孤島のピアノ
孤島に忘れ去られたピアノがある
音色はバラ色で些かやわな棘があった
黒鍵に乗った鴎が一羽
羽のないおはなしをする
やっと見つけてくれたから
ピアノは嬉しがって鳴いた
悲しいことにわたしは
ピアノがうまく弾けない
ただ指を静かに置いて
ひとつひとつの鍵盤を順番に奏でた
ピアノはずっとわたしの指を見ていた
ピアノはからだで感じていたのだ
わたしの指の感触を
息をしている
ピアノもわたしも
それから一緒に眠ったり
落陽を眺めたり
夜明けの空の下でたくさん
ピアノのからだを触った
ピアノはいつも素直だったから
時々泣きじゃくる夜もあった
それでも愛おしい
ピアノの傍らに居たかったのだ
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