祝祭前夜

赤いまだ開かないススキの穂

蝶の戯れて黄色く光る翅に重なる

夢のこびりついたまぶた

誰にも優しくない完璧な、完全な、

手痛い理不尽のことを思い出す。


掻き立てた爪、肌にはっきりと罅になって

それは白く残るとげの形の痕跡

僕だってきみを許したいのに。


にぶい不安

未だあらざる不安

知り合う前に戻れない

定義のナイフ

見出したい意味、後付けの愛着

もう捨ててもいいもの。


はすの花に蜘蛛の巣架かる、夜がきらきら瞬く

真珠の生まれる深い場所

舟になる光、柔らかな嬰児を運んでゆく

いずれ死するために。


正しいのは問い

むなしいのは正解

ゆれている1とAの軸

交わる点は名前のない黒

朽木のオール、存在以前の虚無に波を掻く


雲の水面

眩しい時間

うつくしいことをただ喜んで笑って

言葉では救えない

刻んだ線に蕩けた金を

流して継いで、触れ合わせ

僕も理不尽のひとつになる

溢れんばかりに実ってしまった

緋色の秋のせいなので。

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