ライトグレイ

ゆるされていた、瑕疵のない丸いはだ
存在の手前にあったもの
楽器になれない花には耳を傾けて

優秀な技術
上等な買い物
あたらしい時間に合わせて作られる

羅列を済ませる
ページをめく
ちりのような雪、濡れる街路に映る

ずっと、とは
言えなかった、言わなかった
言えば壊れるのが何なのか
あなたもわたしも、想像できなかったから

電車の深い窓
無意識が翻訳したアルファベット
鋼鉄の橋
いまは長い道の半ば

耳の奥で新品のイヤホンが震える
ピアノが歌う、ギターが揺れる
ジャンルなんか知らなくてもいい
踊るための手足もなくて

感受性は幾何学

死なない魂のための微睡まどろ

さっき見た夢を思い出す、
ぬるい布団にあなたはいない

下弦の弓
雲は風に押され、朝日に裂かれ
じきにほどけて糸になる
やっと空が明けたら、わたしにも息を吐ける

連続性

うねる無数の願いに怯えて、
あなたに他人の心はおそろしい

透明な階段
小さな椅子に腰を下ろす

進むのをやめてもいい、
もう諦めてもいい、
どこにもいない人の話を、
もう一度するために

冷える指先
きよらかと言えば優しいようにもなるけれど

玄関で死んでいた蛾の一翅
桜の一葉

理由がないのを嘆いて、
あなたには分からない
わたしには見えない
突き刺すための形

奪える手
それでも与えて、もたらして、
幾度も殖やして、あたためて、
残酷だったね?

狭い病室
肋骨をひらいたら罪が見える
つまびらかに傷を見る

正しい対価にふさわしい
数字、文字、知る言葉、
意味の形になったもの
水をすくう器、
血を取り分けるからだ
ちゃんと飲み干してよ、
どうせ失われる

いちばん眩しい事情を
いのちと呼んで尊ぶのに
全て枷られて、課せられて

燦然たる
果てはかわいい、明るい景色
火のこちら側、
安らかな広がり

無人の永遠を照らす光に
決して名前を付けないで

かつてあなただった色
わたしもそれになるために。

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