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フランス滞在記 Ver 2.0:不法出国の巻

そろそろ時効なので、顛末記をここに記載しておきます。

2023年4月18日。 ちょっと訳ありで日本に帰国することとなった。
仕事ではなく 100% のプライベート。 しかも仕事を長期に休む訳にもいかないので、ごくごく短期間の滞在での帰国である。

昨年(2022年)の4月から、仕事の関係でフランスに駐在して働いているけれど、自宅はそのまま東京に残してある都合上、定期的に帰国することは当初から想定していたので今回のプライベート帰国はある種想定の範囲内と言うことになる。
一方、我が嫁ハンは昨年の11月からフランス生活に合流しているが、彼女も色々と野暮用があるらしく、今回は一緒に帰国することにしてあり、ボクは短期間の滞在でフランスに戻るけれど、彼女は約1か月の間日本に滞在する予定にしてある。 
ただ問題は、彼女の場合、その段階でフランスの滞在許可証の正式版が入手できていないことである。

フランスだけではないけれど、観光ビザで滞在できる期間を越えて海外に居住し続けるためには、何らかのビザ申請を行い、その国の滞在許可証を取得する必要がある。 それがないと、観光ビザ期間以降は不法滞在と言うことになってしまう。
ボク自身の場合は、フランスで仕事をする都合上「就労ビザ」が必要となり、昨年の4月に小職がこちらに到着して以降、勤務している会社が色々と手配してくれて、約3か月後には就労可能な「滞在許可証」が入手できている。
我が嫁ハンの場合はビザの種類は違えど状況はほぼ同じで、会社が色々と手配してくれて、就労ビザを取得している家族(つまりボク)と一緒にフランスで生活するための「帯同ビザ」の申請を出してくれている。
ただ、就労ビザと帯同ビザの場合、取り扱う側の重要性から言えば「就労ビザ」の方がはるかに上だからなのかもしれないが、ボクの「滞在許可証」は申請から3か月程度で受領できたものの、彼女の場合は申請から6か月が経過してい今も「滞在許可証」は入手できていない。 かろうじて「滞在許可証」を発給することが確定したという正式な通知書(仮に「滞在許可証発給決定通知書(現地語で「Attestation De Decision Favorable」)と呼ぶことにします)が  PDF ファイルで送られてきているだけである。
その書類には、①滞在許可証を発給することがxxxx年xx月xx日い決定したこと、②滞在許可証が完成したら別途連絡すること、③この通知書を持って滞在許可証と同等の権利を有すること 等が書かれているので、正式な滞在許可証が発給されるまではその「滞在許可証発給決定通知書・Attestation De Decision Favorable」の書類が滞在許可証の代わりになるということになる。 なので彼女の場合、現状「不法滞在」と言う訳ではないけれど、「正式な滞在許可証」を保有していない状態と言うことになる。
ちなみに、ここフランスのお役所仕事は恐ろしく時間がかかり、同じように滞在許可証の発給は確定しているが、正式な滞在許可証を受領できていない方が山ほど居るとのことである(←これはまた別の機会にご報告します)。

フランス在住のボクたちが日本に一時的に帰国する場合、当たり前だけれど、その航空券は「フランス→日本→フランス」と言うことになる。つまり、フランスから日本に日本のパスポートで再入国し、その後日本を出国した後は、次に日本にいつ戻るかは決まっていないことになる。 そうなると、日本のパスポートでフランスを出国するとき、もしく日本からフランスに向かう前に日本のパスポートで日本から出国するときには、長期間フランスに滞在できる何らかの証明書を提示することを求められることがある。 まぁ、ある種あたり前の話。

ところが上述のように、現状、我が嫁ハンの場合「滞在許可証」を有しておらず、「滞在許可証を発給することが決まったよ」と言う電子ファイルが一つあるだけである。 果たしてこの書類一枚でフランスを出国できるのか? もしくは日本を出国できるのか? と言うのが大きな心配ごとだったのだが、その心配が的中してしまった。 しかも、出国時に「その書類の印刷物が手元にない」と言う状況まで発生してしまった。

今回の日本帰国便は JAL と Finair のコードシェア便で Helsinki 経由である(その方が時間はかかるが航空運賃は割安であるが、今思えばこの「Helsinki 経由」と言うのがすべての問題のはじまりだったのかもしれない)。
この場合、欧州圏からいわゆる出国するのは、パリCDG 空港ではなく Helsinki 空港と言うことになる。 つまり、パスポートコントロールでパスポートにハンコをもらって欧州圏から出るのは Helsinki と言うことになる。

パリの CDG 空港を離陸したのは、予定より1時間遅れ。
Helsinki 乗り継ぎは3時間を見込んでいたので、その1時間の遅れは大きな問題にはならなかった。

Helsinki に到着し、嫁ハンとパスポートコントロールの順番待ちをしているときに嫁ハンが「滞在許可発給確定通知書の印刷物を持ってくるのを忘れた!」との衝撃の一言。
いや、上で長々と説明した通り、彼女の場合「滞在許可証」の正式版がないので、そもそも問題になるんじゃないか? 滞在許可証発給決定書だけで本当に問題ないのか? と言う心配があったにもかかわらず、その滞在許可はおろか通知書 の印刷物までもがないという・・・ 絶望的な状態に陥ってしまった。

待ち行列の最中、そういえば滞在許可証発給決定通知書は、最寄りの県庁から PDF ファイルで送られてきており、その PDF ファイルをボクが彼女に転送し、彼女がそれを印刷して持っていたはずなので、スマホの中には書類が残っているはずだと思いだした。 必死になって探したところ、彼女の iPhone の中に同書類をスマホに表示した時の「スクリーンショット」の写真が見つかったので、その写真でなんとか乗り切るしかないと腹をくくった。

パスポートコントロールで彼女のパスポートと搭乗券を係員に手渡した。
ぱらぱらと彼女のパスポートを確認しながらハンコの準備をしていた係員の手元がふと止まった。
どうやら、彼女が最初にフランスに入国した際に発給された一時的な「帯同ビザ」の証明書が貼り付けててあるページに目を止め・・・・

係員:「このビザ、期限切れてるわよ」 とのこと。
ボクは腹の中で 「わっちゃぁ~、(見つかっちゃったよ)」と悲鳴を上げていた。

ボク:「あっそうそう、彼女は今、正式な「滞在許可証」の発給を待っているところなんだよ。ただ、発給することが決定したという通知は電子的に受け取っているんですよ。 」
と平静を装いながら、しかもその「滞在許可発給決定通知書」がスマホの中に入っていることがある種当たり前であることを 装いながら、我が嫁ハンの iPhone に入っていた書類の写真(書類の PDF ファイルですらない)を見せたところ・・・・

係員:「こんなスマホの中の書類で Passport Control を通れると思うの・・・?」 と係員。
ボクの心の声:いや、まったくもってごもっともな話。

ボク:「でも、俺達だって正式な書類が欲しいんだけど、フランスの当局からは PDF ファイルでこの書類が送られて来たのだからしょうがないじゃない」 とボクの苦しい言い訳。

係員:「ここは Passport Control なのよ。 例えば Passport のコピーだけでここを通れると思うの? もしそうなら、私たちがここに居てひとつひとつ検査している意味ないじゃない!(ちなみに、係員は女性でした)」
ボクの心の声:まさしくごもっとも。

ボク:「あなたはこのドキュメントを『コピー』って言うけど、我々はフランスと当局からこの書類を PDF で受け取っていて、それ以外の書類はないのだからどうしろっていうの? 紙にはなっていないけど、このスマホの書類は『コピー』じゃなくて Official Document なんですよ。」 と、ボクのさらに苦しい言い訳・・・

係員:「ここはフィンランドなのよ。 フランス当局のことなんて知ったこっちゃないし、そもそもフランス語で書いた書類、しかもスマホの中の写真見せられても、どうにもできないわよ。 書類っていうのはねぇ。 きちんと紙に印刷されてオーソライズされている必要があるのよ。 スマホの写真なんてコピー以外の何モノでもないじゃない。話にならないわよ。」
ボクの心の声:返す返す、ごもっともなご意見。 
でも、こっちとしても「ハイそうですか?」 と言う訳にも行かない。
嫁ハンひとりを Helsinki に残してボクひとり日本に帰る訳にも行かないし、そもそも嫁ハンひとりを Helsinki に置いて行けるわけがない。

ボク:「いや、あなたの言っていることはわかる、ただ、この書類はそもそも電子的に送られてきたものなのだから紙の印刷物だって、スマホの中のファイルだって同じことじゃない。 正式な『滞在許可証』をができるのをすでに半年以上待っているんだから、俺達だったやりようがないんだよ。 この書類には(フランス語だけど)欧州域外に出ることもお問題ないと書かれているんだよ。 フランス政府がそれを保証しているんだから問題ないじゃない。」
と、とりあえずスジは通っていると思うが・・・

係員:「何度も言うけどねぇ、コピーじゃ話にならないのよ。 しかもスマホの中の写真だし。  仮にこのスマホの写真の書類が正しいものだとして、有効期限内なの?」
ボクの心の声:おぉ、スマホの書類の内容に言及して来たねぇ。 スマホの書類の中身の議論に持ち込めるかも・・・

ボク:「(フランス語だけれど)有効期限は正式な『滞在許可証』ができるまでと書いてあります。 ここに QR コードがあって、それを読み込めば詳細がわかるはずですけど・・・・」 
と、スマホ書類の内容に関することに話の流れを持っていこうと必死に頑張るボク

係員:「QR コードって言ったってここはフィンランドなのよ、フランス国内で有効な QR コードなんて知らないし。そもそも『滞在許可証』の発行を決定したって言うけど、その ID はあるの? IDもない、滞在許可証もない状態ならフランス国内に居ればいいのよ」 
ボクの心の声:おぉ~、ID番号の話になった! IDは書類に書かれているから、その部分の一点突破しかない!

ボク:「確かにフランス語で書かれているけれど、滞在許可証の発行を決定したという書類なんだからそれは間違いないし、この書類の「ここ」に ID 番号振られているじゃない。 ボクが持っている正式な滞在許可証の ID 番号と同じ桁数でしょ。 だから、滞在許可証はすでに発行されているのだけれど、正式な書類の作成が遅れているというだけなのよ。 なので、フランス当局は彼女がフランスから、しいては欧州圏から外にでることは認めているという事なのですよ。」
と、自分の言っている内容は間違っていないのだけれど、現物の紙の書類がないのがなんとも致命的だなぁ~と思いながらも書類の内容の話に集中して必死で食い下がるボク。

係員:「そんなこと言うなら、フィンランド経由しないでフランスから直接日本に良かったじゃない。なんでフィンランド経由にしたのよ。 そんなことしたら問題になると思わなかったの?」
ボクの心の声:これまた、確かにその通り。 ただ、フィンランド経由が安いんですよとも言えずに・・・

ボク:「航空券予約したらたまたまフィンランド経由になっただけで、こっちだってフィンランド経由にしたくてしたわけじゃない。 そもそも、フィンランドに入国しなし、欧州圏から外に出るというだけだから問題ないでしょ。 さっきも言ったけど、ID はすでに発行されてるんだし・・・」

係員:「ちょっと、担当に聞いてみるわ・・・・」
ボクの心の声:おぉ~! もしかしたら何とかなるかもぉ~・・・

この段階で、向こうも根負けしたのか、はたまた、「こいつらをここで差し止めても余計に厄介なことになる」と思われたのか、態度が多少軟化してきた感じがした。
確かに、日本行の飛行機に乗ろうとしている日本パスポートを保持した日本人をヘルシンキに無理やり足止めさせても担当者の彼女にしてみても、また、フィンランドと言う国にしてみても何のメリットもない。
「フランスの正式な滞在許可証を有していない日本人を、フランスから日本に旅行させ、また日本からフランスに戻らせる なんてことは、フランスと日本の間で考えればいいことで、私の知ったこっちゃないし!」と、彼女と電話の向こうの担当者が思ったのかどうかは定かではないけれど・・・、3分ほど電話で現地語で話をした結果、パスコンを通過できることになったようである。

係員:「ここ Helsinki に留まる訳じゃないからここを通すけど、日本から問題なくフランスに戻れるかどうかは知らないし、多分問題になると思うわよ」とのこと。
ボクの心の声:このパスポートコントロールを通過できれば、とりあえずはそれでOK! その先は日本(母国)なので何とかなるし、最悪、彼女が日本からフランスに戻れなくても、フランスから日本に戻れないよりははるかにましなので、それはその時に考えればいいや

ボク:「色々とご面倒をおかけしました。 また、いろいろと対応ありがとうございます。 わかってもらえてうれしいっす。」 
係員:「残りの道中気を付けてね、Good luck!」
ボクの心の声:そうねぇ、確かにこの先のことは「Good Luck」だわなぁ。 日本への入国はできるけど、フランスに戻れるかどうかは微妙だなぁ~

と、やっとの思いで(欧州圏からの)出国が完了した。
いやぁ~、どっと疲れたのと、なんとも妙な達成感を感じたボクなのでした。
にしても、ヘルシンキからパリにトンボ返り なんてことにならなくてよかったと心の底から思った今日この頃なのです。
そのあと、搭乗待ちの間に飲んだビールのうまかったこと!

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