証明募集(本文)

導入

先日、多項定理と似た雰囲気の恒等式が成り立つことに気がつきました。簡単な証明がありそうな気もしますが、思いついていません。別記事で書くように、一般的な定理の特殊な場合だと思いますが、この場合にわざわざその定理を持ち出すのは少し大げさに感じています。簡単な証明をご存知の方、あるいは思いついた方に教えてもらえると嬉しいな、と思ってこの記事を書いています。

その恒等式は次のものです。

$$
\sum _{k=1}^n\sum_{\substack{l_1+\cdots +l_k=n\\l_1,\ldots ,l_k\geq 1 }}\frac{n!}{l_1! \cdots l_k!}(-1)^k=(-1)^n.   \cdots (1)
$$

これで終わってもいいんですが、あまりに素っ気ないので、冒頭に書いた定理の紹介を含め、以下でいろいろと補足します。
(補足が長くなりすぎたので、何回かにわけることにしました。)

多項定理と問題の恒等式

多項定理とは次の公式のことです。高校で習ったかもしれません。

$$
(x_1+\cdots +x_m)^n=\sum_{\substack{l_1+\cdots +l_m=n\\l_1,\ldots ,l_m\geq 0 }}\frac{n!}{l_1! \cdots l_m!}x_1^{l_1}\cdots x_m^{l_m}
$$

この式は左辺の展開を組合せ的に考察することで証明できます。
ここで$${x_1=\cdots =x_m=1}$$とすると、次のようになります。

$$
\sum_{\substack{l_1+\cdots +l_m=n\\l_1,\ldots ,l_m\geq 0 }}\frac{n!}{l_1! \cdots l_m!}=m^n
$$

上の式では$${l_1,\ldots ,l_m}$$は0以上となっていますが、1以上となっているものの個数で場合分けして書き直すと次のようになります。

$$
\cancel{\sum _{k=1}^n\sum_{\substack{l_1+\cdots +l_k=n\\l_1,\ldots ,l_k\geq 1 }}\frac{n!}{l_1! \cdots l_k!}=m^n}
$$

こういう単純なものだけで話が済めば簡単ですが、世の中そういうわけにもいかないので、次のような交代和を考えます。

(上の変形は誤っていたので、少し強引ですが次のように修正しました。ご指摘いただいた Cool-Tachibanä @tasty_yarrow119 さんありがとうございました。)

上の式では$${l_1,\ldots ,l_m}$$は0以上となっていますが、1以上となっているものの個数で場合分けして、さらに$${m=n}$$として書き直すと次のようになります。

$$
\sum _{k=1}^n\sum_{\substack{l_1+\cdots +l_k=n\\l_1,\ldots ,l_k\geq 1 }}\begin{pmatrix} n \\ k \end{pmatrix}\frac{n!}{l_1! \cdots l_k!}=n^n
$$

ここで左辺の二項係数$${\begin{pmatrix} n \\ k \end{pmatrix}}$$を$${(-1)^k}$$で置き換えると、次のような交代和を得ます。

$$
\sum _{k=1}^n\sum_{\substack{l_1+\cdots +l_k=n\\l_1,\ldots ,l_k\geq 1 }}\frac{n!}{l_1! \cdots l_k!}(-1)^k
$$

この和がどうやら$${(-1)^n}$$になるようだというのが、冒頭の(1)式です。
小さい$${n}$$で確かめてみます。

n=2の場合

$${k=1}$$のときに足される項は、$${\frac{2!}{2!}(-1)^1=-1}$$です。
$${k=2}$$のときに足される項は、$${\frac{2!}{1!1!}(-1)^2=2}$$です。
したがって、総和はこの2つを足して$${-1+2=1=(-1)^2}$$となり、確かに成立っています。

n=3の場合

$${k=1}$$のときに足される項は、は$${\frac{3!}{3!}(-1)^1=-1}$$です。
$${k=2}$$のときに足される項は、$${\frac{3!}{1!2!}(-1)^2+\frac{3!}{2!1!}(-1)^2=6}$$です。
$${k=3}$$のときに足される項は、$${\frac{3!}{1!1!1!}(-1)^3=-6}$$です。
したがって、総和はこの3つを足して$${-1+6-6=-1=(-1)^3}$$となり、確かに成立っています。
$${n\geq 4}$$のときも同様に確かめられます。

まとめ

少なくとも小さい$${n}$$で次の恒等式が成り立つようです。
簡単な証明を教えていただけると嬉しいです。

$$
\sum _{k=1}^n\sum_{\substack{l_1+\cdots +l_k=n\\l_1,\ldots ,l_k\geq 1 }}\frac{n!}{l_1! \cdots l_k!}(-1)^k=(-1)^n.   \cdots (1)
$$

補足1:組合せ的な意味はこちらです。



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