選択して進んだ浦井さん。
結果、上り続けて下る気配なし。大分通り過ぎた現在地を示すGoogleMap。

浦井のりひろ、テイクオフ。


不憫のりのり、かわいすぎやしねえか?
きっと新港橋越えた辺りでテイクオフの道選んだんだな…。

「ちょっと、やってみたいことがあるのだけれど」

トルソーにかけられたお衣装たちが、お二人の手によって、トニーさんの音楽に乗せて登場。
なんて素敵なお衣装たち。冒頭の漫才スーツが、後からそのお衣装たちの生地を合わせ紡いだものだと知り、世界観の作り込み方に圧巻されました。

①観光案内

「あなたの思い出の地を巡りたい」亮太という青年から、突然思いつきもしないことを希望される野宮さん。
そもそも、私の地元がここって、あなたなんで知ってるんですか?」と投げかける野宮さんから、とんでもない伏線回収が待ってるんじゃと感じていました。

ドン……ピシャリ。
未来で流行っている、思い出の地を巡る観光。
野宮さんにとってこれから思い出の地となる病院は、隣にいる、26歳になった息子の始まりの場所だなんて。そんな染み入る展開ずるい。
そりゃ、ファーストなんとかで聞きたくないおばけが出るわけだ。

そして、ここからの台詞が全部好き。
「…私はその、いい父親ですか?」
「はい、いい父親です。たくさん愛情を注いでくれてます。理想の父親だと思います。」
ここで私、幼い亮太目線の野宮パパを想像するなど。
亮太においでして両手を広げる野宮パパ、抱っこもおんぶも肩車もしてくれる野宮パパ。優しい表情で、目線を合わせて、沢山褒めてくれるパパ。
そんな淡い映像が脳内で流れて。
なんだか温かくて、ツーっと涙が。
ハッ、!こんな序盤で。やられた。

「父さんが大好きな音楽を辞めたのは、僕のせいなのかな?」
「…あまり、親を舐めないほうが良いです。自分が考えて、考え抜いた結論を、子供のせいにする親なんていません。少なくとも私は、ならない。」

力強い言葉に、また目頭が熱くなる。

亮太の友達の中で、親から一方的に責められた人がいたんだろうか。
もし、普段優しい父さんでも、そんなことを思っているのだとしたら。
今流行りの観光で、その答えがわかるのだとしたら。
亮太はその光を観るために、父さんに会いに行ったんだろうな。

その後の未来が変わらないように、記憶はおばけになるけれど。
野宮さんはある日、亮太が大きくなった時、デジャブみたいなものを感じていそうです。

②音楽家

もし、父さんが音楽家だったら―—―

最初の浦井さんのギターを弾くマイム。トニーさんと動きを合わせる仕草。ギターの重みが伝わってくるお芝居が見事でございました。
これ、本編通して言えるけど、小道具は出てこず二人のマイムで魅せてるんですよね。舞台上のお衣装が際立つようにかな。

三叉路のアクマに25年寿命をいただくと言われ、めちゃくちゃごねる川松。
値切り、いや、じゅみょ切り交渉する川松VS一人で年収いきたいアクマ。
「話が平行線だ」「あなたが平行にしてきてるんです」
両者譲らず。ゲラゲラ笑ってしまいました。

ユニネコーンってなんだそれ!?なんてかわいい生き物を創り出すの平井さん!
Twitterでユニネコーンの絵を描いてる人を複数名お見かけしました。可愛すぎて、多分全部いいねしてます。嘘ついてたらごめんなさい。

「虚無の罰」存在すら遡って無かったことになる。一番重い罰。
これ、人間界のように「死」のある世界ではまかり通らない罰ですよね。
虚無に苛まれたら、精神を病んで命を絶つことを選んでしまうかもしれない。
つまり「死」のない世界における「死」=虚無ということか。
こんな話されたら、「男気の10!」分けてあげたくなるわ。

最後の「おもしろい楽しい」って台詞が好きです。
才能は欲しいけど、それ以上に少しでも長く「おもしろい楽しい」したいです。その一つが、私にとっては男性ブランコを見ることだったりします。

③おっちゃん

もし、アクマが人間だったら―—―

片田舎の、普通のおっちゃんたち。年齢は多分50そこいら。
なんの仕事してるかあまり掴めないかっちゃんとせいちゃん。商工会議所にいそう(?)

服をリバーシしたら子ども時代の二人になる演出、これは会場で息を飲みました。鳥肌。少し高くて舌ったらずな声。さっきまで低くて渋みのある声だったのに。二人ともほんと芝居がお上手…。

ワタコさんの告白のためいける感じでムリ!ムリヤ!ムリヤ!っていうかっちゃん。愛しすぎる。
告白成功して、隅っこで両手挙げて><って喜ぶせいちゃんもすっごく可愛い。何か頑張るときにはせいちゃん一体チャーターして応援してほしい。

せいちゃんが「ワタコさんには見えてない」と告げてから、暗転して二人だけの空間になるシーン。配信では最初から読書してなくて理解できてないかっちゃん、という印象でしたが、来場した回はまた違った印象を受けました。

来場した回は、せいちゃんが事実を告げると時が止まったかのようにすぐ暗転し、かっちゃんは「………え?」と少しの間固まっていました。上手側にいたので表情がよく見えて、ここでも涙腺を刺激されてしまいました。

せいちゃん、いつおばけになってしまったんだろう。
きっとほんの最近のことで、突然別れることになったかっちゃん。
多分せいちゃんの最期には会えなかったのかも。

でも、せいちゃんにとってそれは救いでもあったのでは?とも思います。

「せいちゃんはいつも助けてくれるって言うてるけどな、あれ、逆やから。いっつも助けてもうてたんは、こっちや。」

いつも助けてくれたかっちゃんの大勝負が成功するのを見届けるせいちゃん。
多分ワタコさんに紹介しようと呼んでいなければ、せいちゃんは自分の死に触れず去っていたのかも。
自分のことを「無二のやつ」と言ってくれるせいちゃんのままでいてほしいから。

「おりたいからおんねん」
本公演で一番温かくて、好きな台詞です。

④研究者

もし、研究者Aと研究者Bごっこをしたら―—―

怖いコントが好きな私。本公演で一番印象に残った作品です。少々長くなります。

コーヒーゼリーからコーヒーを抽出して、純粋な透明ゼリーを見たい博士。
助手のクボくんの共感得られーず。
まさに「やめそう!」って顔してた。眉間に皺寄せて口を小さくへの字に曲げるクボくん。

「もう、猿芝居は終わりです。博士。」
ここの「博士」の言い方が冷たい…。
キーンとしたトニーさんのギターと共に、一気に緊張感が走ります。

「これはもう、新たな兵器だ。」
「人間から、恐怖心を抽出できる。そうすれば、恐れを知らない、完璧な兵士が出来上がる。」

「Denki Ifuku Yē-Yē」の「人間をつくろう」を思い出したのは私だけでしょうか。
倫理に触れる怖さを感じます。

https://youtu.be/-lXGY7GQ_M4  (51:22~)

クボくんに実験台にされようとしている危機的状況なのに、博士はちゅうしゅっちゃんだもの!って譲らないし、ちゅうしゅっちゃんのモノマネするし、ここまでは研究者によくありがちな変人だと思ってたよ。ここまでは。

暴走したちゅうしゅっちゃんに刺されるシーン。
振り回され方と、倒れ方がリアルで何度も見返してしまいました。手からハラり…とちゅうしゅうちゃんが落ちて、力なく横たわるクボくん。

ここで博士、先にちゅうしゅっちゃんの心配をして、あとから「あれクボくん…?」ってなるのに少し違和感を覚えました。逆じゃないか普通…??

で、ここからだんだん大きくなる違和感。
まるでキレイなジャ◯アンになってしまったクボくん。これが純度100%の人間…?
黒いものを知らない目。だからといって人の手でそうさせられたから、不自然に光が入っている目。ほとんどまばたきもせず表情が変わらない。人形みたいに動かない姿にゾッとしました。

こうなったら慌てて元に戻す方法を考えそうなのに、
慌てるどころかクボくんを見て「君も純粋な人間になれたんだ」と喜ぶ博士。

終盤に近付くにつれ、ああ、クボくんはもう生身の人間に戻れない、と絶望を感じました。

一向に慌てたり驚いたりしない博士。
黒みが残ってるコーヒーゼリーを食べさせようとする博士。
「人体実験だもんねそれってダメだよね」と言っておいて、クボくんに「いいよおばけ」させて別人格を注入しようとする博士。(ここのクボくんちょっと可愛かったけど!)

純粋なものへの憧れと、得体の知れない恐怖。

博士にとってはコーヒーゼリーだったけど、もし対象が最初から人間であったとしたら、クボくんの思惑以上に恐ろしいことが起きてたんじゃないか…。クボくんは悪いことだと知ってるけど、博士にとっちゃただの憧れで、純粋=素晴らしいものだと信じて疑わないんだもの。

「ああ、そうかそうか。ありがとう。」

いや、もう手遅れかも。

⑤絵描き

もし、クボくんに禅さんが注入されたら―—―

汚名の上にベストに加工した濡れ衣を重ね着しておしゃれに着こなす禅さん。ちょっと臭うの嫌すぎて笑いました。
浦井さんの軽快な動き、外見とは異なる根っからのコメディアン気質を感じるので好きです。

倉木家のはぐれマトリョーシカになり、禅さんと対照的にお金の心配でいっぱいの敬太。
平井さんの常識人役は軒並みお気に入りキャラです。道舟院國兎のワムラくんとか、シャンプー買い忘れたの蛙本くんとか。

【深海のトルソー】をプレゼントするときの演出が素敵でした。
照明ひとつでそこに絵画があるかのように見せる演出。二人の会話から、見る人の想像によって絵が完成するのも素敵でした。

「なにがやりたい?なんだってできるぞ。」
「やりたいことは?」
家族も身寄りもない同じような境遇に、優しく問いかける禅さんの言葉。
心のつっかえを取り除くような問いかけに、敬太と共に勇気づけられました。

終演後、会場に置かれた実物の【深海のトルソー】と「はぐれマトリョーシカ」を見逃しあとからTwitterで知ったのは、今回最大の後悔でした。

⑥服屋

もし、敬太が服屋さんだったら―—―

古い洋館の中の洋服屋さん。ロケーションもバッチリだし、絵本の世界にいるみたいな気分になりました。

13年分の記憶がない旅人が「着憶」を探して辿り着いた服屋。この店員さん、本当にどこかの洋服屋さんに居そう。中性的なカッコよさがある女性。髪も地毛のままで、今での平井さんの女装でなかったタイプなんじゃないか。
本編の中でいちばん好きな衣装です。

再び照らされたお衣装たちから旅人がまず選んだのは、観光案内所の服。
たちまち野宮さんになる旅人にブワっと鳥肌が立ちました。
え、あ、そういうことか…!と。
驚きも束の間、間髪入れず「うるさい。」とねっとり言う店員さんに笑ってしまいました。

様々な服を着てみる旅人。ここは、配信で回ごとに違ったんだと知って驚きました。

私の行った回は、かっちゃん→クボくんでした。

かっちゃんはムリムリと言いながらリバーシブルしようとして、「ちょちょちょっと」と店員さんに止められてて笑いました。「な、そんなリバーシブルにしないで、そのままが良いでしょうよ」とこういったニュアンスのことを言っていたような。けど結局子供時代のかっちゃんにもなってました。

クボくんは配信のように、戸惑った末店員さんもにこやかに直立。そんなわけないって。

で、最後。漫才衣装を見て「懐かしい感じがする」と言った旅人。

旅人は浦井さんだったんだね。

13年=男性ブランコ結成からの年数。
終演後は野宮さんが亮太と出会ったから記憶がなくてあの展開に…?と考えてましたが、後からこれだ…!と気付いてえも言われぬ感情に。
原点回帰し、漫才に戻ってきたのか。

「お客さんも来てんねんから」「お客さん…?」
この言葉で観客席が明るく照らされたときは、お客さんと公演を一緒に作るというお二人の気持ちを勝手に感じてしまい、嬉しくなりました。

「まあお前の”期待”には応えられなかったけど、”着たい”服は着れたんちゃう?」
「なんやねんそれ、もうええわ」

終演。
締め方がバッチリ決まっていて、(わああ…)と思わず声が漏れてしまいました。心臓ドキドキ。
トニーさんのギターも台詞とピッタリ合っておりました。

まとめ


コント師として名を馳せて、いつかはコントで全国を周るのが夢の二人。
今回の2か所11公演の単独も、その大きな布石なのではと感じていました。
その前の原点回帰として、漫才の導入の一つ「やってみたいことがある」から始まるコントが生みだされたのかなと考えます。
それも一つ一つではなく、シームレスにすべてが繋がって。こんな構成は見たことがなくて、きっと忘れられない体験になるだろうと感じました。
まさかこんな考察も交えた感想書くなんて思ってもみなかったですし。
それだけ素晴らしい時間を過ごさせていただきました。

平井さんの書く本も、それを表現する浦井さんも、もっと応援したいです。

「纏って消えて現れて、おばけじゃないよコントだよ」
これからも沢山のやってみたいおばけと出会えますように。

またねおばけ。


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