見出し画像

夏の夕どきに開かれた化け物たちの宴の話〜ROTH BART BARON "BEAR NIGHT2"〜

多分この先、何度もこの光景を折に触れて思い出すのではないかな、と思った日のこと。

2021年07月23日

2020に開催されるはずだった五輪が延期され、開催されるのかどうかも含めて検討される中、様々なことが起こり、なんだかんだで迎えたその日。

その日に、ROTH BART BARONは、”BEAR NIGHT 2”を開催した。
開催までのSNSでのつぶやきや、某CMのA_o、直近で公開された楽曲「鳳と凰」の流れから、あえてこの日にぶつけてきたような気がしていた。

この社会的状況もあって残念ながら現地へ観にいくことはできなかったけれど、とても素敵なもので、観終わった後はうまく感情が処理できなくて、多分この先この光景は何度も思い出すのだろうなとふと思った。

あの日は五輪の開会式の日でね、その裏に熱い想いが込められた祝祭の祭典が開かれていてね。なんて話をする日が来るのかもしれない。

来て欲しい、と願っている。

ROTH BART BARONの音楽に出会ったのは、2016年頃だったと思う。

その当時はレコードが人気が再燃しちょうどブームがピークに来ていた頃で、例に漏れず自分もハマっていた。
また、Spotifyというストリーミングの形が世界的に有名になってきていた時でもあった。

そういえば、当時行きつけだったレコード屋さんに三船さんが自転車で訪れていたなんてこともあった。

今でも後悔している思い出で、なぜあの時買わなかったのかと思いだすことがあって。
某有名なCDショップが閉店する時にセールを開催していて、その一つにレコードの棚があった。
パラパラーっと何か良いのはないかな、と探していく中、いくつもの有名どころの名前が書かれたジャケットに埋もれるようにして、一枚の目を奪われるジャケットがあったのを覚えている。

「化け物山と合唱団」

聞いたことない名前だな、と思ってその時メモをするだけで帰ってしまった。Spotifyのヘビーユーザーとなっていた自分は、家に帰ってからそのアルバムを調べて聞いてみた。

スモーキーのような壮大なスケールのサウンドの中に、燃えるような想いとしっかりと足を踏みしめて歩いていくようなリズムや歌詞が素敵で、ハマってしまい、他の配信されていたアルバムも聴いた。

密かなファンとなり、こっそりと隠れるようにいつもの電車の中で聴いていた。良いものを見つけると、誰にも教えたくなく、自分で楽しみたくなるの良くないなと思うけれど。

それから何年も経ち

ドラムの中原さんが脱退するというニュースを見た。
そうか、一つのバンドの形が終わり、また新しい形で始まっていくのかと思ってその言葉を見つめていた。

そのころは社会的状況が変化をしていた頃で、"けものたちの名前" のライブツアーが延長し、"極彩色の祝祭" のライブツアーの話が同時進行しているという状況でもあって、複雑な世界線だった。

"けものたちの名前" の、めぐろパーシモンホールの公演は、ありがたいことに、本当にありがたいことに、ライブ配信がされた。
現地に行くことができないけれど、何としても、この公演だけは目に焼き付けておきたかった。

いろんな意味で過去と今と未来が、ぶつかりあう公演。

あの時、自分の中で何かが終わって、何かが始まった。
そんな気がした。

三船さんと中原さんは、もうそれぞれの道を歩んでいる、そしてROTH BART BARONとしても次のステージへ向かっている、そんなことを感じた。

あの公演の後「極彩色の祝祭」をもう一度きちんと聴きなおした。

ただ、なんとなくというか、どうしてもというか。
心のどこかで、過去の懐かしさを抱えながら聴いてしまう自分がいて。
それがとても申し訳なくて。

今を歩いているROTH BART BARONの音楽に申し訳ない気がして、なんだかこう、しっくりこなかった。

そんな時に、

A_oというアーティストの名前で、某CMが流れた。
正確にいうと、SNSで流れてきた。
なにをどう聴いても、それはROTH BART BARONのサウンドに近しいものだった。歌っているのはアイナ・ジ・エンドさんなのはすぐにわかった。

後日、アーティストの詳細は公式のSNSアカウントで行われた。
あの時は、なんだってーと頭の中がぐるぐるしたのを覚えている。

そして、「鳳と凰」のリリースもされた。
「BLUE SOULS」もだけれど、このご時世の、いろんな人に向けた応援歌なんだろうなと思って聴いた。
気がついたら、A_oとして、某有名なテレビ番組に生出演もしていたし、新しい楽曲作りのためのレコーディングを全て生配信する企画もやっていた。

いろんな活動を見ながら、楽曲を聴きながら、ふと思ったことがある。

次の舞台へ、今をしっかりと踏みしめて、力強く歩いていく。

そんな想いを感じながら、"BEAR NIGHT2"をみた。

配信にしても、これだけの豪華なメンバーが出るのにこのお値段で良いの?と思うくらいの豪華さだった。
だからきっとこの日に、このメンバーが出る、このライブをみるのは、意味がある、と思った。

そして、見終わった後に思ったのは、きちんと生きていかなきゃ、今を生き抜いていかきゃ、という想いだった。

ROTH BART BARONの音楽との向き合い方のこと。
そしてこの社会的状況で、どこか絶望しながらどうにも足元がしっくり定まらない感覚があったからだと思う。

うまく言葉に言い表すことのできない想いなのだけれど、こう、肩の荷が降りるというか、すべてが許される感覚というか。

あぁ、これできちんと今とこれからのROTH BART BARONの音楽を聴いていける。
そして、自分も歩いていける。

そんなことを思った。

冒頭の水野蒼生さんのクラシックDJはひょぇぇと痺れたし、HANAさんの素敵な歌声に心の中が緩んでいったし、ROTH BART BARONの音楽はいつだって何度聴いたってかっこいいし、原田郁子さん、小西遼さん、Seihoさんとのコラボや、アイナ・ジ・エンドさんとのA_oはもう言葉も出ないほど刺激的だった。

特に水野さんの指揮での「Nessun Dorma」は、この世の音楽とは思えないほどで、指揮によって音が整い、それぞれの持っているステータスがピロロンと上がるかのように、内側にあるものを引き出していく様を目の当たりにして、放心状態になった。

化け物が化け物になっていく瞬間を垣間見た気がした。

最後のひょっこりと小西さんの名前を忘れてしまうところは、某テレビ出演後のSNSでつぶやいていた工藤さんの名前がー、という出来事を思い出してしまったし、アイナさんにちょこっと教えてもらう姿なんかを見ると、本当に素敵なメンバーで創り上げているんだな、なんて思う。

ROTH BART BARONを見ていて思うことは、

一人一人が主役としてスポットライトがきちんと当たることだと思う。
今回のメンバーで言えば、圧倒的な存在感の三船さんがいるけれど、西池さんや岡田さん、ermhoi、マーティ、工藤さん、竹内さん、須賀さん、太田垣さんがきちんと見える。

言い方が変かもしれないけれど、影に隠れることなく、きちんと見える。

バンドのスタイルだと、歌っている人やメインとなる人にだけ、視点が移動してしまうような気がする。偏見かもしれないけれど。
ROHT BART BARONは、誰が見ても、全員に視点が動く気がしている。それぞれのアイコンタクトや、その時々の笑顔が見えるからかもしれない。

でも、なんとなく思うことがある。

ともすれば、三船さんが先陣を切って、みんなを率いていく、という形も取れると思う。
でも三船さんは、みんなと一緒に、みんなが主役として、共に良いものを創り上げていこう、という想いを大事にしていると思う。

PALACEというコミュニティを大事にしていることも、そう感じる一つの要因なのかもしれない。

一緒に木を植えて、育て、伐採し、乾燥させ、楽器をつくり、楽団をつくり、みたいなもの。
そこには誰1人欠けても、音楽が成り立たないみたな想いを感じる。

とか難しいことを考えておきながら、みんなで楽しんで一つのものを創り上げるのが楽しいから、という簡単なことなのかもしれないとも思うけれど。

混迷化していた2020年から2021年のはじめ

たまたま触れた三船さんの考えや、ROTH BART BARONの音楽に救われてきた。
確かに歩み続ける姿をみて、自分も歩いていかねば、と思った。

かっこよくはいかないかもしれないし、傷つきながらかもしれない。
でも、歩んでいく足を止めることはだめだと感じた。

どうにもまだ、世界は落ち着きそうにないけれど。

ROTH BART BARONの音楽を聴いて、生命力を保っていける人がたくさんいたら良いな、なんて思う。

もしよければ、読んだ記事のコメントへ好きな音楽やオススメのコーヒーのこと等を書いて頂けたらとても嬉しいです。