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426. カミングアウトする側には色々事情があるでしょうが、カミングアウトされる側は迷惑です。おまけに、他の人にそのことを話してはいけない(=アウティング禁止)ということまで言われるなんて、本当に迷惑でしかありません。それについて当事者はどう考えているんでしょうか?

本日、10月11日は「カミングアウトデー」です。過去の記事でも何度かカミングアウトについて触れてきました。

カミングアウトは、LGBTQ+の当事者にとって非常に個人的で感情的なプロセスです。また、カミングアウトを受ける側も様々な感情や反応を持つことは十分理解できます。

ここでカミングアウトに関する一般的な考え方や背景をまとめておきましょう。

カミングアウトの意義:多くのLGBTQ+の人々は、自分らしい人生を送るため、また親しい人々との関係において誠実でありたいという願いからカミングアウトを選択します。

自分の本当のあり方を語ることで、理解やサポートを得ることが期待されます。

アウティングの危険性:カミングアウトされる側がその情報を他者に伝えること(アウティング)は、当事者にとって様々なリスクを伴います。

家庭や職場での誹謗・中傷、差別、暴力、疎外感、経済的なリスクなどが考えられます。

信頼の問題:カミングアウトは、当事者と相手との間の深い信頼のもとで行われることが多いです。

その情報を守ることは、その信頼関係を尊重することにつながります。

迷惑だと感じる感情の背景:カミングアウトされる側が迷惑を感じる感情は、様々な要因からくるものだと考えられます。

それは、自身の価値観や信念、社会・文化的背景、知識や経験の有無などによるものでしょう。

また、突然の情報に対する驚きや、それに対する適切な反応の不安も影響しているかもしれません。

対話の大切さ:上で「カミングアウトは、当事者と相手との間の深い信頼のもとで行われる」と書きましたが、その一方で見方を変えるとカミングアウトは、当事者と受け取る側との間の対話の開始点とも言えます。

あなたが迷惑だと感じる感情を持つことは自然ですが、迷惑だという感情は相手に否定的な態度をとることにつながります。

すると、そこで当事者とあなたとの間のコミュニケーションが閉ざされてしまいます。

あなたを信頼し、自身との関係をより深いものにしようと思っての行動が裏目に出てしまう結果となることで当事者は深く傷つくでしょう。

逆に当事者はカミングアウトの際、あなたの感情や立場を尊重する必要があることは言うまでもありません。

あなたのように「迷惑だ」と感じる人が一定数いる以上、よほどの信頼関係がない限り当事者としてはカミングアウトに慎重にならざるを得ません。

このようにカミングアウトは「する側」にとっても「される側」にとっても難しいプロセスであることは間違いありません。

あなたが「カミングアウトは迷惑だ」と感じることは誰も否定できません。
「おまけに誰にも言うな(=アウティングするな)というのは迷惑でしかない」と感じることもあるでしょう。

しかし、です。

あなたが「迷惑だ」と感じる可能性は少ないだろう、これからのあなたとの関係を考えて自分のことを知ってもらいたいと思っている人からカミングアウトされたということは、上に書いたようにあなたが信頼に値する人だと思われているということです。

そのように信頼を寄せてくれた人を無碍に扱ってよいとは思えません。

そのためにも、私たちは性的マイノリティについての知識を持っておく必要があるのだと思います。

「自分の当たり前」が「当たり前」ではない人たちがいるということ。それは性的マイノリティだけに限った話ではありませんが、そういった人たちも同じ国、同じ県、同じ街で懸命に生きているということを私たちは知っておく必要があると思います。

人は誰でも生きていれば他人に迷惑をかけることがあります。

「私はそんなことない!」という方でも、(自分では覚えていなくても、)赤ちゃんの時に公共の場で泣き止まず、周りの人たちに迷惑だと思われていたことがあるかもしれませんね。

もしあなたが本当に「迷惑だ」と思うのでしたら、カミングアウトしてくれた当事者に、「話してくれてありがとう。話してくれたのは私を信頼してくれたからだと思うけれども、その信頼には応えられないんだ。今の話は聞かなかったことにするね。でも誰にも言わないよ」と言ってあげてください。

そして、そのことは本当に誰にも言わないであげることが最低限のマナーだと思います。


画像:National Gallery of Art, Ernst Ludwig Kirchner,
Conversation, 1929. Gift of Ruth Cole Kainen