那智勝浦町昔懐かし話 第22話

第22話『餅まき好き好きおばちゃん』
 
21話から少し間が空きましたが、まだまだ書きますよ。22話です。
 
「タケちゃん、明日の1時から桟橋のとこで餅まきあるんやて。お母ちゃんにゆうたって。」「うん、おばちゃんおおきに。」隣のおばちゃんが通りがけに明日の餅まきを教えてくれた。「お母ちゃん、隣のおばちゃんが、明日1時から桟橋のとこで餅まきあるゆうてたで~。」「ほんまか。隣のおばちゃん、餅取りの名人やさかなぁ~。」そういう家のお母ちゃんもなかなかのもんやと思う。
今は無くなってしまったが僕の小学生頃はまだマグロ船の船首のおっちゃんも町内に多く結構頻繁に餅まきが桟橋のところ等で行われていた。勝浦の餅まき(餅ほりとも言うが、大量にまくので餅まきと言う方が合っていると思う)は、新しくマグロ船を造船したときはもちろん、家を新築したときは、家主らが家の屋根上から大量に餅をまく。マグロ船の場合は、船の上から岸壁に集まっている餅まき大好きおばちゃん達の固まりに向かってまく。まく餅も白や赤というかピンクの餅、気前が良ければその餅の中に50円や500円、5円が入っている。大きさも小さいのからCD位の大きさまで様々であった。そして餅まきの情報は瞬く間に旧勝浦町内を伝わりゆく。僕は観光の仕事をやっているので、イベント等で餅まきをやるのだが、餅まき命のおばちゃん達は昔も今も時間に厳しく予定より早く行うなんてもってのほか、5分遅れようものなら苦情の嵐である。それだけおばちゃん達は必死である。と言うわけで翌日僕とお母ちゃんは、1時前に観光桟橋の所へ出かけた。新しい船には、大漁旗が飾られ岸壁には、まるで背中に「餅まき命」と書いているようなおばちゃんやおいちゃんがわんさかいた。おばちゃん達は、みんなエプロンをしている。プロはほとんどその場から動かない。自分の縄張りを持っていてその縄張りに入ろうものならただですまない。おばちゃん達はエプロンの両端を持ちその中に自分の方にまかれた餅を拾うのである。いや、拾うのではない。かき取るのである。船首達に向かって「おいさん、こっちやで~。こっちほらな後で怖いで~。」とおばちゃんたち。船首たちはそこめがけてほらなしょうないがな~。そんなこんなでプロのおばちゃん達は毎回何十個と餅を持って帰るのである。だからあんなにぶくぶく太ってるんやろか。
えっおまえはどうなんやって。僕は10個がやっとだった。お母ちゃんはセミプロなんで、結構拾っていた。帰り際お母ちゃんは「明日から1週間おやつ餅やで~。」そんなせっしょうな~。                        第22話終わり
 
 
 
 


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