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なぜ日本人駐在員?結局、駐在員って、いるのか?

こんにちは。よしです。先日お笑いコンビ「ジャルジャル」がキングオブコント2020年王者になったという一報よりも、福徳さんと後藤さんが私と同じ大学卒業していたという一報を受け、勝手に親近感を覚えておりました。ともあれ、おめでとうございます。

さて、今回も前回に引き続き、最近海外赴任した人からある質問を受けたので、それについて考えてみたいと思います。3つ質問を受けたのですが、今回は2つ目の「なぜ日本人駐在員?結局、駐在員っているのか?」について考えてみたいと思います。

なぜ日本人駐在員?

この質問にズバリ答えると、「それは私たちが日系企業に勤めているからです(笑)」。日系企業が海外に進出している以上、完全にローカライズする事は難しく、誰かが現地と日本の橋渡しをしなければなりません。先日「駐在員のミッション、Roleはどう定義されるべきか?」の中でも書きましたが、駐在員のミッション、Roleを以下に再掲してみます。

1. 日本と赴任地を繋ぐブリッジ社員型
2. 技術伝承型
3. プロジェクト遂行型
4. 現地法人ビジネス運営型
5. 取り敢えず行って来い型

前回はこれらのミッション、Roleに対し深堀りをしました。今回の問いをもう少し粒感を小さくしてみると、「取り敢えず行って来い型」の5を除いた1~4を「なぜ日本人が駐在してまでやらないといけないのか?」におきかえる事が出来ます。唯一無二の正解はないと思いますが、私が思う代表的な2つの理由を以下に挙げたいと思います。

1.暗黙知が支える日系企業の「模倣困難性」

日系企業の中には「暗黙知」が至る所に存在します。代表的な例は「技術伝承」を掲げる製造関連だと思いがちですが、営業、マケ、研究開発、人事、その他至るところに自社独自の “暗黙知” が存在します。「あなたの今のJob DescriptionやJob Scope、そしてそれらを正しく遂行する為のWork Instructionを出して下さい」と言われて出せる人は、ほぼゼロに近いでしょう。

日系企業は、この暗黙知による経営を、戦後から現在に至るまで継続しているのです。そしてそれを可能にさせる制度が「終身雇用制度」でした。社内で仕事が変わっても、「この件はAさんに聞けば分かる」と仕事が人に紐づいて行くのです。いわゆる”日本的経営”です。

これは逆に日系企業の「強み」でもありました。形式化されたものがないので、何かが外に流出する事もなく、他社が真似しようにも簡単に真似できない、「模倣困難性」が存在するのです。

よって、海外で上記ミッション、Roleの1~4のいずれを行うにしても、「日本のやり方」を踏襲する以上そこに“暗黙知”が存在し、それを伝承出来るのが唯一「日本人」という訳です。これが日本人駐在員が必要な1つ目の理由です。

2.本当のグローバル企業はまだまだ少ないという事実

「グローバル企業」とは何でしょうか?海外に進出していれば「グローバル企業」と呼べますか?製造業において、日本では人件費が安価な東南アジアへ拠点を移し、そこで生産したモノを日本へ輸出しているケース。このケースは「グローバル企業」でしょうか?

「グローバル企業」の定義は色々あるでしょうが、私が最もしっくり来ているシンプルな定義は「世界で通用する強みがあり、それを生かして世界中でまんべんなく商売ができている企業」です (出所:真に「グローバル」な企業は、日本に3社しかない)

これに当てはめると、世界中でまんべんなく商売ができている日系企業は意外と少なく、結局海外に進出しても、それは単純に人件費の安い国への生産拠点の移転であったり、海外に進出していながらも、実際のお客さんは現地の「日系企業」というケースが多いのです。日系企業を相手にする以上、日本人特有のきめ細かい要求に答えたり、時には接待で関係性を深める事も必要でしょう。そんな事が出来るのも、日本人駐在員だけです。これが2つ目の理由になります。

結局、駐在員って、いるのか?

上記の2つに該当する場合は、まだまだ日本人駐在員が必要です。日本人駐在員なしでは海外で仕事が回らないでしょう。駐在員をなくすには、暗黙知の形式知化が必要になります。外国人が理解し、実践できるレベルのJob DescriptionやJob ScopeそれからWork Instructionまでブレークダウンさせる必要がありますが、暗黙知が多すぎてこれは現実的ではないでしょう。仕事外の時間を大切にする外国人にとって、日本人が行うような接待も苦痛でしかないでしょう。

では、日本人駐在員が不要なケースは逆にどのような場合でしょうか?一つは明らかですが、「取り敢えず行って来い型」ではないでしょうか?ミッションや、Roleがなく、自由に出来るからこそ爆発的に能力を発揮する人も稀にいます。仕事で成果を残せなくても、「海外経験」は今後の成長に繋がることもありますし、否定はしません。しかしコロナ禍の中「駐在員の再定義」が始まる中、逆に駐在員のミッションや、Roleを正しく設定しないまま海外へ送り出してしまう企業はどんどん競争力を失っていきます。

もう一つが上記2つの理由に該当しなかった「真のグローバル企業」です。海外に進出している日系企業でありながら、日本のやり方だけでなく、現地のやり方とうまく融合させ、最適なやり方を既に創出し形式知化している。もしくは日本のやり方よりも、既に現地のやり方で成功しているMatureな現法。

そして、お客さんは日系企業に留まらず、現地や世界を相手に自分たちの商品・サービスを届けている。そのような会社では、経営幹部が日本人でずらりと並べる必要もありませんし、多国籍の優秀な人を任命すれば良いのです。このようなケースは「力勝負」です。あるポジション、ミッション、Roleで日本人がその「力勝負」においても最適と思えば、そこに日本人駐在員をアサインすれば良いだけです。逆にこのような場所に「取り敢えず行って来い」とか言われてはミスマッチも甚だしい状態となります。

駐在員人事戦略が今後の企業競争力に欠かせない

これまで読み進めて頂き、ある事に気づいた方も多いかもしれません。そうです、全てはケースバイケースで本来であれば、もっと粒感を小さくして考えなければなりません。

例えば、まだまだ発展途上の東南アジアに駐在する意味と、既に経済が成熟している欧州、アメリカに駐在する意味とは全くミッション、Roleも異なって来るでしょう。そして赴任する会社が自社の100%子会社なのか、現地とのJoint Ventureなのか、本来は複雑な複数の要素が存在し、その要素ごとに駐在員を定義しなければなりません。そして送り出す駐在員の「現在の能力」に加えて、どれ程の伸びしろがあるかの「潜在能力」の見極めも必要なのです。

現在Withコロナの環境下で、このままWithコロナが何年も続くのか、Postコロナの時代が来るのか現段階では分かりません。だからこそ、駐在員人事戦略が今後の企業競争力に欠かせないと思っています。戦国武将並みに、誰をどこに配置して、どのタイミングで出撃させるか、もしくは退却させるか、将棋の盤面をにらむ羽生善治さんのような駐在員人事戦略が必要になって来るのです。「駐在員再定義」のゴングはもう鳴っているのです。

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