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ドイツのエネルギー大失態

ミュンヘン大学経済学部名誉教授ハンス・ヴェルナー・シン氏が、ドイツのエネルギー問題に関して論じたものです。

Germany's energy fiasco | Jordan Times

ドイツの政策立案者は、エネルギー供給をすべて再生可能エネルギーでまかなえると考え、石炭と原子力を同時に廃止することを決議した。しかし、ウクライナ戦争が起きた今、ドイツのやり方が、いかに政策的な失敗を招いたかを、世界は目の当たりにしている。

ドイツは、断続的な太陽光や風力発電をバックアップするために、ガス火力発電所を大量に増設することを決定した。ドイツの天然ガス需要の半分以上をロシアが供給している。新しいパイプライン「ノルドストリーム2」は、
ロシアからのガス輸入を増やすために建設したものだが、現在、そのパイプラインは停止している。

ロシアのガスに過度に依存することは、今やドイツだけでなく、西側諸国全体にとって安全保障上のリスクとなっている。西側諸国がロシアにさらなるエネルギー関連の制裁を加える可能性も限られている。

現在、ドイツでは、風力タービンや太陽光発電パネルが多く点在しているにもかかわらず、2021年のドイツの総エネルギー消費量に占める風力・太陽光発電の割合はわずか6.7%である。プーチンを圧迫するためにロシアのガス輸入を停止すれば、ドイツ経済も、息の根を止められる。

もしロシアがドイツへのガスを停止したら、ドイツ国民の半分、約4000万人が依存しているガスによる家庭用暖房システムや、ガス輸入に大きく依存している工業プロセスが、代替エネルギーが利用可能になる前に崩壊してしまうだろう。ガスが使えなくなったり、暖房費が高騰したりすれば、政府は経済的混乱、国民の反発、憤慨に耐えられなくなるだろう。実際、国内の混乱が予想されるため、ウクライナ戦争に対する西側諸国の対応に疑問符がつくだろう。

ドイツのLNG基地が、ロシアの供給するガスを世界の他の地域からのガスで代替できるようになるのは、もっと長期、例えば3〜5年後である。しかし、その頃には、ロシアは中国やインドなどアジア諸国への新しいパイプラインを建設しており、ドイツが利用する筈だったガスを購入して燃やすことになるのだろう。

したがって、短期的にも長期的にも、西側諸国はガスパイプラインを遮断することによってロシアを困難に陥れることはできず、自分たちも同様に困難に陥れることになる。


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