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夏の小瓶

生まれ変わったのと
今年の夏が微笑んでいる

うわの空の金魚も
溶けたアイスも
扇風機の眠たい音も
夕立のあとのあどけない虹も
ふやけたアスファルトを歩けば
風鈴が物静かに鳴った
蝉時雨を通るとなぜだか
神隠しにあったような
気持ちになった

夏のはじまりは
もうすでに
夏のおわりの匂いがして
慌てて夏の小瓶にぜんぶ詰めたんだ

青と白の空から陽射しが手を差し伸ばしていた
握り返したらぜんぶぜんぶ嘘だったみたいに
消えてしまうんだ
銀河鉄道の匂いがする夏の小瓶
少しかなしい夜明け風が吹いて
朝焼けがやって来るんだ

ふいに疲れた夏はいつの間にか
水色の自転車に乗ってどこかに行ってしまった
少し肌寒い日に落ちていた
夏の落とし物を夏の小瓶に詰めて来年
届けに行くんだ

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