孤帆
銀色い眩しい窓にもたれて
あなたの願いを訊ねたら
ひたいを二つに割ってまで
最初の場所に戻りたい
いのちを三つに裂いてまで
別の未来を辿りたい
雪も積もらないのは仕方なく
緑の桜が恨めしく
どうしてあなたは生きていたので
あの日の香りも忘れてしまう
布とはがねの飾りを外して
いつか打たれた釘を抜き
消えうすれゆく灰色の煙の奥で笑っていよう
柔い敷布はないけれど
温い容赦はないけれど
目も覚めるほどの朱色の
あわい重なりの真ん中で
最後の実りがありますように
先送りのその先の
清算されるひと息で
血肉の深みに竦んだ足を取られ泥濘むときまでも
掛ける言葉がありますように
祈る両手がありますように
金色い眩しい草っ原で
わたしの願いを口にして
あなたのひたいにひたいを寄せたら
どうかしばらく風を浴び
故郷の海を思い出せ
篝る炎を思い出せ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?