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COP26の成果は、Green Washing?

11月13日、COP26は成果文書の記載事項について難航したが、どうにか採択され閉幕しました。どういう主要な成果があったのでしょうか?

1)「1.5度目標」に向かって努力する事が明記されました。パリ協定では、「産業革命の気温から2℃以下、出来れば1.5℃」と謳われていました。しかし、COP26の前に各国から提出されたNDC(Nationally Determined Contribution)による削減目標では、気温上昇が2.7℃程度になってしまい、到底2℃や1.5℃にはならないということで、色々な議論があったようです。

その結果、今回のグラスゴーでは「1.5℃目標」が正式に文書に記載されました。これが、私どもにとっては一番わかりやすい成果かも知れません。

この目標も具体性がなく、各国がどのようにして削減していくのかについても明確ではないので、本当の意味でCOP26の成果と言えるのか疑問です。

2)「石炭火力の段階的な削減」が明記されました。議長国の英国は、CO2を大量に排出する石炭火力の「段階的な廃止」に固執していましたが、米国、中国、インドなどの産炭国との間で激しい議論がありました。最終的には、発電コストの安い石炭火力を主要電源とするインドの代表が、石炭火力の廃止を強硬に反対した結果、「段階的な削減」という表現で妥協が成立したと言われています。

3)南北問題、先進国は2050年ネットゼロ、2030年にGHG50%削減についてNDCを提出しており、ほぼ足並みが揃っていたようです。一方、途上国は、『「2020年までに先進国が毎年1,000億ドルを支出して、途上国の気候変動対策を支援する」となっていたが、これができていない』と文句を並べるばかりであったとのことです。

世界最大のCO2排出国である中国は、COP26などの国会議では「途上国」の立場で発言しますが、2030年のピークアウト、2060年のネットゼロを主張するだけで、野心的な目標を提示したわけではありません。また、新たにネットゼロを示したインドの目標年は、2070年となっていました。

中国は、日本の9~10倍のCO2を排出しており、「中国製造2025」という国家目標もあるので、暫くは大量のエネルギーを消費し続けることでしょう。日本が、10年間頑張って削減しても、中国の1年間の排出でチャラになってしまいます。気候変動の現実は、こういうところです。

ボリビアの交渉官が、「先進国が脱炭素分野でも途上国を植民地に使用としている」と言ったとニュースに出ていました。

このように地球温暖化対策を巡って、途上国と先進国の対立の根は深く、歩み寄る余地はなさそうです。COP26で集まって議論すれば解消できるような内容ではないことが、改めて明らかとなりました。

4)グリーンウォッシュとの厳しい批判も出ています。COP26に参加したNGOなどからグリーンウォッシュ(Green Washing:表面上取り繕う)という言葉が聞かれています。地球温暖化対策に積極姿勢を強調しても、実際にそれを達成できるめどは立っておらず、他国からの批判をかわす一時しのぎの対応になっているとの批判です。

結局のところ、途上国は「先ずは先進国が1.5℃目標を達成して、その後途上国を支援すべき」だと主張しています。途上国に比べ、先進国には経済力、技術力などがあるからの主張です。しかし、1.5℃目標を達成する技術は実現しておらず、技術開発、実証、普及といった段階を経ることになります。

即刻1.5℃を実現する事は土台不可能なことです。COP26が喧伝するように、CO2を排出する化石燃料やエネルギーを使わずに、技術開発をするのは容易ではありません。

それには、時間、お金、情報、人材、装置・機器などが必要となります。莫大な資金の投入が必要となります。潜在的な成長はあると考えられますが、暫くは儲けにつながらず、多額の利益が出るというわけにはいきません。途上国に支出をするような余裕はないというのが率直な感覚です。

先進国の技術開発などの対応策も、経済成長という裏付けがあってできる事です。経済成長が必要条件となります。途上国についても、今のような貧困をはじめとする社会政治的な問題を続けていくわけにはいかない。国が豊かになっていく、それが必要条件でしょう。

そのためには、 “ensure access to affordable, reliable, sustainable and modern energy for all" (SDGs 7)、手頃に使う事のできるエネルギーが不可欠です。当面、石炭がそれに該当します。

COP26が喧伝するように、化石燃料やエネルギーを使わないというのでは、途上国の未来はありません。化石燃料を利用し続けながら豊かさを求めていく、一方で、先進国を中心として、未来像を描きながら、技術開発などの対策にも取り組んでいく。これが合理的なアプローチだと思われます。

COP26のホスト国であった英国ですら、厳しい冬を迎えるに当たって、発電事業者などは、有効な風が吹かないと発電しない風力発電ではなく、「石炭頼み」というのが現状のようですから...



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