わたしの日常に溶けてほしい-「LIFE TIME」GRAPEVINE (1999年)
(1,824文字)
いい小説は人生は物語だと教えてくれるが、
いい音楽は私の人生をドラマにしてくれる。
このアルバムでそれを知った。
まずは一周聞いてみようと、なんのガードもせずに再生した。2曲目の「スロウ」を聞きながらドラッグストアのエスカレーターを上がって2階に着き、サビが流れた瞬間、私の日常がドラマになった。このままこの音楽が私の日々に溶けて、ずっと人生に流れていてほしいと思った。
GRAPEVINE(グレイプバイン)の曲と同名タイトルだからという理由で小説を読んだくらいバインフリークな方が教えてくれた3枚のアルバムのうち、いちばん古いもの。
おそらくあの小説は彼らとは関係ないもので、そこまでするなんて若干いかれてて最高にいいなと思った。
【録音してたとき、タイトルが気になったもの】
13.「HOPE(軽め)」
“軽め”ってところ。
希望っていうのは、すがると大変だから、軽いのが絶対にいい。軽い希望がたくさんあれば、どうにか生きられそう。そんな言葉をよくここに当てはめたなって。それだけでこの人たちを信用しちゃいそうになる。
11.「大人(NO BODY NO BODY)」
大人ってタイトルの歌詞が気になる。
子どものときに必要だったものが満たされて、段階を経て大人になるんだって思ってる。だから私は5歳児のまま。この曲聴いたら大人がなにかちょっとわかりますか。と思って歌詞カードを見ながら聴いたけどわからなくて、わからないからいいんだって思った。
10.「白日」
King Gnuのヒット曲をずっと「しろめ」と思っていたおかげで、今回は初見で正しいタイトルが読めた。ありがたい。
タイトルが短く、日本語だったりしてわかりやすいのがいい。こねくり回してるんじゃなくて最短表現でカッコいい、みたいなのが。
カッコつけてない人がいちばんカッコいい、みたいな。
【お気に入り】
2.「スロウ」
私の日常に溶けてほしい歌だと思った曲。サビがきてうれしくて笑った。この曲から再生してしまう。
4.「光について」
ただ歩いてるだけのことがドラマになる曲。
歌詞カードをじっくり見て、「この歌詞、なにを歌ってるの?」と思ったが、あ、「光について」か、と思い直してしてやられたって思った。
具体的でない歌詞がいい。まさに光みたいに摑めないのが。
脳内に勝手に再生されている曲がこれだった。
会社で帰りたいやめたい嫌い帰りたい超帰りたいって思ってるとき、頭の中に鳴っていた。アルバムを漫然と流していて、好きだと思って曲名を確認するとこの曲だったことが何度もあった。
7.「25」
初めて聴いたときバイバイって言ってて、バイバイしないでって気になった。バイバイ言ってるのに明るくて好きだ。つらいときBGMにして、つらささえこの曲調に流したら、大したことないって歩ける気がする。
10.「白日」
耳だけ生きてる状態で聞いてて、サビがきたとき嘘でしょと思った。ふいうち。夜だからか泣いた。
音楽にしか届かない心の地点が確実にあって、そこには、言葉では途中までしか来れない。私は本をずっと読んできて、文学がこの世で最も尊いと思っているけれど、言葉では救われないときがある。音楽だけが私の心臓へつづく細く繊細な管を通って私を救うときがある。問題はその音楽がどこにあるかだった。見つけたかもしれない。見つけたというか、教えられたというか。
12.「望みの彼方」
なにを書いてるか具体的でないけどたぶん失恋の歌。明るいのにたぶん失恋の歌なのが良い。好きです。
日本語の歌詞ばかりなのがめずらしい。日本語なのによくわからない歌詞がいいと思った。想像の余地だらけで好き。
時雨を聞いてるとき、攻撃的な彼らの音楽に、私は強い気持ちになれた。
グレイプバインの音楽が流れているあいだ、私は守られてる気がした。私の寂しさ虚しさを埋めてくれるちょうどいいリズム。この現象をなんて言うんだろう?
ちょうど「TKfrom凛として時雨」のアルバムを買ったタイミングでグレイプバインを聞き始めたので、プレイリストにこの二組が並んでいる。バインのアルバムが終わると、激しいTKさんの曲がかかるので、あまりの違いに笑ってしまった。
「お前に未知はない 凡人!凡人!凡人!」ってTKさんが絶叫してる。
4/29レンタル
4/30〜聴く・note
5/3 完成
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