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389. 「性自認」の定義・意味は極めてあいまいなんですか?

私はあいまいではないと思います。

なぜなら、すでに厚生労働省の文書で「性自認」とはなにかという定義がなされているからです。

たとえば、職場におけるパワーハラスメント対策を義務だとする文書では、代表的な言動の類型として「精神的攻撃」をあげ、該当すると考えられる例として

①人格を否定するような言動を行う(★1)(相手の 性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を含む。 (★2)

『職場における ・パワーハラスメント対策…』厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)

また、同じ文書の6ページには、「コラム」として次の記述があります:

「性的指向」「性自認」とは?
○ 恋愛感情又は性的感情の対象となる性別についての指向のことを「性的指向 (Sexual Orientation)」、自己の性別についての認識のことを「性自認(Gender Identity)」といいます。性的指向や性自認は全ての人に関係する概念であり、その 在り方は人によって様々です。男性に惹かれる人・女性に惹かれる人・どちらにも惹 かれる人・どちらにも惹かれない人と、恋愛対象は人それぞれですし、「自分は男性 (又は女性)」と思う人もいれば、「どちらでもない」や「どちらでもある」と思う 人もいます。 性的指向や性自認への理解を深め、差別的言動や嫌がらせが起こらないようにする ことが重要です。

『職場における ・パワーハラスメント対策…』厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室),太字は引用者による

なにもあいまいなことはありません。厚生労働省の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)は「自己の性別についての認識のことを「性自認 (Gender Identity)」というと定義しています。

この記述が「あいまいだ」というのであれば、「性自認に対する侮辱的な言動」をパワハラだと言えなくなってしまいます。

また、外務省では2022年6月28日に発表された「G7首脳コミュニケ」で
「性自認」という言葉を使っています:

ジェンダー平等の達成は、我々が強じんで包摂的な民主的社会に向け努力し、また、世 界中での権威主義の高まり並びに女性及び女児の権利に対する反発に対抗するために、不 可欠である。我々は、女性と男性、トランスジェンダー及びノンバイナリーの人々の間の 平等を実現することに持続的に焦点を当て、性自認、性表現あるいは性的指向に関係なく、 誰もが同じ機会を得て、差別や暴力から保護されることを確保することへの我々の完全な コミットメントを再確認する。

「G7首脳コミュニケ」2022年6月(太字は引用者)

ちなみに「コミュニケ」とは

各国政府間の国際会議や首脳会談などで、会議や会談の経過および結果について文書で行う公式声明。

日本大百科全書(ニッポニカ)

G7の首脳が公式見解として発表した内容に「性自認」という言葉が使われているということは、この言葉の意味があいまいなものではなく、定義も定まっていないものでもないことを示しています。


参考資料

厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)2022「職場における ・パワーハラスメント対策 ・セクシュアルハラスメント対策 ・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策 は事業主の義務です!

三菱UFJリサーチコンサルティング 2020「多様な人材が活躍できる 職場環境に関する企業の事例集 ~性的マイノリティに関する取組事例~」(令和元年度厚生労働省委託事業)

外務省「G7首脳コミュニケ」(2022年6月28日)

画像:UnsplashSven Brandsmaが撮影した写真