「リクルートのすごい構創力」を読んで

以前読んだ本の中で著者が勧めていたため、試しに読んでみることにした本。
リクルートの方とお仕事をすることもあり、彼らの優秀さには舌を巻くことも多い。
そんな彼らの思考の枠組みや行動特性、それを会社としてどう実現しているのかを細かく解説されており、一人の天才が出す成果というよりは、組織として凄まじい力を生み出す仕組みがよくわかる。
解説の切り口はリクルートの新規事業立ち上げに関わるものではあるものの、こうした取り組み自体は新規事業に限らず必要だと思う。
リボンモデルを軸にした事業の考え方、勝ち筋やKPI、ぐるぐる図といった要素は普段の仕事でも大切なことだと思えるため、意識的に取り込んでいきたいと思う。

以下、詳細の読書メモである。

• リクルートの圧倒的な強さやユニークさは、0→1よりも、生まれた事業をすケールさせる1→10の段階にある。多くの企業と違い、0から1を生み出すことだけに価値を見出してはいない。
• リクルートの代表的なリボンモデルの優れたところは、そもそもの事業の目的を、単に自社の売り上げや利益を追求するためのものにとどめないところ。リクルートの事業とは、取り巻く様々なステークホルダーが抱える不満や不安を解消するためのもの。

序章 なぜ、あなたの会社の新規事業はうまくいかないのか
• 新規事業がうまくいかない会社の共通点は、意思決定のやり方が間違っていること。
①PDSサイクルのPに時間をかけすぎる
 新規事業の成功には、数とスピードが不可欠。Plan Do Seeサイクルを徹底的に高速で回すことが必要。
②計画が変えられない
 より成功確率の高い事業を作ることより、計画通り遂行することを優先してしまう。また、「これだけ人とお金、時間をかけたから」という思いがあるため、途中でやめられなくなってしまう。
 新規事業開発において計画を柔軟に軌道修正できないことは、時に致命的。
③時間をかけて計画を立てる割に、ツメが甘い
 どのような条件を達成したら、次の段階に進むか、撤退するかを決めずに走ってしまう。また、成功確率が高く見える楽観的な計画をつくりがち。
 結果的に誰もがうまくいっていないことを認めながら惰性で続くことがある。
④当事者も、経営者も本気でない
 上がったアイデアをブラッシュアップする、新規事業を創出できる人材を育てる、という発想がない。経営者の姿勢が要因となり、当事者自身も本気になれない。
⑤うまくいかなかった時、撤退の決断ができない
 どのような状態になった時に撤退するのか、誰がその判断をするのか、あらかじめ決めておかないと、うまくいっていない事業をずるずると続けてさらに傷を大きくしてしまいかねない。

• リクルートの新規事業開発を支えるコンセプト
・PDSのPの段階で、どう成功させるかではなく、何を検証するかに議論を集中させ、テストマーケティングを行う。DしながらSも行い、並行してPも修正していく
・PDSの期間の単位は週や月だけでなく、日単位もある
・事業を生み出す0→1だけでなく、事業をスケールアップする1→10の段階にもノウハウがある
・ボトムアップによる新規事業開発をやるとトップがコミットする。ある段階まできたら予算くみと権限を新規事業開発のトップに移す。
・うまくいかない事業はスパッと撤退することを、どの事業に対しても厳格に行う
・アイデアを出してチャレンジすることが称賛される文化があり、失敗しても致命的なマイナス評価にはならない

• リクルートのリボンモデル
・左側がカスタマー(消費者)、右側がクライアント(企業)。それぞれを集め、働きかけを行うことで行動変化をさせて動かす。中央のマッチングポイントで両者を結びつける、という考え方。
・この結び目が大きいほどマッチングの総量は大きくなることが、出会いの多さになり、価値が大きくなる、ということ。
・結び目を大きくするためには、左右両端のリボンの幅を広げるか、マッチングプロセスのロスを少なくすること、後は結び目に至る減衰を抑える(コンバージョン率を最大化する)ことが必要。
・基本的にこのリボンモデルは、世の中の全ての事業に当てはまる。
・失敗事例の大きくは、「リボンの片側しか見ていなかった」ことが要因と思われる。

• 3つのステージと9つのメソッド
1.0→1 世の中にまだ存在していないモデルを生み出すステージ
 メソッド①:不の発見
 メソッド②:テストマーケティング
 メソッド③:New Ring アイデアを事業に育てるサポート
2.1→10 アイデアから事業に成長させるステージ
 メソッド④:マネタイズ設計 圧倒的な収益を獲得するためのモデル設計
 メソッド⑤:価値KPI 勝ちにつながる行動や指標を特定する
 メソッド⑥:ぐるぐる図 PDSを高速に回しながら、勝ち筋を探る手法
3.1→10後半 勝ちすじやKPIを実行し、爆発的な拡大再生産につなげるステージ
 メソッド⑦:価値マネ 価値KPIに基づき、拡大させていく
 メソッド⑧:型化とナレッジ共有 価値マネを実践するための行動を型にして共有
 メソッド⑨:小さなS字を積み重ねる 現場で掴んだ兆しを吸い上げる

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