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金魚鉢

ながれるながれる、
さらさら、さらさ。

夕闇鼓笛、
赤の提灯、歌うおと。

夜市が笑う。
いつもとちがう。

あの娘も笑う。
いつもとちがうね。

きっとそうだね。
だってもう。
暗くなってしまったから。

太鼓が響く、灯のたつ矢倉。
あの灯りから離れたら、
僕たちはもうわからなくなる。
君はだれ。
僕はだれ。

僕たちはもう、戻れない。


ああ、
空も夜も何も彼も、
ここがどこかも。
今が何時かも。

彼岸の花が咲いている。
此岸に骨が哭いている。


夏の終わりはながれるように。
さらさら、さらさ。

どこにいっても泳いでも。
出られることはないのにね。

ここは夜の中だから。

いつも淀んで、
外を眺めて、
いつかは割れて、
砕けて消える。

僕たちはもう、すくえない。

さらさら、さらさ。
と、
流れて沈む。

ここは鉢の中だから。

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