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夢にまでみたような世界は ~湯木慧ワンマンライブ2021「拍手喝采」~

2021年06月05日、湯木慧ワンマンライブ2021「拍手喝采」日本橋三井ホール。

終わった後にみえた、達成感と充実感と未来への希望が溢れたような笑顔。
これからどんな未来を創り、歩いていくのだろうと思ったライブの話。


先に書いておくと、、

当日バタバタとしていて、ライブ時間に間に合いそうになかったので翌日アーカイブでみたのだけれど、みる前にツイッターを開いてしまって。
ちょっとしたネタバレを、ちらちらーと眺めてしまった。
人の性というか、止めればいいものを、ふふーん、とスクロールしたのがいけなかった。
ライブ見始めてから、あぁ…あぁ…と納得したり、空気で読めてしまうところがあって、観終わってから後悔した。
やっぱりライブはライブなんだよ。生ものなんだよ。その一瞬に煌めいて、はかなく消えて、だから想い出になるんだよ。アーカイブとか配信はやっぱり体験がないから薄れてしまうだよなぁ、とか思う。


ライブの音が鳴り始める前に

そういえば…、と思いながら2020年のことを思い出していた。
有観客のライブをするか否かで、防護服を配布したライブは去年だった。

あれからいろんなことがあって、無観客での配信もあったし、ライブと配信両方のライブもあった。
社会状況もめまぐるしく変わっていって、本当にいろんなことがあったけれど、あっという間のように一年が過ぎ去っていたのだなと思う。

生きていたのか、死んでいたのか。
感性が置いてけぼりになっていたのかもしれない、とか物思いにふけっていたら、楠美月さんの声でライブが始まっていた。

ライブのタイトルでもある「拍手喝采」

ライブの始まりって独特の緊張感がある、と思う。
生の感触を観客も演者も探り探りのなかで始まる、あの緊張感と高揚感が創りだす、うねりの空間。
このご時世の中で、さらに加速するうねり。
そして、バンドスタイルで生み出される生の音の情報量。
生きているなぁ、なんて思っていたらあっという間に「極彩」へ流れていった。

MCを挟んでの「Answer

始まった瞬間に、思わず声が。
声が出てしまうのは配信だからできること…なんて。
事前情報でわかってはいたけれど、視覚からの情報量。
ダンサーさんが舞台の上で創りだす世界と、バンドを含む演奏が創りだす世界が混ざっていく世界。
はぁ…、なんて感嘆のため息すらつかせてくれないほどに、あっという間だった。

スモーク

湯木さんが歌詞に想いを乗せるのに、少し涙を浮かべていた場面では決意とか決断とか選択とかいろんな背景チラチラと見え隠れした。
あと、間奏のギターかっこよかった。


しっとり終わって一息ついた瞬間の、奥村大爆発さんのアグレッシブなドラム。それに呼応するような、西川ノブユキさんのうなるギター。

激しく始まった「網状脈

楠美月さんのアシストかっこいい、と思いつつ、湯木さんの笑顔とか、ドラムの奥村大爆発さんの笑顔が見えた瞬間に、あぁいいチームだと思った。
あぁいう一瞬一瞬に垣間見える、好きな人と演奏している、安心して任している感が見られる醍醐味があると思う。
あと、ベントラーカオルさん、腰大丈夫かしら、とか勝手に思っていた。
あの体勢であれだけの鍵盤の動きって腰にきそう。とても鍛えているのかな…。

各ソロパートがバチバチだったのはもう、たまらない時間でした。

MCを挟んで、幻想的なシンセの音からの「アルストメリア

青い照明の世界の中、どこかおとぎ話の世界に入り込んだような時間。
湯木さんの顔に手を置く仕草、指を魔法ステッキのように振る仕草。
後ろから前から、みえる景色を引っ張っては飛ばしてくる、なんだか幸せが溢れる瞬間がいっぱいいっぱい詰まっていた。

そっとマイクをスタンドへ置くあの一瞬は、まるでなにか大切なたいせつなものを、小さい子が宝物を大事に置きにいくようで素敵だった。
でも、置いた瞬間の音をマイクが拾っていたのは、秘密、ひみつ。
なんだかそこも含めて湯木さんだなぁなんて。

ハートレス

圧倒される表現の世界というか。
キャンベルさんに当たる照明がだんだんと明るくなる中で、現れては変化していく表情。
ただ立っている、のに、そこにいる、という生命の奇跡みたいなもの。
対照的に、暗い湯木さんの姿。
陰と陽みたいなもの。

溢れ出る感情の塊がぶつけられてきた、と思う。

「選択」

“いちばんいけないのは選択しないこと”

椅子にあぐらスタイルの、弾き語りの時間。
湯木さんって、言葉と表情の動きがすごいリアルだと思う。
そういう言葉が正しいかはわからないけれど…。

どこか嘘っぽく話せる人はいるし、言葉と表情がずれる人ってたまにいるけれど、そういう言葉は時々心に届かなくて。

でも、湯木さんの言葉はきちんと自分の中から出てくる言葉で、浮かんでいる言葉を選んで伝えているんだなと感じる。
あの年代で創り手として、このタイミングで出てきた言葉は、きっと若い人たちの言葉を代弁しているのだろうななんて思っていた。

「バースデイ」

少し柔らかい雰囲気のMCの中で触れられた、名前というアイデンティティの話。
柔らかい音の中にある、芯のある言葉を乗せて歌う姿がみえた。

赤色の照明とともに、刺激的に始まった「金魚」

ずっと思っていたけれど、この曲の入り聴いて、リズム隊…ドラムとベースのがっちり感がすごくて。
この曲、よこやまこうだいさんのベースの見どころ多すぎてたまらなかった。しびれていた。
と同時に、ステージに立つ湯木さんがどこか違う人に見えた。
妖艶とはまた違うけれど、少し大人の雰囲気というか。

キャンベルさんとともに登場した車椅子と「追憶」

なにか意味があるんだろうなとずっと考えていた。
車椅子という象徴的なもの。あえて車椅子に座るという行為。
最後に、車椅子が動かされるということ。
なにかを受け継いで、そこにいた誰かを連れて行ったのか、なにかを連れて行ったのか、と最後の笛の音を聴きながら考えた。

等身大の言葉のMCからの「やけど(火傷)」

個人的に冒頭、静寂からのオケとかSF間がたまらなく好きで、なのにばちばちした音があって、勢いのあるドラム、バンドの音が飛び込んできて喧騒間を打ち消しているのがたまらなくて鳥肌ブワーとなっていた。
すごい力強いサウンド、メロディに歌詞。
それなのに、どこか悲しいというか優しいピアノの音やベースの音がある気がして。でも、ギターとドラムの確固たる力強いサウンドに引っ張られる疾走感というか。
あぁ、もう言葉足りない!!というくらいの曲だった。
最後に向かって、ばちばちの感情がぶつかるようなバンドのバトル感が凄まじくて。

息をつかせないままの「一匹狼」

この曲の入りは、もう感情も追いつかなくて。
気がついたら、ダンサーさん3人いるし。
前の「やけど(火傷)」からの流れの中に感じる、歌詞を噛み締めながら、考えながら、ダンサーさんの創りだす世界感と混ざる「一匹狼」を新鮮に感じる。一匹狼でありながら、付かず離れず。集団を率いていく群の狼というか。

"願うだけじゃダメと知ってるから
向かうべき場所がわかってるなら"


すんごくすんごく胸がぎゅっとするような言葉がたくさん届けられたMCから

「一期一会」

言葉の一つ一つ、音の一つ一つにすごいエネルギーを感じた。
ダンサーさんが妖精に見えた。しなやかの中にある力強さ、言葉では足りない想いの具現化。

そして新レーベルの発表。

丸の環に、にょきっと生えたアイコンの”TANEtoNE”
話をしている間、目をそらさず優しく見つめていた楠美月さんとベントラーカオルさんの姿がなんとも言えなくて。過ごしてきた年月とか、信頼とかいろんなことを感じた。

最後の曲「ありがとうございました」

どこかスッキリしたような、重荷を降ろしたような表情と歌声と。
そして、後ろでばちばちに全部を出し切るようにぶつかる、バンドの音。
なぜかみている方も、スッキリしたという言葉で良いのかわからないけれど、胸の奥の何かがすっと消えていくような感覚になった。


結びに。個人的に想うこと

ライブ後にレーベル発足のウェブ記事がすぐ出たのが、Real SoundとSPICEからだった。しばらくしてから、ナタリーからも出たけれど。
きっと関係者席にいたのでは…とか勝手に思っているけれど、良いウェブ媒体だと思う。
勝手な思い込みだけれど、SPICEは、対談形式というか質問を投げかけて時間をかけて丁寧にアーティストの芯に迫っていくのが上手いと思っているし、Real Soundはアーティストを深く理解し、アドボケイトする技術が上手だと思っている。
個人的に好きな媒体が、選ばれていることに少し喜びを感じた。


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TANEtoNEでの発表のなぞなぞとか、ライブ後のしばらくして映画の楽曲提供のアナウンスが公式からあったり、湯木さんは優しいな、と思う。
伏線を用意したり、言葉として時々届けてくれるような気がしていて、そこに少しの遊び心と隠された本音と、奥行きを感じる。

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しかしほんと大手レーベルから独り立ちするって大変だと思う。
思い描いていた世界や、ストーリーもあったと思う。
それこそ、音楽をやめるという選択もあったと思う。

でも新しく自分でレーベルを立ち上げ、作品を創り、届けていく、と決めたことに尊敬の念しかない。
もう一度挑戦する道を、誰かが作ったものではなくて、自分がみつけ創り上げた舞台で、歩いていくこと。

呼吸をするように、作品を生み出す、創り出していく人なんだなとは思っていた。
でも同時に、感受性が高く、世間の動きや人の動きをたくさん敏感に察することで息がしづらくもなるのかもとも思っていた。
できないともがいていたのか、やりたくないと悩んでいたのかは湯木さんしかわからないけれど、創りたい、そしてそれを届けたいという気持ちはいつも変わらず心の奥深くにあるのだろうな、なんて。

だからTANEtoNEが生まれた、と思う。
そして同時に、つくることから届ける、という一連の流れを自分でマネジメントできる人なんだろうなとも。

人によっては、つくることで活躍できる人、届けることで活躍できる人、あるいは両方できる人がいると想う。

自分の活躍できる場所で、自分にあったように活躍していけたら良い。
売れ方だって、有名になる人、知る人ぞ知る人、ある領域に秀でた人、いろんな選択があると想う。
答えは一つでないから、自分が納得した道で、活躍していってほしいなと勝手に願っている。
生活がある以上、理想論だけではいきてけない現実があることも知ってはいるけれど。

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すんごくひっそりと気になっているのは…
声を大にして言えないけれど気になっているのは…

レーベル変わると楽曲どうなるの、とか。
使用料とかどうなるの、楽曲の権利関係は?とか。
映画の曲は…むにゃむにゃ…。
とかとか。

まぁそんな野暮なことは、苔を眺めながら、お茶を飲みながら、適度に聞き流す程度の話の時がいいんだろうね。

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ライブおつかれさまでした。
これまでも、これからも、楽しみにしています。


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