370. 日本がLGBT後進国というのは本当だろうか?2022年に殺害されたトランスジェンダーはアメリカ51人、ヨーロッパ14人。LGBの殺害を入れたらもっと多い。翻って日本はトータルで0人だ。LGBT法はあるが年間100人近くが殺される国と、 LGBT法はないがほとんど殺されない国のどちらが幸せだろうか。
前回に引き続き、松浦大悟(日本維新の会 秋田1区支部長)さんのツイートを引用させていただきました。
このツイートは2023年3月16日になされたもので、3月22日時点で1,119件のリツイート、44件の引用、2,424件のいいねがなされています。影響力のあるツイートだと思います。
前回同様、この主張を表にまとめます:
この議論はLGBT法の有無がトランスジェンダーの殺害と関連づけられていますが、果たしてそれだけでよいのでしょうか。
欧米(特にアメリカ)と日本では社会システムも異なりますし、宗教文化的背景も異なります。
命が奪われるということは日本ではないとされていますが、例えばいじめや嫌がらせなど精神的に追い詰められて自殺するLGBTの数はどうなのでしょうか。
LGBT法があり、差別禁止が公的な約束事となっているからトランスジェンダーの方がきちんとした仕事に就けるということがあります。
一方、日本ではトランスジェンダーであることを理由に採用されない(面接で断られる)、仕事に就けないということがあり、トランスジェンダーの貧困が問題になっています。(注1)
またアメリカは銃社会です。abcNEWSの記事によると、2017年に29件だったトランスジェンダーの殺害件数が2021年には56件と約2倍になっているそうです。そして、殺害の手段の73%は銃によるものだったとされています。
加えて、アメリカ社会での犯罪率がもともと高いということも考えなければなりません。外務省のウェブサイトから引用します:
もともとアメリカは「犯罪発生率が日本よりも格段に高い」のです。
そして、(繰り返しになりますが)LGBT法があることで差別禁止が明文化されている。
トランスジェンダーだからといって面接で落とされることはありません。また正規社員(職員)として働く機会が日本よりも多いぶん、人々の目にトランスジェンダーの方の存在が可視化される機会も多くなります。
可視化されることによる負の面は、トランスジェンダーの方に敵意を向ける(嫌悪感を露わにする)人もそれだけ増えるということです。それが犯罪の要因になっていると考えることもできるでしょう。
しかし、日本で同じようにLGBT法ができたからといってトランスジェンダーに対する犯罪が増えるとは言えません。
さて、上で示した表の中に「幸福度」の項目を入れましたが、これは松浦さんがツイートの中で「どちらが幸せだろう」と述べていらっしゃるからです。
犯罪率の高さは「幸せ(幸福)」の問題ではなく、「安全」かどうかの問題です。
犯罪率が高いアメリカ社会は安全ではない、ということができるでしょう。
一方、日本は個人の銃の所持が禁止されていますから、銃による殺人事件が少ないという意味では「安全だ」と言えると思います。
また、LGBT法によって差別が禁止されているから、安心して暮らせるという側面もあるかもしれません。
同時に、同性婚が認められている欧米では幸福度も上がるでしょう。
まとめ:
1 LGBT法の有無と犯罪率の高さは分けて考えなければならない。
2 アメリカは銃社会で、トランスジェンダーの殺人事件でも約7割で銃が用いられている。
3 LGBT法により差別禁止が明文化されている分、性的マイノリティが可視化される度合いも高くなる。それに嫌悪感情(ヘイト犯罪)もそれだけ高くなる可能性がある。これは「可能性がある」というだけで、犯罪が増えると決まっているわけではない。
4 LGBT法の有無、トランスジェンダーの殺害件数と「幸せかどうか」は関係がない(「安全性の問題」だから)
みなさんはどうお考えになりますか?
(注1)西原さつきさんは対談の中で次のように語っています:
参考資料