胡蝶の夢


夢の中で幾晩過ごしたんだろう。
1ヶ月くらい?
寝ていたのはたったの1時間だったけどね。

夢の中で悪夢を見たんだ。毎晩。悪夢は毎度同じ舞台でね。夢の中で起きて、また寝るとその場所に飛ばされるんだ。もちろん、夢の中でね。

悪夢は、一晩一晩は別に怖くないんだ。
日常のような悪夢でね。ただ少し、少しずつズレを感じるというか。違和感が少しずつ増えていくというか。なのに違和感を感知できなくなるというか。いや、難しいね。目の前で人が死ぬのを日常だと思っていたんだ。血を浴びるのは夢の中くらいさ。
夢っていうのは突拍子がなくて、多分普通の脳味噌では理解できないんだと思う。
だって、起きていたらありえないと思うことも、夢の中ではごく普通のことだろう?
違和感なんてないんだよ。

悪夢の中でね、私は樹形図を見ることができるんだ。
大きな樹形図でね。私は浮遊しながらそれを見ることができた。樹形図は何を繋げているかというと、人の名前なんだ。私は私の名前を探さなきゃいけなかった。
名前に触れると、日常に入るんだ。私の名前の上の人が死ぬのを見れるよ。次はきっと私なわけだけど。私が死ぬ前に夢の中で目が覚めるんだ。

それで?夢の中で悪夢を見る、それだけの夢だと思うじゃないか。
前提として。私は起きるまでは夢を現実だと思っていたよ。悪夢は夢だ。夢の中の夢だ。夢は現実だ。という感じ。
だんだんね、現実に悪夢の影響が出始めたんだ。ゆーっくりね。
ゆっくりゆっくり。
するとね、現実と悪夢の区別がつかなくなるんだ。今起きてるんだっけ?夢だっけ?いつ寝たっけ?全て夢だけど。
暗いところに行っちゃいけないんだ。それは夢の中で?それとも現実で?帰れなくなるんだよ。それだけ知っている。だって死んだもんね、前の人。

知らないうちに暗いところにいるんだ。
あれ?なんで私は暗いところにいるんだ?
寝たのか?ここは悪夢の中か?とりあえず明るいところに行かなきゃいけない。
取り乱さず、走っちゃいけない。早歩きで。結局行けなかったんだ。

現実だった。
多分死んだんだと思う。悪夢の中じゃなくて、現実で。それは現実だと思っていた夢の中で。

夢の中の夢が夢に影響を出し始めて、夢の中で死んだのかな?面白いね。
起きた時はぽかーんとしてたけど、色々思い出したら凄くて興奮した。
今の現実は本当に現実だと思う。あはは。
現実って何?
マトリョーシカかな?

こういう時に思い出す言葉が胡蝶の夢。
あとはねー、水槽の脳。

脳って面白いよね。
というか、全てが面白いんだね。




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