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腰痛でも運動しましょう!

冬も深まり、徐々に気温の低下が目立ち始めました。
秋から冬にかけて、顕著に増え始めるのが腰痛症。
当院でも、この時期に外来を受診する方の半数近くが腰痛症で占められています。
寒くなり体幹部の筋肉が硬直し、柔軟性が失われている際に中腰姿勢で作業を続けたり、長時間の移動をしたり、何か重いものを持ち上げたり…こうした動作によって、急激な腰の痛みが発生するようです。
ギックリ腰(急性腰痛症;急激な腰痛)と言ってもその原因は様々なで、症状の出方や期間、付随症状に内容は多岐に渡ります。しかし、原因が何であっても、身動きが取れないほどの激烈な痛みは数日で和らぐのが一般的です(多くの方が、この痛みのピークを過ぎ、動けるようになった頃に医療機関を受診されます)。

さて、こうした腰痛症を契機に、今後の再発予防のため運動に目を向ける方も多く見られます。体幹の安定性をもたらすために腹筋を鍛えたいと仰る方が多く、実際にこれは正しい発想です。「痛くない範囲で始めます」と言う方もいれば、「痛みが無くなったら運動を始めます」と言う方もいます。
私のお勧めは“今すぐ開始“です。せっかくモチベーションが上がっている今この瞬間に開始するのが最もスムーズで、習慣化も容易になるためです。痛みが無くなるのを待つ必要はありません。
一方で、腰に不安定性がある以上、動作内容には工夫が必要です。一般に“腹筋“と言われて皆さんがイメージするクランチやシットアップといった種目は、体幹を折り曲げる事で背部の筋肉が大きく引き伸ばされると共に、ヘルニアがある場合は飛び出したヘルニアを更に押し出す方向へ力が働きます。

つまり、痛みがより酷くなります

この時期は、体幹を折り曲げず、それでいて持続的かつ強力に筋肉を刺激する種目を選ぶ事が重要です。
例えば…
◽️レッグレイズ
背中を床につけて仰向けになります。両足を揃え、膝を伸ばした状態で30-45度ほど持ち上げます。このまま上げ下げする場合もありますが、腰痛時は一定の高さで30-60秒間保持する等尺性トレーニングがおすすめです。腰部刺激のリスクを抑え、効果的に腹筋を刺激出来ます。
▫️プランク
両肘を床につけてうつ伏せになり、腰を浮かせます。身体を肘と爪先のみで支える姿勢となり、腰の曲げ伸ばし動作を伴わずに腹筋を刺激出来ます。

また、その他の部位も、一工夫することでトレーニングを継続できます。
例えば…
▫️ベンチプレス
高重量を取扱う際は腰を反らせて持ち上げますが、腰痛時はベンチに腰を完全に付けて行います。さらに、下半身を宙に浮かせたヒップレイズの姿勢をとり、ダンベル・バーベルを下ろしていくネガティブ動作を意識して行うのがお勧めです。軽重量でもネガティブ重視にすることで胸筋の伸展にフォーカス出来ます。取扱い重量が下がる分、重さを支え切れずに腰を痛める、といった二次傷害のリスクが減ります。
▫️チンアップ(チンニング、懸垂)
通常は腰を弓形に反らせて行いますが、腰痛の時期は体幹を真っ直ぐに伸ばして行います。グリップにもよりますが、この姿勢では上腕二頭筋から僧帽筋上部が重点的に鍛えられ、実際に上腕二頭筋トレーニングの一環として導入している方もいます。

その他、体幹を固定し、チートを交えない動作であれば何をやっても構いません。心配であれば、治療用の腰痛ベルトを巻いたままトレーニングに臨むと良いでしょう。
最初に述べた通り、激烈な痛みは数日で治まり、その後は体幹が刺激された際の刺すような痛みに切り替わることがほとんどです。この時期に入れば、安静にすべきは痛めた局所であって、運動そのものを中止する必要はないのです。

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