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詩集

65
¦過去の作品をまとめています。
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#現代詩

「鼓膜によせて」

お医者さんが頭をぶんぶんと両手で振るので困った私は詩を書くことにしやはったんやと思う 栄…

無題

あなたの皮膚をおさえこむたびに 内側からの反発する力を感じてゐる 指紋が吸いつくやうに 快…

色夢

重い瞼を閉じてソファーで泥のように眠ろうとする, 軋むスプリングの振動が誘う幼い頃の記憶, …

音楽室

歪んだ電子音、縁った装飾施された天鵞絨生地の椅子。 窓の白いカーテンは飛び乗った拍子に裂…

夏祭り

七尾の狐あ・うんと誘えば 朱色の鳥居はえんえんと ぱられるぱられる あちらこちら線の上 反…

「処女受胎」

微温湯に浸かってふやけた皮膚が 縛った そのごわごわとした卵管を 探り当てる 真綿の嘘が水…

「孕」

十月十日の束を一括りにして 捨てましたの ちちはは埋めた小川のほとりに 幾重にも蔦絡め重石をして 雁字搦めに捨てましたの 二度と憂き上がらぬようにと 藍染めの鯉がその様子をぢっと視ていました 嗤ったかも 否、拙い歌だったのかも それでも捨てましたの 物質ではないものを 再生はしないものを 肉が腐る躯には骨だけが忽忽と 加速を増しては

平和主義

空き家に灯る シンボライズされた色相環に 黄色い嘴で 囁くよ 青い鳥 丹生色したカーテンは …

zan-zan-zon

光も波もいまだ届かぬ底で 重き枝葉から零れた金柑を眺めている 泥舟の軋み笹舟の撓み 金環ま…

speed

耳朶に白亜色の紋白蝶が飛来し ピアスホールが深くなる 穴からは蛹が春を告げたかと思うと 一…

真夜中の遊園地

レモンライムの環と相対的な三角錐 メリーゴーランドは放置したとして 真夜中の観覧車はどうし…

kkk kk

あーぶくたったー にえたったー 嘘だと言うなら食べてみよう むしゃむしゃむしゃー 似非たる…

齧歯類

夜行性の絹毛鼠《ハムスター》 廻し車はいつだってカラカラ 乾いた砂浴び 寝床はフワフワ夢…

si si si

痛みを感じるのが厭だから 搾取されているのは私じゃない 私の形をした歪な容れ物なんだと 億万回は云い聞かせた 剥がされている間中 すると どうだろう 斜め上空から人型を眺めることに成功した 暗闇では反射しないはずの 馴染めぬ 糸泉《ライン》 も 小指には心の臓を 薬指には眼球を 本体から僅か6μmの線で絡ませた そうそう私は傀儡人形よ 「シと名付けた」 惡の限りを尽くそうか 世界との唯一、接点としての 蹂躙した内と外 反転する陰画と陽画 首を横方向へ両断し 円で依