[姫咲真理愛 SS] メアちゃんにすこツーの使い方を教えてもらいました

「なあ、真理愛。この後ちょっと残れるか?」
私が部室を出ようとすると、私の愛するひとが声をかけてきました。今まさに後ろ髪をひかれるような思いで部屋を後にしようとしていた私は音速で振り返り縮地の歩法で距離を縮め抱きしめ耳元で愛を囁きたい気持ちに駆られましたが、引かれることは今までの経験から分かり切っていたのでそれをしっかり学習した私は何も動揺していないかのようにゆっくりと振り返り動揺を消して悟られないように愛するひとの名前を呼びました。
「どうしたの、メアちゃん?」

メアちゃんが手招きしている姿を見て以下略PCの前に行きます。メアちゃんの顔を見すぎないように意識的に目をモニターに逸らします。
「前にすこツーの使い方知らないって言ってたから、教えてやろうかと思って」
確かに私はあまり機械が得意ではなく、Showroomのイベント応援に必須と言われているすこすこツールというものを使ったことがありませんでした。でも、どうしてメアちゃんがそれを知っているのでしょう?いえ、そんなことはどうでもいいのです。メアちゃんに言われたら返事はハイかYesか喜んで!のいずれかです。
「ほんとに!?嬉しい!ありがとう!!」
心からの声が出ました。

「じゃあまず、インストールからだな。Chromeは使ってるか?すこツーはChromeの拡張機能だから、まずはChromeストアのページから…」
説明を始めるメアちゃん。どんなメアちゃんも好きだけど、真剣に作業をしているときの横顔は配信では見ることができないので特権的な気持ちになれてそれが何よりうれしい。いつまでも眺めていたくなる横顔が私の方を向いたときだから少し目をそらすのが遅れて視線がぶつかってしまって私の顔の熱が上昇します。遅れて目をそらす私を意に介さずにメアちゃんは大胆にも私に手を伸ばしてきて。
「おい、真理愛。ちゃんと見ておけ。自宅のPCで作業するのは真理愛なんだからな。ほら、もっとこっち寄って」
えっあっはいでもちょっと近い近くないですかメアちゃんからなんかいい匂いがするような気がする駄目よ真理愛メアちゃんは今真剣に私に教えてくれているのだからしっかり聞かないと、でもその前に一度落ち着く時間が欲しい、いやでも忙しいメアちゃんにこれ以上時間を取らせるわけにはいかないんです。

「インストールしたら右上に『す』のアイコンが出るから、この状態でShowroomの配信画面に行く。左下にいろいろなアイコンが追加されているのが分かるか?」
メアちゃんが画面を指し示してくれます。メアちゃんの細い指はまるで芸術品のようで、紫色のネイルがとても似合っています。
「これが自動カウントのアイコンで、星集めはここな。これはタブ数と自動閉は設定しておくことをお勧めする。星投げはここ。ここを見ると星解除の時間が分かるぞ」
メアちゃんの指が滑るように動いていく様に私は目を奪われていました。この指先が私の肌の上を滑るように動く様子を想像せずにいられる人間が果たして存在するのでしょうか、いえ存在しないに決まっています。時折メアちゃんの顔をこっそり盗み見ると、やっぱり凛々しくて素敵な瞳が真剣に画面に注がれています。この瞳に見つめられたら私はおそらく指一本動かせなくなってしまうでしょう。いえ、すでに指一本動かせないような状態になっているような気がします。

「まあ、実際に使っている様子を見せた方がいいか。お、ちょうどこの前イベントで応援してくれた者が配信しているな。まずはルームに入って、カウントを始める。今星の持ち合わせがないから星集めも起動しよう。…星が集まってきたな。そしたら星投げボタンで投げる。お、気づいてくれたか。『このあいだはありがと 応援に来たよ』っと」
メアちゃんが慣れた手つきでPCを操作します。配信しているのはとてもかわいらしい女の子でした。メアちゃんは男女問わず魅了してしまう魅力の持ち主ですが、やっぱり特に女の子にモテます。メアちゃんの格好良さと時折垣間見えるかわいらしさで、たくさんの眷属のみなさんや配信者さんを虜にしています。かくいう私もその一人なので、その気持ちはとてもよくわかります。私が恵まれているのは、こうしてメアちゃんと一緒に、仲間としていられるということ。私がメアちゃんにとって取り立てて特別な存在じゃないということは私が一番わかっています。いえ、もちろん仲間として、特別な存在であることは分かっています。でも、私が求めている特別は、その特別じゃないんです。とても贅沢でわがままな願い。たくさんの人に愛されるメアちゃんの特別の座は、簡単に得られるものじゃないと分かっているけれど、それでも私は。

「星を集めきるとここに解除の時間が表示される。今回は2周はできなさそうだな。でも、今見てもらった通りすごく簡単に星集めと星投げができるだろ?どうだ?できそう?」
メアちゃんが私の方を見上げて尋ねます。えっこれ上目遣い?上目遣いでは??いえ、本当の上目遣いはこんな威力ではないはず、だけれどこの構図は明らかに上目遣いのそれでここから本当の上目遣いを想像するのはたやすいことです。その目で見つめられると私は何を話していいか分からなくなりそうで、本当はもっとお話ししたかったけれどこれ以上耐えられずに答えます。
「うん。メアちゃんありがとう。おうち帰ったらやってみるね!」
「それは良かった。じゃあ我は帰るとするよ。真理愛はどうする?」
「私も帰ろうかな」
「じゃあ…その、一緒に帰るか」
ねえ今見ました?ちょっと顔を赤らめて少しためらうように私を誘ってくれるメアちゃん本当にかわいいえっ私今誘われているの一緒に帰れるの帰ります一緒に帰りたいですすぐに準備しますね!
「うん!荷物まとめるからちょっと待ってて」
そういえば私帰るところを呼び止められたんでした帰る準備万全ですでもメアちゃんも準備があると思うので少し時間をかけて帰る準備をするふりをします。ちらちらとメアちゃんの様子をうかがっていると荷物をまとめ終えたメアちゃんがこちらに歩いてきます。
「お待たせ。準備できた?」
「できた!帰ろう!」
今日は本当に幸せすぎる一日でした。帰り道に何があったかは…ちょっとここでは説明しきれないので割愛しますね。


『真理愛、すこツー入れれた?』
メアちゃんからのメッセージの前に途方に暮れた母があろうことか即レスせずに全力で検索したのはメアちゃんには内緒にしてほしいです。


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参考↓


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