見出し画像

スパンコールラビリンス

ねぇわたしずっと愛されたかったのと
六月が言う
だからいつも泣いていたんだねと
七月が言う

六月の雨のスパンコールラビリンスに
迷って出られなくなった七月だったけれど
六月のお話を聞くたびに
七月は六月に恋をし始めていた

たいせつにされなかったから
たいせつにできなかったとか
諦めかけていたから
本音が言い合えなかったとか
自分を偽ってまで
いっしょにはいられないとか

七月はうんうんとうなずきながら
六月のおはなしを聞いていた
実は僕もと七月も話し始めたりしながら
六月のスパンコールラビリンスが
いっそう煌びやかにひかりだす

なかよしってどんなことだろうと
七月が六月に聞く
思いを半分こすることかなあ
思いを半分こして
いっしょによろこんだり泣いたりすることかなあ
それができたらいいのにねと
六月はちょっと悲しそうに笑って言う

話し草臥れて
ふたりとも
大の字になって眠る夜は
なんてやさしいのだろう

しだいにふたりで過ごす日々が増えて
六月と七月はいつの間にか
なかよしこよしになっていた

七月は六月に花束をプレゼントして
愛の告白をした
六月はよろこびにあふれて七月に抱きついた

六月はこう言った
わたしもあなたも探し回っていたのね
あなたとおなじ探しものでよかった
七月がこう言った
きみがあきらめなかったからだよ
本当のことを話してくれて
ありがとう


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?