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元指導員のリアル教習所#3     「曲がる」その1

1.曲がるということ

 多くの教習生にとって最初の壁にもなるし、うまくできることによって達成感が味わえるし、車をコントロールする楽しさを最も感じる要素だと思います。
 まず、曲がるという事に構えすぎないことが大事。「よし!曲がるぞ!」なんていう気負いは全く必要ないし、実際、運転席の友達がそんな雰囲気でやる気満々だったら引きますよね。これまた単純に、自分が行きたい方向にさえ安全に進めていれば正解です。
 しかしながら、基本操作でありながら最初につまづく生徒さんが多いのは現実で、なるべく早い段階で感覚をつかんでストレスなく曲がれるようになっていただきたいのは間違いありません。

2.○○を気にしない

 あくまでも基本的な運転操作を前提としますが、「曲がる」については「どうやるか」よりも「なにを気にしないか」を意識した方が自然な上達につながりやすいと思います。

 ① 線は気にしない
 ② 車の向きを気にしない
 ③ ハンドル量を気にしない
 ④ タイミングを気にしない

 これらの要素にとらわれすぎて、なかなか上手くいかない生徒さんが非常に多かったと思います。むしろ指導員からこれらを意識するように促されるケースも少なくありません。
 これらは、上手く曲がりたいと思う教習生の立場だからこそ意識しがちな「錯覚」といえるポイントで、慣れたドライバーの日常の運転ではほぼ意識の向かないポイントだと思います。これらの教習生ならではの勘違いの沼から抜け出せると、運転が飛躍的に楽になり、自分の意のままにコントロールしている感覚が強くなってきます。
 実際そんな教習生にはたくさん出会ってきました。

3.線は甘い罠 

  まずは「線を気にしない」。
 主に右カーブでの話になりますが、「内側の線に合わせて曲がる」というイメージで曲がろうとする教習生がほとんどです。「何が悪いの!?」と言われそうですが、上手曲がれない原因の代表格と言ってもいいでしょう。

 内側の線を意識して車を合わせるように曲がろうとすると何が起こるでしょう?

 「内側によりすぎる」「場合によっては気付かないうちに対向車線にはみ出している」こんなことが起きがちです。これは、生徒さん自身も気が付いている場合が多く、「こうしかならないですよね!?しょうがないですよね!?」という感覚だと思います。当然、良い運転ではないし、しょうがなくもないです。また、この点については指導員の中にも妥協している者も割と多いと思います。

 なぜ、こういう現象が起きるのでしょう。自分は綺麗に曲がるために合わせようとしているだけなのに…。

 それは「曲がることは片側に合わせる行為ではない」からです。道路には右側と左側、内側と外側が必ず存在します。その中の右側だけ、内側だけを意識すれば当然そこを頼りによって行くしかできなくなるのです。・・・気持ちはわかりますけどね。だって、線に沿わせれば上手く曲がれる感じがしますもん。

 運転は「バランス」が大切です。
 外側と内側の間のバランスが良い、一番安全なところを走行するのです。一応「やや左より」というルールはありますが、バランスが取れてこそそこを意識できるのだと思います。
 カーブでもそれは変わりません。内側の線から意識が外れることによって行先の道路全体を視界にとらえることができ「あれ!?こんなとこ走っていたはずじゃないのに!?」と思う生徒さんは少なくありません。それで初めてバランスが取れる運転になります。

4.まずは気にしないこと

 「じゃあ、どこを見るんですか?」という質問は飽きるほど聞きました。その答えは、全部の気にしない項目を終えてからにします。…おそらく、線を気にしなくなった時点で答えは出ると思いますが…。
 とにかく、線は甘い罠です。わかりやすそうだけど上手くいかない大原因です。私は「毒」という表現をよく使っていました。…なかなか抜けないんですよ。
 教える側にも「カーブよく見て!」とか「曲がり具合よく見て!」と言う表現を使われる指導員は非常に多いと思います。その表現で生徒さんが線を意識するようになったとすると、指導員として大いに勉強不足と言わざる負えません。確かに、具体的でわかりやすい表現に感じますが、嘘を教えているといっても過言ではないと思います。

 間違いなく日ごろから運転しているドライバーが線をじっくりと注視することはまずありません。見るとしても視界の中で見えている、とらえているだけです。


 長くなったので、その他の3つの気にしないについてはまたの機会にします。

 


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