”スローシャッター” 旅に出て現地の人と話したくなる一冊

旅をすると新しい発見に出会います。風景や食べ物、そして人。

日本国内であれば同じ言葉を話し、季節も同じなのでコミュニケーションに困ることは比較的少ないでしょう。

でもそれが海外だと言葉や文化、住んでいる半球によって、かなり大きく異なるものです。さらにプライベートで楽しんでいく旅行ならまだしも、仕事だったらなおさら違いを痛感します。

「スローシャッター」で書かれているエピソードの多くは著者が仕事を通じて訪れた国で起きた日常のなかの出来事。

海外旅行記のようなものは、多くがドラマティックにかかれている印象ですが「スローシャッター」は等身大のエピソードで満ち溢れているように感じました。

多くのエピソードが普通に日本で暮らしていたら知らない街で観察力が豊かな日本人が体験した異国での日常と異文化を感じられる体験。

読んでいて自分が追体験したかのような錯覚に陥るシーンがたくさんありました。

たとえば最初のほうに出てくるアラスカの国際空港のエピソード。
”日本人”というメガネを通して考える”国際空港”のイメージと、現地で著者が遭遇する”国際空港の現実”のギャップ。淡々と文字は綴られていますが、これは世界の現実を垣間見られるワンシーンとして強く心に残りました。もしも自分が著者と同じ状況になったらどうするんだろう?と考えるのも楽しいです。

そして各国で著者が交流する人々の性格や性質が、非常に日本人的なところも読んでいて面白かったです。仕事を通じて訪れた国でのお話のためか、出会う人の多くが仕事をともに遂行した人たちです。
国際間で仕事をする、すなわち輸出や輸入に関わる人たちは、国内で仕事をするよりも、コミュニケーション力や、他国でも認められる品質やブランドを持っているのだと思います。

そのような製品を扱っているから、著者が出会う人々はみなプロフェッショナルなのだと感じるエピソードが多くあり、プロフェッショナルとは国籍を問わず共通していることを強く感じました。

みな自分の仕事に責任感と誇りをもち、最後まで遂行していく。そのようなマインドを持つ者同士だからこそ、国籍の違いを超えたつながりが生まれるのだろうと感じました。

どのエピソードもそれぞれの締めがあるなかで、私にとってひときわ印象に残ったエピソードは「愛しのメイウェイ」。著者が中国で体験したおもてなし文化のなかで起こったできごと。
内容はぜひ読んでいただきたいです。
数分で読めるエピソードですが、コミュニケーション、意思疎通、思いやりについて深く考えました。

背伸びしない、等身大のたくさんの国々での経験を、まるでバーで隣に座って静かに語ってくれるかのような一冊。
私も久しぶりに海外に行ってみたくなりました。

それでは〜

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